■花冠月例句会■

俳句雑誌「花冠」の月例ネット句会のためのブログ 管理 高橋句美子・西村友宏

■9月月例ネット句会/入賞発表

2018-09-10 09:13:08 | 日記

■2018年9月月例ネット句会■
■入賞発表/2018年9月10日

【金賞】
★夕影の池に伸びたり蓮は実に/多田有花
秋の声を聞くと、ものの影に変化がみられる。夕影が伸びて、実となった蓮池に届く。どこかもの淋しさが人の心にも湧く。その微妙な移ろいを「夕影」と「蓮は実に」に摑んだ。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
★白葡萄薄き緑の平和かな/廣田洋一
白葡萄の薄い緑色は、透明感があり、芸術的とも思える気品がある。その趣を愛で、味わうことができるのも、今、平和であるからこそだ。薄き緑の白葡萄を平和の象徴とした。(高橋正子)

★川沿いに青どんぐりのころころと/髙橋句美子
川に添えば青いどんぐりがころがっている。台風で落ちたばかりであろうか。川の水の薄濁り、転がるどんぐりの青さが、目に浮かび、さわやかだ。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★あおあおと青天の湖鵙高音/小口泰與
青天の湖と鵙の高音の取り合わせに、空の高さ、冷涼で澄んだ空気が肌で感じ取れるような句。鵙も青天があれば、どこからでも鳴くのだ。(高橋正子)

★小流れの音のさやけき田道かな/ 桑本栄太郎
小流れの音に耳を澄ます。さやかな音だ。その小流れが田道を流れ、散策する足元から、さやけさが湧くようだ。句に小流れのようなやわらかなリズムがあるのもいい。(高橋正子)

★水音の野に広がりて稲穂熟れ/柳原美知子
稲穂が熟れる。稲田に入っていた水を抜く水音か。どの田からも水音が聞こえる。熟穂と水音と、豊かな実りの秋がここにある。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★夕影の池に伸びたり蓮は実に/多田有花
初秋の夕方ともなれば、池の周囲のものの影が水面に映り、池の光景は尚更静寂となります。池の蓮も実となり、少しづつ秋の景色が深まります。(桑本栄太郎)

★川沿いに青どんぐりのころころと/髙橋句美子
風に吹かれてまだ青い小さなどんぐりが転がっていく音、澄んだ川の水音が聞こえてくるようで、爽やかな秋の訪れが感じられます。 (柳原美知子)

★台風禍会う人人と立ち話/祝恵子
台風21号は関空をはじめ関西に大きな被害をもたらしました。ご自宅周辺でも被害が出ていたのでしょう。
お互いの無事を確かめ合うひとときの立ち話です。(多田有花)
関西に甚大な被害をもたらした台風21号、お見舞い申し上げます。台風が過ぎ去り、道々に会う方とのふれあいに、あたたかく心安らぐ安堵感が伝わります。 (藤田洋子)

★猪が駆け去る台風過の山路/多田有花
有花さんは、増位山に毎日のように登られ、この日は、台風の後の山路だったが、猪が駆け去るのに出会った。猪も台風の間は、静かに様子を見ていたのかも知れない。野生の猪とのよい距離にいる、愉快さも。(高橋正子)

★あおあおと青天の湖鵙高音/小口泰與
★小流れの音のさやけき田道かな/桑本栄太郎
★白葡萄薄き緑の平和かな/廣田洋一

【高橋正子特選/7句】
★水音の野に広がりて稲穂熟れ/柳原美知子
野に流れる水音もさやかに、たわわに実った稲穂の嬉しさ。実りの秋を迎えての、清々しく広やかな光景に、季節の喜びが感じ取れます。 (藤田洋子)

★回覧板渡せば高々葉鶏頭/祝恵子
回覧板を手渡す時にふと触れた葉鶏頭。高々と生長した紅の葉が秋光に輝き鮮やかに目にうかびます。(柳原美知子)

★小流れの音のさやけき田道かな/桑本栄太郎
★夕影の池に伸びたり蓮は実に/多田有花
★今日良しと秋の花咲く萩その他/高橋信之
★白葡萄薄き緑の平和かな/廣田洋一
★川沿いに青どんぐりのころころと/髙橋句美子

【入選/句】
★今朝白露暦に記す帯祝い/藤田洋子
太陽暦の9月8日頃にあたるこの頃から秋気がようやく加わり、お嬢様でしょうか、お孫様でしょうか妊娠5ケ月目に安産を祈って岩田帯を着けるお祝いは嬉しい事ですね。おめでとう御座います。(小口泰與)
爽やかな秋の到来と新たなる命の到来。生まれ来る新しき命への祝句である。 (古田敬二)

★同じ空行ったり来たり秋の蝶/廣田洋一
夏と違い動きもゆったりと感じる秋の蝶が行ったり来たり飛ぶ光景が、爽やかな秋の空を一層引き立てます。(高橋秀之)

★吹き荒れる雨風去って見える秋/高橋成哉
台風がやっと去り、安堵して見あげた秋空が、ありがたく爽やかに思えます。(祝恵子)

★おしろいの色定まるや入日燃ゆ/小口泰與
秋の夕焼けが空を染める頃、おしろい花が静かに可憐な花を開き、薄暮に浮かび上がる美しい景が目に浮かびます。(柳原美知子)

★秋澄むや色の濃くありものの影/桑本栄太郎
秋のくっきりとしたものの影。秋の影の濃さは澄んだ空気がもたらすものですね。(多田有花)

★畦をあふれ木曽の稲田の実りかな/古田敬二
稔った黄金色の稲穂のさまがよくわかります。豊年の喜びですね。災害の多い今年であればその喜びは一層大きいでしょう。(多田有花)

★積乱雲空に広がり街覆う/髙橋成哉
街を覆うほどの積乱雲に、秋に入ってもまだまだ衰えない暑さがうかがえます。厳しい残暑にも仰ぐ空に、大きく湧く純白の雲が心広やかになれます。 (藤田洋子)

★山腹に秋灯点き初む木曽にいる/古田敬二
木曽の山々の山腹に灯が灯り始めるころ。秋の灯のなつかしさ、故郷へのあたたかな思いがある。(高橋正子)

★禅門の修行終えたり稲架の列/河野啓一
禅門の修行を終えて稲が刈られ稲架の列が並んでいる。古寺と稲のある奈良あたりの光景を思い浮かべた。(高橋正子)

★夕月を囲むがごとく鳥の群れ/ 河野啓一
夕月の周りを鳥の群れが飛んでいる。夕月の明かり、シルエットとなった鳥の群れ。日本画のような句だ。(高橋正子)

★シンガポールの夕暮れ遥か空高し/高橋秀之
シンガポールの旅。夕暮の空が遥かに、高く広がる。「空高し」の向こうに大阪の空を思ったのではないだろうか。(高橋正子)
★一杓の手水さやかに指伝う/藤田洋子
一杓の手水を使った。手水の水が指を伝うとき、さわやかな冷たさを感じだ。よいことがありそうな気持がする。(高橋正子)

★森の中晴れて輝く芒の穂/髙橋句美子
森の中は、ほの暗いだけではなく、開けたところがあって、晴れた秋空がある。芒の穂が陽を受けてかがやいている。森の中の明るい空間が、いい。(高橋正子)

★新涼の初めての道踏みしめて/柳原美知子
新涼となって、まだ通ったことのない道へと足を延ばしたのだろう。しっかりと踏みしめて、初めての道を味わうかのように歩く。爽やかな季節がうれしい。(高橋正子)

■選者詠/高橋信之
★河骨の花の黄が浮く遠く浮く
秋の水草のたたずまいが、リズムよく軽快に描かれているのが魅力です。千里万博の日本庭園でよく見かけました。 (河野啓一)

★秋空にスカイツリーの立つ街よ
高層ビルが立ち並ぶ東京都心部にあってもスカイツリーの姿はよく目立ちます。青空に伸びる銀色の姿はすっきりと爽やかです。 (多田有花)

★今日良しと秋の花咲く萩その他
秋光の溢れ爽やかな風の吹く心地よい今日、野山の草木も心地よさそうにその時を感じ秋ならではの花を精一杯咲かせているようです。(柳原美知子)

■選者詠/高橋正子
★秋日傘向島に来てさしぬ
残暑の陽射しの中にも、真夏のものとは自ずと異なる秋日傘の趣です。向島と言えば墨田川沿いの、ふと清々しい川風をも感じさせてくれる秋日傘です。 (藤田洋子)

★秋暑く生姜蜜なるかき氷
(自注)向島百花園には、生姜蜜のかき氷があって、名物らしい。

★水葵初秋の青をひとつまみ
(自注)水葵は箱根の湿生花園にあったのを初めて見たが、向島で見るのは初めて。ガイドさんに聞くと、世話をしている人が、今朝持ってきたとか。青紫のひとつまみほどの花。

■互選高点句
●最高点(7点)
★小流れの音のさやけき田道かな/桑本栄太郎

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

※入選句について、意味が通りにくい句は、添削しました。
参考になさってください。
コメント (11)
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