■花冠月例句会■

俳句雑誌「花冠」の月例ネット句会のためのブログ 管理 高橋句美子・西村友宏

■9月ネット句会入賞発表■

2014-09-15 01:28:30 | 日記
■9月ネット句会■
■入賞発表/2014年9月15日■

【金賞】
★高原の空へ手を伸べ林檎もぐ/柳原美知子
「高原の空」が「太初の空」を連想させる。冷やかな高原の青空へ手を差し伸べてもぐ林檎がやはり原初の林檎のようだ。素直な表現ながら、句意のレベルは高い。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★十六夜の海に種牡蠣沈められ/佃 康水
満ちて後の十六夜の月の光が海底まで届き、種牡蠣を育てる。月の光と海水が命を育てる美しい句だ。(高橋正子)

★稲の秋遍路道にも香り立ち/河野啓一
遍路道は稲田を脇を通る道でもある。稲が熟れると、熟れ稲の香りが遍路道にも届いて、遍路を包む。遍路の祈願も叶いそうだ。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★陽を受けてどんぐり朝の輝きを/古田敬二
地面に落ちたどんぐりは、陽が当たらなければにぶい茶色だが、朝日が昇り、陽が差すと、たちまち艶やかに輝く。命を得た輝きを見せる。(高橋正子)

★赤とんぼの群れに飛び込む河川敷/高橋秀之
河川敷で、赤とんぼの群れに飛び込んでしまった。その驚きとともに赤とんぼの仲間に入った不思議な嬉しさが湧く。(高橋正子)

★肩の冷え名月後に車椅子/迫田和代
名月を鑑賞して車椅子で帰ろうとすると、肩がすっかり冷えている。美しい月を見たあとのわびしさが先ほどまで見ていた月を印象づけている。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★新米研ぐ水さらさらと指伝う/藤田洋子
水加減が難しい新米の炊き方、まずは慎重に水で研ぐ。新米に対する作者の愛情が伝わってきます。 (古賀一弘)

★陽を受けてどんぐり朝の輝きを/古田敬二
澄んだ秋の朝の空気に、朝日を受ける眩しいばかりのどんぐりに、清々しい季節の喜びが伝わります。(藤田洋子)

★少年の無口に答う葛の花/高橋正子
豆の花に似た紅紫色の花が下から咲きのぼる葛の花は大きな葉に隠れがちであるが藤の花に似て美しい花と青年期の初期の男性との対比が素晴らしいですね。(小口泰與)

★新豆腐水に放てば水はじく/井上治代
一年中ある豆腐ながら、今年収穫された大豆から作る新豆腐は、やはり秋の季節ならではの味覚である。新鮮な大豆は油分を多く含み、出来た豆腐はぷりぷりとしていて弾力がある。直截な表現がリアルで良い。 (桑本栄太郎)

★高原の空へ手を伸べ林檎もぐ/柳原美知子
「空へ手を伸べ」が澄んだ秋の空気を爽やかに表現しています。そこに「林檎」の色と香りが際立って想像されます。「もぐ」という何でもない動詞が躍動します。(小西 宏)
高い所にあるリンゴに手を差し伸べる。その上は透き通った秋の空。熟したリンゴの赤とバックの秋の青空の対比が美しい。 (古田敬二)

★語らいの窓にさし込む満月光/小川和子
「語らい」の座が開放的であり、それも自然に開かれていて、「満月光」の差し込む「語らい」なのだ。隠し事がない世界はいい。自然にも、人間にも、そして神仏にも、である。(高橋信之)

★赤とんぼの群れに飛び込む河川敷/高橋秀之
この句も開放的で、自由な世界を詠んでいる。「赤とんぼの河川敷」が開放的で自由なのだが、そこへ「飛び込む」作者の開放的で、自由な世界が嬉しい。(高橋信之)

★十六夜の海に種牡蠣沈められ/佃 康水
「牡蠣」は冬の季語だが、この句の季節は季語「十六夜」の秋である。十六夜(いざよい)の海に「沈められ」とした下五の「沈められ」にいい抒情がある。(高橋信之)

【高橋正子特選/8句】
★稲の秋遍路道にも香り立ち/河野啓一
黄金色の稔田に沿って遍路道を歩けば、心地よい風と稲の香に包まれ疲れた心身を蘇らせてくれることでしょう。(柳原美知子)

★窓に響く祭太鼓のリズム聴く/高橋句美子
遠くに祭り太鼓が響いている。作者は家にいて、窓に届くリズムを楽しみ、聴いている。そんな、静かな祭りの楽しみ方もある。(小西 宏)

★秋風に速き流れの雲ひとつ/高橋秀之
空を眺めていると、ひとつだけ速く流れている雲に気づく。そこにだけ風が強く吹いているのだろうか。秋の空を見に行ってみたいものだ。(高橋正子)

★十六夜の海に種牡蠣沈められ/佃 康水
★ドングリの朝の輝き拾いけり/古田敬二
★肩の冷え名月後に車椅子/迫田和代
★バス降りてここより歩く秋高し/高橋信之
★高原の空へ手を伸べ林檎もぐ/柳原美知子

【入選/10句】
★神殿に波打つ音や大満月/佃 康水
神殿と海と大満月。壮大なイメージながら、音は「波打つ」それだけ。神聖な気持ちになります。(川名ますみ)
神殿にはリズムよく響く太鼓の音か何かが響いている。その神殿を照らす満月の光。秋の夜の明るさと幻想がそこにあります。 (高橋秀之)

★子に約束ふうせんかずらのハートの種/祝恵子
風船蔓から種は三つ採れますが、全体が黒くハート形の白い模様がとても可愛いですね。その種を「必ず採っておくからね」と約束されたお子様との対応にとても優しく温かいものが感じられ好きな句です。 (佃 康水)

★隙間なく里芋積まれ届きたり/川名ますみ
何を食べてもおいしく感じる食欲の秋になりました。隙間なく並べられた里芋は、「いもたき」にすると美味しいことでしょう。 (井上治代)

★稲穂そよぐ稔りの音を風に乗せ/柳原美知子
もうすぐ収穫が待たれる稲穂、なびく稔りの音が豊作の喜びになることでしょう。 (祝恵子)
たわわに稔った稲田が秋の秋風にそよいでいる。何とも豊かで爽やかな景が目に浮かぶようです。昔の田舎の秋の風情を想い出します。 (河野啓一)

★声出して論語読む人月今宵/古賀一弘
美しい満月の夜に、論語を読んでいる声が夜空に響いている様が心惹かれます。(内山富佐子)

★田一枚伸ばす散歩やきりぎりす/小口泰與
キリギリスの鳴くあぜ道を 涼しい秋風に吹かれて歩くと距離が思わずのびてしまった。その距離を田一枚とした表現が素晴らしいです。(内山富佐子)

★天然のうれしなつかし鮎の味/西村友宏
天然のアユは常に新鮮で豊かな水量を湛えた川底の石に付くコケを削り取る様にして食べて成長するのだそうですね。天然と聞くだけで新鮮に思えます。作者は故郷で天然のアユを食べた頃の事を色々と思い出し、懐かしみながら味わっていらっしゃる姿が見えて参ります。 (佃 康水)

★十五夜のまだ空蒼き嶺の奥/ 桑本栄太郎
十五夜の月が昇る。地の近くにはまだ空の青が暮れ残っている。山々の峰の影がクッキリと美しい。(小西 宏)

★どんぐりの緑ころがる風の朝/小西 宏
未だ青い小さなどんぐりが転がっているのを見かける季節になりました。「風の朝」の措辞により更に青どんぐりの新鮮さが協調され爽やかな風が吹いている秋の訪れを告げられる御句です。 (佃 康水)

★群青の空の真中に名月あり/内山富佐子
やや紫を帯びた深い青色の中天にかかった名月。澄み渡った群青の空と赤味をおびた大きな月の対比が鮮明となりました。「真中に名月あり」と言い切られた御句からスーパームーンを仰がれた感動が伝わって参ります。 (佃 康水)


■選者詠/高橋信之
★秋天のただ一枚のああ青よ
どこまでも澄んだ青空 ぬけるような雲一つない秋空 嬉しいですね。 (迫田和代)

★バス降りてここより歩く秋高し
バスを降りて、そこからはゆっくりと歩いてみる。晴れ渡る空の下に秋の景色が大きく広がっている。あるいは、その秋にじかに触れようと、わざと手前でバスを降りたのかもしれない。(小西 宏)

★秋天の隠すもの無しあっけらかん


■選者詠/高橋正子
★少年の無口に答う葛の花
豆の花に似た紅紫色の花が下から咲きのぼる葛の花は大きな葉に隠れがちであるが藤の花に似て美しい花と青年期の初期の男性との対比が素晴らしいですね。(小口泰與)

★見渡して花ひとつなき葛ケ原
★秋の野に遊びて夜の薬風呂


■互選高点句
●最高点(6点/同点2句)
★高原の空へ手を伸べ林檎もぐ/柳原美知子
★新豆腐水に放てば水はじく/井上治代

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)


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コメント (16)
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