前回はカイ自乗検定での効果量(e.s.)と検出力(power)について考えました。今回は比率の差の検定での効果量などを考えて見ましょう。例題として、
前回と同様に、「やさしい医学統計手法」(下記URL)から引用します。
http://kstat.sakura.ne.jp/medical/med_008.htm
「例題10」の表15は次のようになっています。
標本 検査総数 Ⅲ型分類数 分類率
A施設 1058 642 60.68%
B施設 218 112 51.38%
この例題は、
顕微鏡的細胞診検査で2つの施設間においてⅢ型分類の比率に差があるかを問うものです(Ⅲ型が多いと診断精度に疑問が生じます)。
・ 検定統計量Zによる検定では、
Z0=2.4665、p=0.0136
・ 検定統計量カイ自乗による検定では、
Chi-squared=6.094(Yatesの補正)、p=0.01356
となり、有意な差があると言えます。
その効果量はe.s.=0.1877、検出力はpower=0.449 ですので、Cohenの効果量の目安から「中~大」と言ったところでしょうか。
図1:BarPlot
それでは、
次のような少数例題ではどうでしょうか。
薬剤 改善 改善せず 計 非改善率
A 20 15 35 0.4286
B 25 5 30 0.1667
(やさしい医学統計手法「表16」を改変使用)
この様な比率の差の検定は、Fisher's Exact Probabirity Test の対象となり、
Pr=0.02098(片側)、Pr=0.03139(両側)
から、2つの薬剤の非改善率に有意な差があると言えます。
検出力は、
次のRプログラムから求めることが出来ます。
Rプログラム
library(statmod)
power.fisher.test(0.4286, 0,1667, 35, 30, alpha=0.05, nsim=100)
power=0.63
これを、前述の比率の差の検定と同じ方法で求めると、
Chi-squared=4.0449(Yatesの補正)、p=0.0443(有意)
効果量e.s.=0.5863、検出力power(α=0.05)=0.654
となり、Fisher's test の結果をほぼ同等の結果となりました。
図2:BarPlot