統計ブログはじめました!

各専門分野の統計技術、方法、テクニックなどを気ままに分かり易く例題をもとに解説します。

医学と統計(40)

2010-03-21 19:00:43 | インポート

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サーストンの一対比較 ( Thurston's Paired Comparison ) について。
医療従事者の救命救急講習会でAEDの使用について、次の様なアンケート調査をしたとします。

 A:誰でも使用出来るのが良い。 
 B:医師や救命救急士に限るべきだ。 
 C:間違っても安全であること。

そして、集計結果が表1の様であったとします。

表1:アンケートの集計結果
    A   B   C
A   *   15  12   
B   7   *    12
C      5       14       *

表1は、
AとBの比較でAが重要とした人が15人、Bが重要とした人が7人、
AとCの比較でAが重要とした人が12人、Cが重要とした人が5人、

と言う事になります。この結果から AED 使用の認識に差があるかを見るのがサーストンの一対比較です。分析結果は図1の様に一次元上の Score の散布によって表すことが出来ます。

図1:Score 散布図
Blogthurstone

 

図1から、
AEDの使用では、「A:誰でも利用出来るのが良い」と「C:間違っても安全であること」が多く、
「B:医師や救命救急士に限るべきだ」の意見は少ないようです。
「A・B・C」相互間の出現比率は、
A:B [ 68.18% , 31.82% ] , p=0.0348 ( Significant )
A:C [ 54.55% , 45.45% ] , p=0.763   ( N.S.)
B:C [ 36.36% , 63.64% ] , p=0.1317 ( N.S.)

となり、
各2群間の母比率の検定では、A と B 間に統計学的な有意差があると言えます。
すなわち、
救命救急受講者のAEDに対する認識は、「A:誰でも使用出来るのが良い」と言う事になりますが、実際の現場に遭遇すると医療従事者でも躊躇するようですので、やはり、機会があれば救命救急講習会を受けておきたいものです。次回は、
シェッフェの一対比較について考えます。


医学と統計(39)

2010-01-23 17:07:41 | インポート

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前回はカイ自乗検定での効果量(e.s.)と検出力(power)について考えました。今回は比率の差の検定での効果量などを考えて見ましょう。例題として、
前回と同様に、「やさしい医学統計手法」(下記URL)から引用します。
http://kstat.sakura.ne.jp/medical/med_008.htm

「例題10」の表15は次のようになっています。
      標本     検査総数     Ⅲ型分類数     分類率
    A施設       1058              642             60.68%
    B施設         218              112              51.38%

この例題は、
顕微鏡的細胞診検査で2つの施設間においてⅢ型分類の比率に差があるかを問うものです(Ⅲ型が多いと診断精度に疑問が生じます)。
 ・ 検定統計量Zによる検定では、
                Z0=2.4665、p=0.0136
 ・ 検定統計量カイ自乗による検定では、
                Chi-squared=6.094(Yatesの補正)、p=0.01356

となり、有意な差があると言えます。
その効果量はe.s.=0.1877、検出力はpower=0.449 ですので、Cohenの効果量の目安から「中~大」と言ったところでしょうか。
図1:BarPlot
Figure15

それでは、
次のような少数例題ではどうでしょうか。
           薬剤        改善        改善せず        計        非改善率
            A              20              15               35          0.4286
            B             25                 5               30          0.1667
(やさしい医学統計手法「表16」を改変使用)

この様な比率の差の検定は、Fisher's Exact Probabirity Test の対象となり、
 Pr=0.02098(片側)、Pr=0.03139(両側)

から、2つの薬剤の非改善率に有意な差があると言えます。
検出力は、
次のRプログラムから求めることが出来ます。
 Rプログラム
 library(statmod)
  power.fisher.test(0.4286, 0,1667, 35, 30, alpha=0.05, nsim=100)
  power=0.63

これを、前述の比率の差の検定と同じ方法で求めると、
 Chi-squared=4.0449(Yatesの補正)、p=0.0443(有意)
  効果量e.s.=0.5863、検出力power(α=0.05)=0.654

となり、Fisher's test の結果をほぼ同等の結果となりました。
図2:BarPlot
Figure16

 


医学と統計(35)

2009-12-01 12:32:51 | インポート

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今回は Propensity score(傾向スコア)の概要をご紹介します。例えば、
2つの Group ( TRUE群とFLSE群)があって、この2つのグループを説明する変数( X1, X2 )があったとします。医学においてTRUE群は対照群など、FALSE群は治療群などであり、X1 や X2 は年齢、性別、血圧など・・・・などが考えられます。すなわち、
Formular ( Group ~ X1 + X2 ) は Logistic 回帰分析によってTRUE群かFALSE群かのいずれかに属する確率(0.0~1.0)を得ることができ、この確率を Propensity score(PS)と言っています。これは X1 や X2 などGroupに影響を及ぼす因子を調整することになり、背景因子を除いた母集団検定などに用いられています。仮想例題ですが、

Ps1_6  左図は2群のある観測値で、その平均値±標準偏差はTRUE群(n=47)=10.66±4.90、False群(n=37)=13.69±3.96 だったときの t-test の結果は「 t-value=-3.566、df=82、p-value=0.0030 」で統計学的に有意と判断されます。ここで、

 

因子 X1 を例えば年齢などと仮定して、Logistic 回帰分析を行ったTRUPs2_4 の様になり、これがPSの散布図です。
この散布図を通常5つ以上のクラスに分けて t-test を行えば因子X1(例えば年齢など・・など)の背景因子を調整した母集団検定となります。正確には、Pair maching とか Full maching  などの方法が開発されており、R program の Library( optmatch )にある関数( pscore.dist )を用いるのが簡便かと思います。下図のR program による Full maching 結果は次の通りでした。
----------------------------------------------------------      
Welch Two Sample t-test
data:  tmean and cmean
t = 2.0899, df = 51.91, p-value = 0.04155
alternative hypothesis: true difference in means is not equal to 0
95 percent confidence interval:
0.1032125 5.0856764
sample estimates:
mean of x  mean of y
3.3111111  0.7166667
----------------------------------------------------------

 


独立業務請負業(33)

2006-12-13 18:51:09 | インポート

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情報統計研究所(ISL)のご紹介

病院の検査科にパソコンを持ち込み分析機器とのオンライン化を出来ないか試みることにした。そもそも「日立ベーシックマスタ・レベルⅡ」はホビー用でありオンラインのための出力端子など付いていなかった。しかし、パソコンショップ社長の優れた知識・知能・技術によりオンラン化に成功し、「日立ベーシックマスタ・レベルⅡ」による検査業務のシステム化を果たした。この様な業務利用は珍しかったのだろう、日立製作所の担当者が見学に来たほどである。また、パソコン誌に紹介さされなど、パソコンショップとの関係は密接になって行った。当のパソコンショップも表計算ソフトなどパソコンソフトを開発し、一躍、ベンチャーの覇者としてローカルTVに出演するなど繁盛しているようだった。

そのパソコンショップには小中学生から高校生や大学生などが頻繁に出入りしており、その中から非凡な「パソコンおたく」が現れた。パソコンへの天才的な感性を持った少年達がこのパソコンショップから生まれたのである。