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映画【檸檬のころ】

2007-11-02 23:20:20 | 映画
檸檬のころ
2007
岩田ユキ


卒業間近の高校生の決して二度とは訪れない甘酸っぱい生活を描いた本作。
モチーフは大好物。

「オメェ、イイ球投げんな!オラ、ビックリしたぞ!」という直球ど真ん中の感想のはずが、アレレ?何かが違う。
確かに、直球ど真ん中なんですが、キレが無い。リーチしない。
どこかの2軍のチンタラした試合を見ているかのような映画です。
これがプロ前の熱闘甲子園ならまだしも、プロが作ってしまったとうのが問題。
こういうと怒る方もいらっしゃるかと思うのですが、敢えて言うとワールドカップを観た後にJリーグを観た感覚と似ています。


多分、私が同じ脚本を渡されても似たような画を撮ってしまう可能性が非情に高いです。
というか、誰でも思いつくんですよ。こういう映像。
というか、いろんな映画からのカットのパクリが多いですね。
主な出典は山下敦弘監督の「リンダリンダリンダ」、宮崎駿監督の「耳をすませば」、岩井俊二監督の「ラブレター」です。
それを取り込んでグツグツに煮込んで、その出汁で新しい映画を作ってしまえばそれ自体が映画の価値になるんですが、パクって並べただけだからそこに必然性が無い。
スペシャルさが無いんですね。

大切に機微を描かなければいけないテーマなのに、もの凄くフラット。
最大公約数というか、あなたにもこんな時代あったでしょ?というただの回顧でしかない。
「良い想い出でしょ」と突きつけてくる。
誰の回顧の湾曲なのか。
ある意味、暴力的。
こんなのは幻想でもなく、嘘でしかない。

なんか、違うんだよなぁ・・・。
そうじゃないんだよなぁ・・・。

「檸檬のころ」というタイトルも「ファーストキスは檸檬の味」という文字に起こすと結構グロテスクなこの言葉の響きからとっただけだとおもわれても言い訳できないでしょう。
10代後半のグロテスクさというものを全く描こうとしないで、その表層だけすくったってどこにも届きません。
「青春のキラメキ」というのは、そのキラメキを生む光の副産物である影の部分を描かなければいけない。
影がつくる輪郭を描かなければその影を生むキラメキは描けないと思うのです。


そんな中、谷村美月だけががんばっていたなぁ、という印象。彼女だけが映画に入っていました。
でも、「カナリヤ」の時の憑依しているかのような存在ではなく、とにかく全編に対して必死だという意味で。
そこだけに好感が持てました。


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