備前の古社を訪ねる(備前国内神名帳の研究)

備前の由緒ある神社を巡礼する

コラム140.一宮(その3・石上布都魂神社)

2009-03-24 20:00:14 | Weblog
「石上布都魂神社」も「全国一の宮会」に加盟し、「備前国一宮」を称される(写真:社殿前の石柱に「備前一宮」とある。)。その趣旨が明確でないが、一宮が「国司が赴任後最初に参拝する第一の神社」(通説)の意味であるとすれば、そうした根拠があるのだろうか。
大和国「石上神宮」は「記紀」に記された最古の神宮とされるが、当神社はその元宮であるとの説があり、そうであれば確かに吉備国でも最古の神社なのかもしれない。当神社の祭神は素盞嗚尊であるが、明治時代以前は素盞嗚尊が八岐大蛇を斬った十握剣の霊=布都魂を祀ったものとされていたという。そもそも「フツ」という語は、物を断ち切る音を表現しており、剣の鋭さを神格化したものともされる。こうしたことは、古式の祭祀を反映したもので、スピリットを「神」とする考え方だろう。
ただし、残念ながら、後世にはこうしたスピリット信仰はあまり高く評価されなくなったように思われる。磐座祭祀から神社となったと思われる古社もそうだが、神階は必ずしも高くはない。当神社の解説に「備前国総社神名帳では正二位と記載されている」と書かれているものが多いが、神名帳西大寺本では従四位下となっている(「吉備津彦神社」は一品、「安仁神社」が正二位。赤坂郡では「布勢神社」と「高蔵神社」が従二位など、当神社より高い。)。
上に「一宮」の通説的な定義を書いたが、「一宮」を官製・公認の制度とする立場からは、中央政府からの通達等が「一宮」を通じて伝達されたのではないか、とする説もある。その当否は別にして、「一宮」は単に精神面での権威(それは古い由緒などからもたらされる)だけでなく、経済的・政治的な権威も必要であったのだろう。その意味で、当神社は、あまりに素朴で、深奥にすぎると思われる。


玄松子さんのHPから(石上神宮):http://www.genbu.net/data/yamato/isonokami_title.htm