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シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

"独断と偏見" で世相・経済からコミックまで 読んで楽しい 面白い内容を目指します。 

カルショーの嘘

2021年03月26日 | 音楽関係の本を読んで
左から『ラインの黄金』(1958年)、ニルソン ショルティ VPO の『サロメ』(1961年)。 右上端に “ソニック・ステージ” のロゴがある。 右はカルショー。
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「『ラインの黄金』で私は何食わぬ顔でいった __ 終幕のラインの乙女たちの声は、虹の架け橋の下から聴こえてくるはずだ」(※ 398p 20章「サロメ」から)
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『レコードはまっすぐに』- あるプロデューサーの回想 - ジョン・カルショー 著/山崎浩太郎 訳 (2005年 学研 ※)
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「この言葉を殆どの批評家が取り上げ、驚きとともに引用したのだが、勿論 これはありえない。 ステレオは左右と中央を示し、遠近の距離感も表現できるが、高低を示すことなど出来るはずがない」

__ 批評家というのがどういう類の人たちか、これで想像できるというものです。 あまりにも『ラインの黄金』の録音が衝撃的だったので、それを制作したカルショーの説明を鵜呑みにしてしまったのでしょう。 逆に “これ” を取り上げないと、イッパシの批評家に加えてもらえないという雰囲気だったと思います。
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「『サロメ』でも新しい “嘘” を試すことにした。 オペラ録音に関して 全く新しい録音法を開発したといってみたのだ。 実際は管弦楽を表現するのに非常な注意を払ったというだけなのだが。

私たちはそれを “ソニック・ステージ” と名付けた。 後でやり過ぎたかなと気になり出したが、もう手遅れで 宣伝を止められなかった。 そして それはとても効き目があった。 大きな技術的進歩として歓迎されたのだ」(328p)

__ 当時の LP ジャケを見ても、その完成度が高いと思います。 いかにも “おどろどろしい妖気の漂うサロメ嬢” が立ち上がって歌い出しそうな雰囲気です。 写真撮影で ニルソンに、こいう顔をしてくれとカメラマンか現場ディレクターが要求したのでしょうね。
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「ある挑戦をする事なしに、どのくらい DECCA で仕事を続けられるか、分からなかった。 私たちは『指輪』を完成しなければならず、『ラインの黄金』録音からまもなく 4年も経ってしまうのは、とても気がかりだった」

「『ラインの黄金』の技術の高さが与えた影響、レコード業界で名のある 全ての賞を取ったにも係らず、重役たちはプロジェクトの続行を奨励しようとはしなかった」(404p)

__ 驚きますね。 DECCA が一丸となって『指輪』完成に向けて邁進していたとばかり思っていましたが、そうではなかったようです。

「(DECCA 重役) ローゼンガルテンが聞き取れる言語は “恐喝語” だけである。 1961年 カラヤンが『指輪』全曲録音を企画しているという噂を彼が知るように仕向けてみた。 この話しが簡単に否定できる事はよく判っていた」(405p)

「カラヤン BPO の『指輪』が出現したら、手強い競争相手になるだろう。 重役2人は協議した。 カラヤンに電話を掛けてみれば、ハッタリかどうか確かめてみる事ができるだろうが、彼らは電話せず、翌年の『ジークフリート』を準備する許可を私に与えた。 お安い御用だった」(406p)

__ と、これでカルショーは大手を振って『指輪』の2作目に取り掛かることができた、という訳です。 カルショーはナカナカの仕掛け人、ハッタリ屋です。 でも そのお陰で 世界のワーグナー・ファン、ハイファイ・オーディオ・ファンは待望の演奏録音を得られたのですから、”カルショーの嘘” には感謝しなくてはならないですね。

皆さんもご存知の通り、カラヤン BPO は1960年代後半に DG で『指輪』録音に取り掛かります。 ”カルショーの嘘” がまことになったのです。 前半2作は高評価、後半2作はそうではないようです。 DG にはカルショーがいなかったせいでしょうか?

今日はここまでです。

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