
左からギューデン、中央上は モラルト指揮ギューデン主演の『ジュディッタ』解説書、 右はギューデン主演の『メリー・ウィドウ』、中央下はシュヴァルツコップ主演『メリー・ウィドウ』(モノラル EMI 盤)、右はカラヤンの『こうもり』
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「57年にすでに決まっていた録音に『ジュディッタ』全曲盤がある。 抜粋で 有名な ”熱き唇” とテノールの2つのアリアと二重唱1曲を片面に収め、もう片面にはレハール他のオペレッタ曲を入れたら かなりの商業的成功になるかも … でもギューデンのような傑出した歌手が主役でも (全曲盤は) 長過ぎた」
私はこのハイライト盤 CD (75分) を入手しましたが、それほど全部がヒドイ曲だとは思いません。 解説書では プロデューサーやエンジニアの名前が抜けています。
「58年 (34歳) シュトルツ指揮ギューデン主演で『メリー・ウィドウ』を制作したが、ギューデンは最初から最後まで風邪をひいていたし、シュトルツが自分で作曲した序曲はレハール自身の不出来な序曲よりも “出来が悪く” シュヴァルツコップが歌うアッカーマン指揮の EMI モノラル盤に対抗できず 売れなかった」
ギューデンが成功したのは、ロザリンデ役で出演したカラヤン VPO の『こうもり』だと思います。「目をみはるような美女のギューデンの絶頂期がシュヴァルツコップの影に隠れてしまった」とも付け加えています。

左から アンセルメ指揮の『ペトルーシュカ・火の鳥』、『シェエラザード』、『第九』
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「スイスの指揮者 アンセルメ (1883~1969) とデッカには “感傷的な連帯” があった。 戦後のデッカの ffrr 方式 (full frequency range recording) を軌道に乗せたのは、彼の指揮した『火の鳥』『ペトルーシュカ』『シェエラザード』のレコードだった」
「問題は1950年代後半には 彼がその名声の基礎のレパートリーを全て録音してしまっていた事にある。 ステレオの登場はデッカに一時的な猶予 (再録音) を与えた。 古典作品 (モーツァルト ベートーヴェン ブラームス) を録音したいという彼の意欲を止められなかったが、彼はその分野で殆ど “才能がなかった”。 アンセルメの古典作品は初めから悲惨な売れ行きだった」
アンセルメは舞踏音楽や『シェエラザード』などの人気曲の範囲から出ない方が良かったと思います。 そうすればそれらの専門家というイメージを堅持できたでしょう。
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アーチストは、デビュー後の数枚のレコードで 自分のカラーをある程度作ってしまいます、この人はこれらの分野の専門家と。 それから外れたレコードを出しても、あまり売れません (似た例にマッチョマンで売り出した映画俳優 S. スタローンはコメディで失敗)。 また 網羅的に 何でもかんでも手を出すと、逆に掴みどころのない “何でも屋” か “職人” のイメージになってしまいます。 その辺の初期のイメージ作りが大事なんですね。
続く