*『リンゴが腐るまで』著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。41回目の紹介
『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-
著者 笹子美奈子
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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介
第3章 復興が進まないワケ
病める自治体
(前回の続き)
復興作業に加え、通常業務も当たり前にやらなければならない。だが、通常業務も原発事故前と比べ、作業量が増えている。まず、役所自体が避難先の仮庁舎で業務を行っており、前年度の資料がなく、以前どうやっていたのかわからないことが多く、土台作りから始めないとならない。会議一つ行うのも一苦労だ。
まずは、場所取り作業。
たとえば、住民向けの説明会を開催するにしても、会場として使える場所がどこにあるのか、探す作業から始まる。原発事故前であれば、自治体内の公共施設など、普段使用している自前の施設をおさえればよかったが、避難先のため、開催場所の手当をつけなければならない。すんなり見つかればよいが、駐車場がない、人数が入りきらないなど、なかなかうまくいかなことが多い。会場のセッティングからして手間が増えている。
さらに、原発事故前であれば地域単位で1回ずつ開催すればよかったものを、住民の避難先が複数の市町村に分散しているため、避難先ごとに複数回開催しなければならない。もちろん、会議には何人かの職員が同席するため。往復の時間を含め、拘束されることになる。(中略)
原発事故後、苦情を寄せる住民が増えた。仮設住宅など避難先での生活の不便を訴える内容、避難元の自宅がネズミやイノシシで荒らされ、対応を求めるもの、放射線の影響への疑問、除染を進捗状況に対する不満、東電の賠償への憤り、いつになったら元の生活に戻れるのかという不安の声、住民向けの説明会や日々役所にかかってくる電話など、様々な場面でこうした対応に追われている。住民自身も避難生活でストレスがたまっており、やり場のない思いを役所の職員にぶつけるケースも多いという。
※「第3章 復興が進まないワケ「病める自治体」」は次回に続く
2016/8/29(月)22:00に投稿予定です。