＊『世界が見た福島原発災害』著者：大沼安史
「第１３章 カク・ミチオ教授の警告」を複数回に分け紹介します。１回目の紹介
福島原発災害は、東電、原子力安全・保安院など政府機関、テレビ・新聞による大本営発表、御用学者の楽観論評で、真実を隠され、国民は欺かれている。事実 上の報道管制がしかれているのだ。「いま直ちに影響はない」を信じていたら、自らのいのちと子供たちのいのち、そして未来のいのちまで危険に曝されること になってしまう。
本書は、福島原発災害を伝える海外メディアを追い、政府・マスコミの情報操作を暴き、事故と被曝の全貌と真実に迫る。
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＊＊『世界が見た福島原発災害』著書 「第１３章 カク・ミチオ教授の警告」の紹介
原発難民
ニュヨーク・タイムズの記者が山形県山形市に入り、福島から逃げてきた「原発難民」のルポルタージュを書いた。３月１８日付の同紙電子版に載った。タイトルは、「数千人が放射線の恐怖と不信から脱出を迫られる」。ここでいう「不信」とは、日本政府と東電に対する周辺住民の不信感のことである。
「放射能の恐怖」と「当局不信」が住民たちを駆り立て、奥羽山脈を越えた山形市まで追い立てたのだ。福島の浜通りから山形へ。この逃避行は、尋常なものではない。
周辺住民が抱いた「恐怖」と「不審」は、それほどまでに激しいものだった。
「安全です」と言っていた虚構が崩れたあとの空白に、「政府」は信用ならないという思いと「放射能」への恐怖が一気に広がった。
「現在のところ、放射性物質による施設の外部への影響を確認されておりません。しがたって、対象区域内の居住者、滞在者は現時点では直ちに特別な行動を起こす必要はありません」
「放射性物質を含む空気の一部外部への放出が行われますが、管理された中での放出でございます」
「何らかの爆発的事象があったということが報告をされております」（いずれも枝野官房長官の記者会見での発言）
周辺地区に最初に広がったのは、困惑だった。「えっ、どういうこと？」
そして次の瞬間、気付いたのだ。政府は助けに来ないことに。
もう逃げるしかなかった。政府の発表をまともに信じる者は、信じたいと思う人は２０キロ圏内ではとくに、事情があって身動きのとれない人以外、ほとんどいなかった。
浪江町の「ムネヒコ」さん（３６際）は１５人と１匹のゴールデン・レトリバーを引き連れ、４台の車で逃げて来た。
４台の車列は、もうそろそろ大丈夫と、ある町に差しかかったところで止まった。でも、まだ安心できないと思い直し、すぐに走りだした。西へ、西へ逃げた。止まっては走り、止まっては走りを繰り返し、とうとう山形市まで来た。
ニューヨーク・タイムズ紙の記者は山形市の避難所で、避難民に次々にインタビューして記事にしていた。
主婦の「クミコ」さんは、屋内退避の２０～３０キロ圏内から逃げて来た。地震で水道が止まってしまった。飲み水を確保するには屋外に出なければならない・・・脱出するしかなかった。
建設作業員の「ヒトシさん」（３４歳）は避難圏外の原ノ町からの避難者。「東電は全部、明らかにしているわけではない」と不信感をぶつけた。
そんな避難民の中に「サダコ」さんという７０歳になるおばあさんがいて、「助かりたいの一心で逃げて来た」と語っていた。
Sadako・・・。あのヒロシマの原爆少女、佐々木禎子さんと同じ「サダコ」。２歳で被曝し、折り鶴を折りながら１２歳でなくなった禎子さんと同じ名前で年も１つ違い、２人は同じ世代であることに、記事を読んで気付いた。
そしてそのことに気付いたら、次にこんな考えが湧いた。
ヒロシマとフクシマの違いーそれは戦時中の「必勝」が、現代の福島では「安全」に変わっていただけのことではないか・・・。ヒロシマとフクシマは同じなのだ。政府の言う事を信じ、次には裏切られ、放射能の恐怖の底に突き落とされた点ではー。
※続き「第１３章 カク・ミチオ教授の警告」は、7/17（金）22:00に投稿予定です。
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