*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽
「第7章 メルトダウン再び」を複数回に分け紹介します。4回目の紹介
( Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。
作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。
( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。
過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」
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**『東京ブラックアウト』著書 「第8章 50人の決死隊」の紹介
前回の話:第8章 50人の決死隊 ※3回目の紹介
ガソリン不足も新崎県全域を襲った。
車社会の新崎県では普通の住民の給油は、平常時はだいたい週に一度のペースだ。それが元日の朝から一斉にガソリンスタンドに客が押し寄せた。誰しも、できるだけ遠くに避難するために満タンにする。早い者勝ちの世界だった。
6号機の格納容器が爆発する前に、既に県内のガソリンスタンドでは、製品のほとんどが売り切れになっていた。わずかに残るガソリンスタンドは、価格表示のパネルにガムテープで桁を一つ追加して、リッター1000円で販売していた。
どの時代も、パニックに便乗して客の足元を見る悪徳業者がいる。石油ショック時のトイレットペーバーしかり。しかも、原発事故という過酷な状況下での販売であれば、売るほうも命がけである。それが適正価格かどうか、誰にもわからなかった。
石油需給適性化第9条には、経済産業大臣は、ガソリンの使用の節減を図るため、必要があると認めるときはガソリンスタンドに対し、給油量の制限、営業時間の短縮、その他必要と認める販売方法の制限を実施すべきことを指示することができる、とある。この法律が発動されれば、一部の物が買い占めないように、一人当たりの販売量を、1回の給油につき10リットルまで、などと制限することができる。
また国民生活安定緊急措置法では、緊急時には、第8、9条で政府が政令で定める物資の特定標準価格を定めて、第11条で、それを超える値段で販売した事業者には、その差額について課微金の納付を命じなければならない、とある。いざというときに、業者が買い手の足元を見てふっかけることを防ぐための法律だ。
ーしかし、法律は無力だった。
経産大臣には、新崎県のパニック下でガソリンがどのように売られているか、そもそも知る由もなかったから、石油需給適正化法に基づく指示など出しようもなかった。
国民生活安定緊急措置法についても、そもそも政府は、この法律の対象となる物品を政令で定めていなかった。したがって、ガソリンの特定標準価格を定めようにも定めようがなく、業者は吹っかけ放題だった。
・・・結果として、弱いものが出遅れ、仮に避難の車が手配できたとしても、ガス欠で幹線道路の路肩に自動車ごと取り残されることになった。路肩で、家族全員が嘔吐のうえ窒息死している自動車や、家族全員が凍死している自動車が、いくつも並ぶことになったのだ。
※続き「第8章 50人の決死隊」は、5/13(水)22:00から投稿予定です。
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