*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽
「第7章 メルトダウン再び」を複数回に分け紹介します。5回目の紹介
( Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。
作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。
( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。
過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」
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**『東京ブラックアウト』著書 「第8章 50人の決死隊」の紹介
前回の話:第8章 50人の決死隊 ※4回目の紹介
(30)
2度にわたる爆発にもかかわらず、かろうじて新崎原発の免震重要棟と官邸とは、テレビ会議システムがつながっていた。
「・・・いま7号機の格納容器も爆発したみたいです。残留していた所員は、瓦礫の処理と電源の復活に出払っていたのですが、この状況だと、おそらくもう全滅ではないかと・・・」
テレビの映像越しに見る新崎原発の免震重要塔の緊急時対策室には、もうほとんど人形が写っていない。落城前の天守閣のようだ。
「ぐぇ、ぐぼっ、げーっ」
画面上で突然、所長代理が、免震重要棟の緊急時対策室で嘔吐を始めた。
ずっと何も食べていなかったのだろう。黄色い胃液に血が入り混じっている。画面越しに、酸っぱい匂いが、官邸のオペレーションルームにも漂ってくるようだ。
新崎原発のリアルタイムのモニタリングデータは、1シーベルトという驚異的な値に跳ね上がっていた。プールにある使用済み核燃料が、爆風とともに吹き飛ばされた結果であった。
「・・・申し訳有りません。もう私たちに、この現場においてできることはありません。私は、命ある限り、ここで原発を見届けます。とにかく、警察でも、消防でも、自衛隊でも、米軍でも、何でもかまいません。国家の総力を挙げて、こやつを抑え込んで下さいっ!」
所長代理の黄ばんだ顔には、死相が表れている。
しかし死相が現れているのは、総理も同じであった。
再登板から3年を超え、日々の激務に加え、外遊の疲れが蓄積していた。外遊は本人が望んだというよりも、婦人の咲恵の希望と外務省の希望との最大公約数の結果であった。
3年間の外遊による度重なる疲労が極限に達したところに、今回の事故だ・・・目の下にはクマができ、顔のシワはより深くなり、皮膚は黄ばんで、ところどころシミが現れている。疲れたときに現れるアトピーも再発していた。そして、持病がある胃腸の調子もよくない。
おまけに昨夜は悪夢にうなされていた・・・。
※続き「第8章 50人の決死隊」は、5/14(木)22:00から投稿予定です。
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