福島市大波地区では、住宅・公共施設の除染の87パーセントが終了しました。しかし、森林等が地区の大半を占め、もとの大波地区を取り戻すためには今後も多くの人手が必要となります。
今回、当地区をボランティアによる除染のモデル地域と位置づけ、地域住民と協働参加いただけるボランティアを募集します。
10月最後の週末は福島に1泊2日で単身お出かけ。
福島市社会福祉協議会が募集した「除染ボランティア」に参加するためだ。自分のまわりでもこの活動に興味ある人が多いので、今後行く人の参考になるよう、簡単にレポートしたい。
福島駅に9時集合〜福島市が手配したバスで現地に向かう
私は公募除染ボランティアの活動としては第一回になる、10月29日(土)の活動に参加した。本当は30日(日)も活動予定だったんだけど、数日前に電話があり、29日のみに変更になったと知らされた。
福島駅までは新幹線で。
土日二日間で乗降りし放題8,700円というJR東日本のウィークエンドパスも発売されているので、それと新幹線特急券の組合せもおススメだ。私は初日は新幹線を使い(上野─福島間の新幹線料金は片道3,680円)、二日目は東北本線であちこち観光しながらのんびり帰ってきた。
この時は25人乗りくらいのミニバス2台が手配されていた。
自家用車で直接現地に向かった人も多かったので、駅送迎組は30人弱。
市内中心部を抜け、のどかな山と田んぼ風景の中をかなり走り、市東部の大波地区へ。ここは全市一斉放射線量測定で、調査地点の50%以上で2マイクロシーベルト/時以上を記録した「最重点除染地域」だ。
この日は見事すぎるほどの秋晴れ。
ボランティア活動に来たというよりはこれから里山ハイキングにでも行きそうな雰囲気。
「晴れましたねえ」
「ほんと、絶好のボランティア日和ですよね」
「どちらからいらしたんですか?」
初めて顔合わせた人同士語りながら集会場へ。
大波地区集会場で受付〜積算線量計を渡され説明を受ける
集会場の前に長テーブルが置かれていて、そこがボランティアの受付け場所。名前を言うと、腕章と積算線量計を渡され、自分の班が告げられる。
私はA班だった。
初めて実物みた積算線量計。
手渡されるときに市の方がスイッチを押してくれるので、その時点から計測が開始される。たとえば1マイクロシーベルト/時の場所に4時間いれば、積算線量は「4マイクロシーベルト」になる。
年間でその数値が1000以上にならないよう、社協(市?)側でも名前や生年月日とともに記録&管理してくれるのだという。
建物入口には必要な装備がいろいろ置かれていた。
- 使い捨ての薄いビニール手袋
- 軍手
- タオル
- ティッシュペーパー
- 不織布マスク
それぞれ自分の分をとって建物内に。
そして中で全体説明。
朝集合で到着した人は70名程。その後午後から参加組もいて、この日の活動ボランティア人数は109名になったと、後で社協公式サイトで知った。
初日だったこともあり、テレビカメラが3組ほど、他に新聞社や通信社の取材が大量に入っていた。私はアップに耐えられないお年頃なので、なるたけテレビカメラの背後にまわり、取材チームのいない場所に逃げた。
(略)
作業は「落ち葉清掃」と「客土をかぶせる」
全部で4班(午前中到着組は3つの班)にわかれ、それぞれ作業場所に向かい作業開始。
服装は、ジャージ上下の人やヤッケ上下の人などいろいろだが、作業でついた土や埃をなるべく集会場内に持ち込まないようにすることや、帰りは着ていたものを脱いでビニールに入れて持ち帰ることを考えると、ビニール素材のヤッケのほうがよかったかなと思った。靴は草ぼうぼうのところにも入っていくので、やはり長靴のほうが土も入らず便利。私は普通の服に普通の靴で参加してしまい、ちょっと後悔した。
現地で支給された薄手ビニール手袋+軍手でもいいが、とげのある草とか掴んでしまいちょっと痛かったので、より強力な皮軍手(ワークマンやDIYで確か300円くらい)を買って持参したほうが、使い分けられてよかったかもしれない。
マスクは、粉じんやアスベストがでる被災地家屋内作業とかでなないので、不織布マスクで十分だが、心配なら念のため粉じん対応のマスクなど持っていってもいいだろう。ただ息苦しくなるN95とかはやめたほうがいいと個人的には思う。どう見ても「脇から思い切り空気すっちゃってるじゃん」という状況にならざるを得なくなるので。
【追記(2011.12.05)】不織布マスクでは不十分との指摘を受けました。また12月に参加した際には、防塵マスクを配られました。
私達A班は女性も多く、説明を受けた集会場のまわりと隣接小学校の落ち葉清掃だった。B班はもう少し肉体作業で、バスに乗って少し離れた作業場へ。汚染土壌を既に撤去した民家の庭に、新しい客土を入れてかぶせるという作業だった。
高圧洗浄機を使っての本格的な除染や、側溝の掃除などは、専門業者や地元の方々が既に済ませていて、より安全な、放射線量も低く改善された場所での作業がボランティアの分担になっているようだ。
たった一日だからもっとバリバリ作業したい気もしつつ、不慣れできちんと指導も受けてないボランティアだと、怪我につながったり、うっかり有害物質吸い込んじゃったりとか、いろいろ心配事もあるのかもしれない。
でも落ち葉回収だって大切な作業。
3月から4月にかけて降り積もった放射性物質は地中に入り込み、それを木が吸い上げて葉っぱに蓄積、秋に落葉する。
そのままにしておいたらまた土に還ってしまう。
地道な作業ではあるけど、落ち葉を回収して、安全な施設で焼却することには意味がある。そう草野防災専門官が一番最初に説明をしてくれたので、結構モチベーションはあがった。
「きれいにしちゃるぜ!!!」と。
集会場のまわりはそれほど面積ないものの、これだけ集まった。
密集した生垣状態のところから竹ぼうきで掻き出したり、なかなかどうしてじんわり汗もかく作業だった。他の参加者ともいろいろ話ができた。関東からの人が大半だけど、北海道や福井、神戸から来ている人なども。夫婦や友達同士で来ていたり、以前に福島県の沿岸津波被災地でのボランティア活動で一緒だった仲間同士で来ていたり。
お昼ご飯は集会場で/お味噌汁が美味しかった!
午前10時頃から作業して、途中一回休憩をはさみ12時にはお昼休憩に。
あっという間の二時間だった。
さきほど全体説明があった大きな和室にはテーブルと座布団が並べられていて、ペットボトルのお水やお茶とともに、あたたかいお味噌汁が用意されていた。
地元の方々が用意してくださったとのこと。
集会場内の調理室で3人くらいの女性が到着した時からずっと作業してくれていたのはこれだったんだ。
石巻テント村でも、「ボランティアのための炊き出し」してくれてる人達がいて、一緒のチームだった女性は、被災地・雄勝の悲惨な状況にナーバスになっていたところに重なって涙してしまったほどだけど、誰かが自分達のために作ってくれたあったかい食べ物がでてくるって、それだけでほっと和むもの。
全体説明の時に、草野防災専門官が「遠くからきてくださった皆さんへの地元の方の感謝の気持ち。安全な材料使ってるのでどうか食べてください」といっていた。
わかめとお豆腐、長ネギがたっぷり入ったお味噌汁はとってもおいしく、私達のテーブルのメンバーは余っているのももらって、二杯ずついただいてしまった。
テーブルには最新の広報誌も。
9月に入ってからようやく固まった地域除染に関する方針や進め方などが掲載されていた。
「もっと早くに、国主導で着手できなかったのだろうか」
ついそんな気持ちも湧いてしまうが、今は非常事態。
後ろ振返って批判するよりは、先に進むほうに思考も体力も時間も投入したほうがずっといい。
除染ボランティアとして私一人がやれることなんて本当に微々たるものだけど、それだって109人集まって共同で作業すれば、多少の面積はやっつけられる。
大波地区は山に囲まれたのどかな場所。
私が育った千葉の下総も水田地帯なので、こういう風景はとっても懐かしい。
除染作業が進むにつれ、見た目通りののどかで空気がおいしく、環境のいい場所に再び戻ってゆくイメージを膨らませながら、集会場からしばらく風景を見下ろしていた。
午後は大波小学校の校舎の周辺&土手の落ち葉を掃除!
集会場から歩いて2〜3分のところに大波小学校がある。
午後はそこに全員で移動して、再び落ち葉回収の作業だ。
すぐ裏が土手になってて、周辺も木々で覆われているので、地面いっぱいの落ち葉。
土手に生えた草の間にも分厚く落ち葉が降り積もっていた。
竹ぼうきや大きな熊手状のほうきでかき集め、両手ですくいながらゴミ袋にがんがん突っ込んでいく。土や石を入れて余計なカサを増やしてはいけないので、葉っぱと木だけがちゃんと入るように。
こちらは、土手も少しのぼって足踏ん張って両手を動かし続けたので、「落ち葉回収」の割にはちょっと体力使ったかも。ほどよく汗もかいたりして。
大勢で一斉作業するというのはすごいもので、落ち葉の絨毯みたいだった場所も・・・
あっという間に土が見えるように。
(巨大なみみずもたくさん飛び出した)
午後は割とストイックに作業をしながら、
先ほどの草野防災専門官の話を思い出した。
「なんか『風の谷のナウシカ』の世界みたい・・・」
原発事故で降り注いだ有毒物質を、木が地面から吸い上げる。
そして落ち葉とともに落とす。
風の谷のナウシカに登場する「腐海」、そして「腐海」の下にある、浄化されて土も水も空気もきれいになった神秘的な空間のシーンを思い出した。
いやまあ、あのストーリーと違って、これしきのことじゃ浄化されないのかもしれないけどね。ひまわり作戦もあまり効果ないという説もあるし(詳しいことは全然知らないです)。
まあ、そんな感じで、秋の青空の下、休憩はさみながらみんなでワイワイ落ち葉掃除していると時間のたつのは本当に早いもので、あっという間に「作業終了です〜!」という社協の方の指示の声が響いた。
うーん、もっとやりたい・・・。
そんな気持ちはやまやまだけど、多少はすっきりしたので満足。
落ち葉もこれだけ集まったし♪
最後に積算線量計をチェックして返却
再び集会場に戻ってきて最後の作業。
それは、積算線量計の数字をチェックして、朝受付けしたところで返却。
「A班の和田です。線量計の数字は・・・」
スイッチを入れてからの時間は5時間13分で、積算線量は4マイクロシーベルト。
体験話、全て→http://wada.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-9dd8.html