原発問題

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第7章 メルトダウン再び ※11回目の紹介

2015-04-20 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第7章 メルトダウン再びを複数回に分け紹介します。11回目の紹介

 

Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「第7章 メルトダウン再び」の紹介

前回の話:第7章 メルトダウン再び ※10回目の紹介

「県内は、もうPAZ、UPZに限らず、全域が大渋滞しています。いまベントされれば、新崎県民全体が放射能に晒されます。絶対にやめてください!」

 知事としても、フクシマの事故のように、このテレビ会議システムの映像と音声が後々公開される可能性があることを考えれば、軽々にイエスとはいえない。

 戦前の官選知事の時代であれば、国が県知事に命令することができた。しかし戦後、地方自治が憲法で保障され、特に地方自治法改正後に国と地方が対等だという建前になってからは、地方がノーということを国がゴリ押しするわけにはいかない。

「そもそも、ベントしなければ日本が沈没してしまうかどうかもわからないんですよね? メルトダウンした燃料が建屋の基礎を貫通しても、格納容器の健全性が一応保たれていれば、ベントより、まだましかもしれないですよね?」と県知事。一理ある考えだった。

 問題は、フクシマの事故の教訓を生かすことができていない、ということだ。

 事故後5年近くが経過したフクシマですら、メルトダウンした燃料がどれくらい格納容器にとどまっているのかどうか確証がない。フクシマを先例として検証し、対策を講じないまま、新崎原発を再稼働しているので、メルトダウンしたデブリがどのような挙動を示し、どのくらいの水素や一酸化炭素や水蒸気が発生し、格納容器がどの程度耐えられるのか、ということが一切わからないのだ。

 フクシマの事故の検証は、逮捕された伊豆田前知事が口を酸っぱくして主張していたことだったが、これも後の祭りだ。


 新崎原発6・7号機は、ABWRという最新型の原子炉であり、旧来型の鋼製格納容器ではなく、原子炉建屋と一体化した円筒形の鉄筋コンクリート製格納容器を有している。この格納容器は、耐圧機能を受け持つ鉄筋コンクリートと漏洩防止機能を受け持つ鋼製ライナーから成る。福島のマークIと異なり、堅牢であり、溶接技術の進歩などもあって、耐圧性も優れていた。

 ただ、ここに来ての悩みは、フクシマよりも堅牢で耐圧性能が高いからこそ、フランジやハッチから放射性ガスの漏洩が起こりにくいのではないか、ということであった。

「ベントできなくても、フクシマのように徐々にリークしてくれれば、かえって爆発しないから安心なのにな・・・」

 と、原子力規制委員会の1人が無責任に嘆く。

 現にフクシマの場合には、フランジやハッチに数マイクロメートルから数十マイクロメートルの余裕があったがゆえに、それがベントの代わりの機能を果たしたといってもいい。建屋周辺は汚染されたが、代わりに格納容器全体が爆発することは避けられた。

 最新のABWRの場合には、机上の計算ではなく実際にどのくらいの耐圧性能ががあるのか、内圧がどのくらいであればどのくらいのリークが起こるのか、どれだけリークが起きるとどれだけ周辺線量が上がるのかといったことが、当てずっぽうの推論でしか想像できない。

 本来、フクシマの事故の検証によってシュミレーションをしておけばよかったのだが、それがない以上は仕方がない・・・。

「ABWRの耐圧性能はフクシマとは比べ物にならないほど優れていますから、リークはないと思います」

 そう関東電力原子力事業部の1人がいうと、

「じゃ、どうして周辺線量があがっているんだ、リークしているんだろ?」

 と、原子力規制委員が疑問を呈す。

続き第7章 メルトダウン再び」は、4/21(火)22:00投稿予定です。

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)

 


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