情報公開制度について考える

情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

長野県情報公開審査会 審査案件第36号 温泉利用施設・旅館業許可施設実態調査票

2005年05月26日 | 法人等に関する情報
(審査案件第36号)
答 申


第1 審査会の結論
 温泉利用施設・旅館業許可施設実態調査票(個表)・一覧表のうちろ過循環を行っている温泉利用施設等の名称が記載されている部分及び温泉現況報告書に記載されている温泉ゆう出地の所有者の氏名を公開すべきである。
その余の実施機関の判断は妥当である。

第2 異議申立ての経過
(略)


第3 異議申立人の主張の要旨
(略)


第4 実施機関の説明の要旨
(略)


第5 審査会の判断
1 基本的な考え方
本件条例はその第1条に定められているとおり、県民の知る権利を尊重し、公文書の公開請求権を保障するとともに、情報公開の総合的な推進を図ることで県の諸活動を県民に説明する責務を全うし、県民参加による公正で開かれた県政の一層の推進をすることを目的に制定されたものである。
本件条例の目的を実現するために、実施機関が保有する情報は原則公開とし、条例の運用に当たってはこの理念が十分に尊重されなければならない。しかし、一方で原則公開の条例においてもなお、例外的に他の公益等との調整を図るため非公開とせざるを得ない情報があることから、第7条で非公開情報が定められている。個々の請求にしては、条例の原則公開の理念を尊重しつつ個別に判断する必要がある。
さらに、本件条例は、県民の知る権利を尊重する観点から、第8条において部分公開の制度を設けており、公文書の一部に非公開情報が記録されていることを理由として、当然に公文書全部を非公開にするのではなく、公開できる部分は可能な限り公開すべきことを定めている。
当審査会は、これらの点を踏まえて本件実施機関による本件決定を検討する。

2 本件公文書について
(1)本件処分1
本件処分1にかかる公文書は、「温泉利用施設・旅館業許可施設実態調査票の個表又は集計一覧表のうちろ過循環を行っている温泉利用施設等の名称が記載されている部分」、「温泉現況報告書(温泉採取者用)」、「温泉利用施設管理者用集計表3-2」(以下「表3-2A」という。)、「温泉利用施設管理者用集計表3-2引湯」(以下「表3-2B」という。)、「温泉分析書」である。このうち、「温泉利用施設・旅館業許可施設実態調査票の個表又は集計一覧表」が全部非公開、「温泉現況報告書」が一部非公開とされた。

(2)本件処分2
本件処分2にかかる公文書は、「温泉現況報告書(温泉採取者用)」、「温泉利用施設管理者集計表3-2」(以下「表3-2C」という。)、「温泉利用許可申請書の温泉を公共の浴用又は飲用に供す図面」である。このうち、現況報告書、表3-2Cの一部が非公開とされている。
上記の非公開部分の非公開情報該当性について、以下に検討する。

3 「温泉利用施設・旅館業許可施設実態調査票の個表又は集計一覧表」の非公開情
報該当性について
(1)温泉利用施設・旅館業許可施設実態調査
温泉利用施設・旅館業許可施設実態調査(以下「本件調査」という。)は、全国的なレジオネラ症感染事例の発生を受け、県が平成14年(2002年)10月に県内の公衆浴場営業施設(旅館業許可施設、温泉利用施設、温泉を利用している公衆浴場許可施設)の実態を把握するために行ったもので、県内各保健所が電話での聞取り、郵送等での調査票の記入依頼により、公衆浴場営業施設の協力を得て実施したものである。
本件調査により各施設の個表が作成され、各保健所が所管する施設の個表を集計したものが集計一覧表である。本件処分1では、集計一覧表を作成していない保健所があったことから、集計一覧表のない保健所の管轄下の施設については個表が対象文書として特定され、その余は集計一覧表が特定されている。
集計一覧表及び個表には施設の名称、所在地等の概要とともに、施設の状況としてろ過循環の利用の有無、源泉の引湯状況などの記載項目がある。本件実施機関は、公開請求の内容から、個表又は集計一覧表のうち、ろ過循環装置を使用している施設名が記載された部分(以下「本件個表又は集計一覧表」という。)を対象公文書として特定し、当該部分を本件条例第7条第3号に該当するとして全部非公開とした。

(2)本件条例第7条第3号について
本件条例第7条第3号は、「法人その他の団体(国、独立行政法人等及び地方公共団体を除く。以下この号において「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開することにより、当該法人等又は事業を営む個人の権利利益、競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公開することが必要と認められる情報を除く。」を非公開情報と規定している。
本号は、法人等又は事業を営む個人の事業活動の自由を保障する趣旨から、これらの事業活動に関する情報であって、法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるものを情報公開の例外とするものである。本号該当性の判断に当たっては、法人等又は事業を営む個人の当該事業にかかる情報が競争上の地位その他正当な利益を害するかについて、法人等又は事業を営む個人の性格や権利利益の内容、性質等に応じ、当該法人等又は事業を営む個人の権利の保護の必要性、行政との関係等を十分考慮して適正に判断する必要がある。
そこで、本件個表又は集計一覧表の本件条例第7条第3号該当性について、具体的に検討する。

(3)本件条例第7条第3号の該当性について
ア 本件調査は、県が独自に各施設の協力を得て実施した調査である。また、ろ過循環装置の使用については、温泉法又は温泉法施行規則(昭和23年厚生省令第35号)で掲示が義務付けられているものではなく、また、各施設が本件調査においてろ過循環装置の使用について報告する法的義務がなかったことが認められる。本件調査が行われた当時、ろ過循環装置を使用した温泉利用施設でレジオネラ感染症事例が各地で報告されており、当時の状況を勘案すると、ろ過循環装置の使用に関して、一般的に管理の不備などから衛生面への懸念があったことは否定できないところである。
しかしながら、温泉利用施設は利用者の存在なくして成り立たないものであり、公衆衛生の観点から、施設を衛生的で安全な状態で利用者に提供しなければならないことはいうまでもなく、どのように施設が管理・運営されているかは、事業の性質上、法人等にかかる情報であるのみならず、利用者等に対して一定の範囲で公開されるべき情報である。
また、本件調査には各温泉利用施設等が任意で応じたとはいえ、そもそも温泉利用施設は、利用者あるは利用を検討する者からろ過循環装置の使用の有無を問われれば、その事実を誠実に答えるほかにないものである。たとえろ過循環装置の使用が明らかになり、それによって施設の利用を見合わせる者がいたとしても、それは事業の性質上甘受すべきものであり、それによって直ちに法人等の正当な利益を侵害するということはできないというべきである。

イ また、長野県が平成16年(2004年)7月に温泉利用施設での入浴剤使用問題を受けて実施した「旅館・ホテル等の入浴施設及び公衆浴場調査」の結果は、42施設を除き、循環又はかけ流し等の状況も含めて各温泉利用施設等の実態が長野県ホームページですでに公表されているところである。これによって、循環を行っている温泉利用施設等の営業活動に特段の支障が生じている事実は認められていない。
さらに、平成16年(2004年)10月に環境省から発表された「温泉利用施設に関する調査」の調査結果で、日本全国でろ過循環装置を使用している浴槽を有する施設が50.4%あることが明らかとされた。すでにろ過循環装置の使用は相当に普及している状況であり、また、その実態が公にされたことによって温泉利用施設の利用者が急減した事実は認められず、本件個表又は集計一覧表を公開することで、温泉利用施設に具体的な支障を及ぼすおそれは認められない。

ウ 以上のことから、本件個表又は集計一覧表のうちろ過循環を行っている施設名は、本件条例第7条第3号に該当せず、本件実施機関の処分に理由はない。

4 「温泉現況報告書(温泉採取者用)と温泉利用施設管理者集計表3-2」(表3
-2C)の非公開情報該当性について
(1)温泉現況報告書
「温泉現況報告書(温泉採取者用)」(以下、本件報告書)は、温泉法施行細則第11条第1項により、毎年12月31日現在における温泉の現況を知事に報告するため、温泉採取者が提出を義務付けられているものである。本件報告書には、温泉採取者の住所と氏名、温泉名、温泉ゆう出地、温泉を利用する権利を有する者の住所と氏名、温泉ゆう出地の所有者の住所と氏名、土地掘削許可年月日及び指令番号、温泉の状況(ゆう出量、温度、水位、ゆう出の状況)、動力の状況、利用の状況、分析の有無、備考の記載項目がある。本件実施機関は、これら記載項目のうち、温泉採取者、温泉を利用する権利を有する者、温泉のゆう出地の所有者で、個人の住所、氏名が記載されている部分を、本件条例第7条第2号に該当するとして非公開決定したものである。

(2)表3-2Cについて
表3-2Cには、市町村名、温泉地名、利用施設名、報告者名、引湯の方法、自己源泉からの受給量、他人の源泉から引湯している場合の温泉採取者名・ゆう出地・受給量、引湯距離、加水の状況、加熱の状況の記載項目がある。
なお、本件処分1では表3-2が全部公開されているが、表3-2Aは「加温している温泉名」の公開請求に対して、表3-2Bは「1㎞以上の引湯をしている場合の温泉成分表と源泉の温泉成分分析表」の公開請求に対して特定されたもので、いずれも表3-2から該当する温泉名を容易に特定、抽出できることから、本件実施機関は当該部分を抽出して全部公開決定したものである。
本件処分2にかかる表3-2C については、表3-2に記載されたすべての項目を公開請求対象文書として本件実施機関が特定したため、表3-2A及びBと異なり、記載項目の一部を非公開としたことが認められた。

(3)異議申立ての範囲について
ア 本件実施機関は、申立人が公開請求を行った内容である、「湧出する温泉温度が45℃以上の温泉名」、「温泉の湧出量が毎分100リットル以上の温泉で、10ヵ所以上に分湯している温泉名」、「湧出する温泉の温度が35℃以下の温泉名」、「湧出している一つの温泉井戸から、複数軒に分湯している温泉の中で、各保健所管轄において次に掲げる一軒ごとの温泉利用施設名等」について、これらの請求内容に係る温泉名を整理したものがないものの、複数の公文書を照らし合わせれば把握することが可能であることから、本件報告書や表3-2Cなどを特定した旨説明する。
また、温泉名と請求内容に係る事実が確認できる部分を本件報告書や表3-2Cから抽出すれば、申立人が公開を求める情報は足りるものの、請求対象に該当しない部分を除外するためには膨大な作業を要するため、結果的に本件報告書及び表3-2Cが特定されたに過ぎない。したがって、請求者の求める温泉名はすでに公開されており、温泉採取者、温泉を利用する権利を有する者、温泉のゆう出地の所有者、温泉利用施設管理者で、個人の住所、氏名が記載されている部分を非公開とした点について、公開を申し立てる理由はないと思料される旨主張する。

イ しかしながら、本件実施機関は本件処分1で温泉採取者、温泉を利用する権利を有する者、温泉のゆう出地の所有者で個人の住所、氏名を含む本件報告書を請求対象文書として特定し、また、本件処分2においても、本件報告書及び表3-2Cを特定して一部公開決定処分を行っているところである。本件実施機関が主張するような事情があるにせよ、温泉採取者等の氏名、住所も含めて申立人が行った公開請求の対象文書として特定し、一部公開決定処分を行った以上は、申立人が当該部分の公開を申し立てる理由はあり、本件実施機関の主張は認められない。そこで、当該部分の本件条例第7条第2号の該当性について判断する。

(4)本件条例第7条第2号について
本件条例第7条第2号は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述により特定個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定個人を識別することができないが、公開することにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」を非公開と規定している。ただし、法令等の規定により又は慣行として公にされ又は公にされることが予定されている情報(但し書きア)、人の生命、健康、生活又は財産を保護するために公開することが必要である情報(同イ)、公務員の職・氏名・職務の内容で個人の権利利益を不当に害さないもの(同ウ)は公開するものとされている。

(5)本件条例第7条第2号の該当性について
①温泉採取者で個人の住所、氏名が記載されている部分
当審査会で本件報告書及び表3-2Cの温泉採取者の記載欄を見分したところ、当該部分に個人の住所、氏名が記載されているものがあることが認められた。
ところで、温泉採取者が採取した温泉を販売する、あるいは採取した温泉で温泉利用施設を運営するなどの事業活動を行っている場合は、個人に関する情報であっても、事業を営む個人として本件条例第7条第2号は適用されないこととなる。すでに温泉採取者のうち法人の住所、名称は公開されているところであり、事業を営む個人である場合は同様に公開されるべきところである。しかしながら、温泉採取は特別の許可が必要なものではなく、温泉井戸の所有者と温泉採取者が異なる場合は、両者の間で締結される取決め等によって行われるものである。そのため、温泉採取者には自家利用のみに温泉を利用する者も含まれ、温泉を事業活動に利用しているとは限らない。また、本件報告書及び表3-2Cを見分したところ、記載欄からは事業を営む個人か否かの判別をすることができないことが認められた。
本件条例第3条は、個人情報がみだりに公開されないよう、最大限の配慮をすることを解釈・運用の方針として掲げている。これは、個人に関する情報が一度公開されると、当該個人に対して回復しがたい損害を与えるおそれがあるため特に配慮を求めているものである。当該記載欄から一般個人と事業を営む個人が判別できない以上、本件条例第3条の趣旨を踏まえ、本件条例第7条第2号にいう個人に関する情報として扱うことが妥当である。
そこで、本件条例第7条第2号但し書きの該当性を検討する。
温泉採取者には、年に1回本件報告書を知事に対し提出する義務はあるものの、温泉採取者として登録・許可等を要するものではない。そのため、法令等又は慣行により公にされ、又は公にすることが予定されている情報とは認められない。また、温泉採取者の住所・氏名の公開が人の生命、健康、生活又は財産を保護するために必要とも認められず、但し書きのいずれにも該当しないことから、本件実施機関の判断は妥当である。
②温泉を利用する権利を有する者で個人の住所、氏名が記載されている部分当審査会で見分したところ、本件報告書に記載される温泉を利用する権利を有する者の記載欄には、個人の住所、氏名が記載されているものがあることが認められ、いずれも個人に関する情報に該当する。
ところで、個人の温泉を利用する権利を有する者には、温泉を利用した事業を行っているものも含まれている可能性がある。しかし、温泉を利用する権利を有する者の中には、自宅に温泉を引くなど事業活動に供していないものも含まれ、その場合は特別の許可等を要さず、温泉井戸の所有者、あるいは温泉採取者との間で締結された取決め等によって温泉を利用しているものと認められた。事業活動に利用する場合は知事の許可を必要とするが、本件報告書には温泉を実際に利用している施設名を記載する欄はなく、別に「現況報告書(温泉利用施設管理者の場合)」が提出されているところである。よって、本件報告書の記載欄からは事業を営む個人か否かを判別することができず、当該記載欄には事業を営む個人に該当する個人の氏名が含まれている可能性はあるものの、(5)①で述べた理由のとおり、本件条例第7条第2号にいう個人に関する情報として扱うことが妥当である。
そこで、本件条例第7条第2号但し書きの該当性について検討する。
温泉を利用する権利を有する者については、法令等又は慣行により公にされ、又は公にすることが予定されている情報とは認められない。また、この住所・氏名の公開が人の生命、健康、生活又は財産を保護するために必要とも認められず、但し書きのいずれにも該当しないことから、本件実施機関の判断は妥当である。

③報告者の氏名
表3-2Cに記載されている報告者名として、個人名が記載されているものがあることが認められる。
報告者については特段の定義がなく、どのような地位、立場にある個人の氏名が記載されているかは施設ごとに異なり、当審査会で見分したところ、記載内容だけでは、事業を営む個人に該当するかを判別できないことが認められた。
そのため、当該記載欄には温泉利用施設の経営者など公にされている個人の氏名や、事業を営む個人の氏名が含まれている可能性があるものの、当該記載欄だけでは判別することができず、(5)①で述べた理由のとおり、報告者の氏名は本件条例第7条第2号にいう個人に関する情報として扱うことが妥当である。
そこで、本件条例第7条第2号但し書きの該当性について検討する。
報告者名については、法令等又は慣行により公にされ、又は公にすることが予定されているものとは認められず、人の生命、健康、生活又は財産を保護するために公にする必要性も認められず、但し書きのいずれにも該当しないものである。したがって、本件実施機関の判断は妥当である。

④温泉ゆう出地の所有者で個人の氏名が記載されている部分
温泉の掘削、動力機の取り付けに当たっては、知事の許可が必要とされており、当該許可を得る際には掘削、動力機の取り付けを行う所在地を届け出ることになっているが、この所在地が温泉ゆう出地情報に該当するものである。
上記の許可に際しては、県の環境審議会温泉審査部会での審議を経ることとなっており、温泉審査部会の議事録には、温泉の掘削等の許可申請をした申請者名、申請者住所、掘削地、動力機を取り付ける温泉井戸の所在地が記録され、一般に公表されているところである。そこで、温泉ゆう出地の所在地は、公表情報として本件処分2でも公開されている。
本件実施機関は、所有者の個人の氏名は個人が識別される情報であるため非公開としているが、すでに温泉ゆう出地の所在地は公表され、その所在地情報から土地の所有者の氏名は、何人でも土地登記簿によってそれを確認することができるものである。したがって、当該部分は、本件条例第7条第2号但し書きアの「法令等の規定により又は慣行として公にされ又は公にされることが予定されている情報」に該当するから、公開すべきである。

5 公開を実施する場所について
ア 申立人は、本件処分1及び2に係る公開請求書の提出時に、上小行政情報コーナーでの公開を希望する旨を請求書欄外に記載しているところ、本件処分1及び2で一部公開とされた公文書の公開場所が、公開請求時に希望した上小行政情報コーナーではなく、原本を管理している保健所ごとなどの県下の各行政情報コーナーなどとされたことに不服を申し述べている。
これに対し本件実施機関は、本件条例第11条第1項及び本件条例施行規則第3条の規定により、公開する場所は実施機関が定める事項とされていること、情報公開事務処理要領(以下、「本件要領」という。)第4-6(1)イ(エ)は、公開する場所を公文書を管理する場所としていることから、決定に誤りはないと主張しているところである。

イ 本件条例第11条第1項は、公開請求に係る公文書を全部又は一部公開するときには実施機関の定める事項を通知することとし、本件条例施行規則第3条で「公開の場所」を通知する事項と定め、本件要領第4-6(1)イ(エ)では、「公開の場所」を以下のとおり定めている。
a 本庁各課が管理する公文書の場合は、行政情報センター
b 合同庁舎内の現地機関が管理する公文書の場合は、行政情報コーナー
c 合同庁舎にない現地機関等が管理する公文書の場合は、当該現地機関等
本件実施機関は、上記要領の規定に従って「公開の場所」を通知したものと認められる。ただし、実施機関は写しの交付の場合、実費を請求者が負担すれば写しを希望する場所に集めて公開を実施できると、非公開理由説明書で説明しているところである。申立人は、閲覧による公開の実施を希望する行政情報コーナーで実施することを求めていることから、閲覧の実施場所について検討する。

ウ 本件条例第15条第2項は但し書で、写しによる閲覧については「当該公文書の保存に支障を生ずるおそれがあると認めるときその他正当な理由があるとき」に行うことができるとしており、閲覧の方法による公文書の公開の実施は原本によることを原則としている。原本による閲覧を行う場合は、原本の非代替性や業務上の便宜などを考慮し、また、原本の破損や逸失などの危険を極力回避し、さらに閲覧時に公文書を管理する実施機関の職員が必要に応じて説明等に当たる運用を行っていることを勘案すると、原本を管理する実施機関の所在地が閲覧の実施場所となる。
本件についてみると、一部公開とされた公文書の原本は各保健所と衛生部薬務課が管理しており、本件実施機関は当該原本を公開しようとするものであるから、原本を管理する各所の各行政情報コーナー等を公開場所としたことに誤りはない。

エ もっとも、本件のように公開場所が県下広域にわたる場合、指定された場所での公開を受けることに困難が伴うことも事実である。
すでに実施機関は、写しの交付については希望する場所での実施が可能である旨を述べており、電子ファイルで保有している公文書については、1箇所に集めて公開を実施するよう努めている事実も認められるところである。また、本件条例第15条第2項では、例外的に写しによる閲覧を行うことができると定めており、これは実施機関に原本を閲覧に供することができない正当な理由がある場合に実施されるものであるが、この場合は電子ファイルで保有している公文書と同様に原本を移動せずに公文書を1箇所に集めることも可能である。
以上のような場合については、実費等を勘案し、また、請求者と公開の実施方法・場所について十分に調整しつつ、弾力的に公開の実施場所について運用することが望ましい。

6 公開する日時について
(略)


7 異議申立て人のその他主張について
(略)


8 まとめ
以上により、審査会の結論のとおり判断する。

第6 審査経過
(略)


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