以下、1959年6月30日バパトークより引用
『・・・・・
人間は上にあがってゆく時に自分自身の中身、すなわち粗雑な性質を構成する面(あるいは壁)を通過しなくてはいけません。
そしてこの粗雑な性質は、物質、すなわち土(地球)、水、風、火という4つの要素から成っています。
・・・・・
イスラムではこれらをlahutラフート, malakutマラクート, jabarutジャバルート(アラビア語)と呼びます。
・・・・・
lahutラフート、すなわち水と呼ばれる2番目の領域は海の水のようではないからです。
・・・・・
それは異なった種類の水です。(物質的な水ではない、という意味。)
・・・・・
というのも私たちの魂が浄化されると、魂は水の壁や風の壁や光の壁を通過出来るだけでなく、それらによって上へと引き上げられるからです。
なぜなら、浄化された魂は光よりも軽く早いからです。
それは魂というものがこれら4つの要素が存在する前に創造されたからです。(物理的な宇宙が存在する前に魂は存在していた、というバパの主張になります。)
それが物事の説明です。
・・・・・』
さて、上に上昇した魂はどこに行くのでしょうか?
ロハ二 Rohani と呼ばれている「天の領域」でありましょう。
まあそれはさておき、バパのイスラムによれば上位のものから
jabarutジャバルート <--光
malakutマラクート <--風
lahutラフート <--水
地球 アース <--土
という対応関係になります。
そして
バパのイスラムはジャワイスラムの一つであって、それはイスラム神秘主義(スーフィーズム:Sufism)の流れを汲んでいる事を特徴としています。<--リンク
さてそのスーフィーズムによれば、この物質世界(地球:土の世界)の上にあるのがmalakutマラクートになります。
その次がjabarutジャバルートであって、lahutラフートがその上に来ます。
従って上位のものから順に
lahutラフート
jabarutジャバルート
malakutマラクート
物質世界(可視界、現象界)
という並びになります。
以上についての説明は以下の記事を参照願います。
「スーフィーの意識と宇宙論の理解」<--リンク
さてその事は次の記事によっても明らかになります。
「イ ン ド思 想 と イ ス ラ ム」<--リンク
こうして比較してみるとバパの説明とスーフィーズムではlahutラフートの位置が違っていることに気が付きます。
したがってバパのここでの説明は、バパの奉じるイスラムがそのように順番を入れ替えたのか、あるいはバパの記憶間違いによるものなのか、いずれかの事が原因となって、本来の順番が入れ替わってしまったものととらえる事ができます。
・・・・・
さて少々話が変わりますが、このトークの日本語訳では以下の様な表現も出てきます。
『少し科学的な話になってしまいましたが、これがバパの説明です。
事実、それは必要です。
あなた方はこの科学を必要としています。』
英語ではこうなっています。
『That is Bapak's explanation, which has been a bit like a scientific discourse.
In fact it is necessary, you do need this science. 』
英語でサイエンスscience、日本語で科学と訳されている元のインドネシア語は「ilum」であろうと推定されます。
ネットによればilumは「知識,学問」という意味になります。
さてそうであれば「科学」は言いすぎでありましょう。
せいぜいが「知識」ぐらいが妥当であろうかと思われます。
PS
以下スーフィーズムの宇宙論@Wikiになります。
「スーフィー宇宙論」<--リンク
やはり前述の2つのスーフィー文献と同じ内容であって、バパの主張とは異なっています。
しかしながらバパは少なくとも「スーフィー宇宙論」を知っていた、と言う事であって、ラティハンを受け取る前、若かりし頃に霊的な道を求めていたバパはなかなか研究熱心であり、それゆえにこの方面についても造詣が深くなったのだ、という事が分かります。
追伸
上記の事にも関連しますが、バパはスーフィーズム、スーフィーには批判的でありました。
しかしながら、注意しなくてはいけな事は、バパが「スーフィーsufi」と呼ぶ人たち、従ってバパが言う所のスーフィーズムの範囲は通常、我々が認識している範囲よりもかなり狭いものである、と言う事であります。
バパが若いころに教えを乞うた人の中にキアイ・アブドラヒマンという人がいます。
この人はナクシュバンディーヤというスーフィー教団の導師でありました。
しかしながらバパの中では「イスラムの教えに基づいて霊的運動を導いている先生」というものであって、「彼はスーフィーである」という認識ではない様です。(by自叙伝)
そしてバパが「スーフィーはだめだ」という例として挙げるのは
「アナ・アル・ハック] "Ana al-Haq."と言う様な人たち、「我こそは神なり」と言うような人たちでした。<--リンク
そのような人たちはまたシャーリア(イスラム法)も無視します。
他方でバパはそのような事はせず、人にも「ムスリムであればシャーリアには従う様に」と勧めます。
そう言う訳で、我々の目からすると「随分とスーフィーズムの影響があるなあ」と思われる「バパのイスラム」なのではありますが、バパからすればそれはまごうことなく「正統なイスラム」となるのでありました。
PS
あと3つほど、トークから引用します。
1959年4月15日 バパ
『・・・
そこにrahmani生命力の世界に行こうとすれば、あなた方は7つの世界を突き抜けていかなくてはなりません。
その最初の名前はlahutラフート(アラビア語)で、それは青色です。
もしそれを通り抜ければあなた方はmalakutマラクートの世界に至りますが、それは白か黄色です。
それを通り過ぎると、あなた方はもう一つの世界、jabarutジャバルートに来ます。
広大無辺で、比較のしようのない光の世界です。
バパは例をあげて説明しましょう。
もし日中の光が、それがどんなに明るくてもjabarutジャバルートの世界に持ち込まれたら、それはまるで真昼の日の光の下のマッチの光のようなものでしょう。
・・・』
1963年7月19日 バパ
『・・・
この肉体は物質です。
それは土、水、空気、光という4つの要素から成り立っています。
それらはすべて物質の性質をもっています。(注:物理的な実在である、程度の意味かと。)
あなた方は自分の魂(ジワ)を自分の肉体から完全に分離することができた時にのみ、物質力の影響から解放される事ができます。
つまりあなた方はlahutラフートの世界、つまり水の領域と呼ばれる天や領域を通過しなくてはならないのです。
(注:「魂(ジワ)を自分の肉体から完全に分離すること」それは普通は「死に臨んで起こること」でありますが、生きながらにしてそのような事が起こるのは「招命」あるいは「昇天」であり、それがバパが経験したものの様です。by自叙伝)
・・・・・
そして植物力の影響を通過し、それから自由のなる為にはmalakutマラクートの世界、つまり空気の領域を通過しなくてはなりません。
そしてそれよりもさらに導かれてゆくと、あなた方は動物力の影響から自由になりますが、jabarutジャバルートの世界を、つまり光の世界を通過しなくてはならないでしょう。
そうして初めてあなた方は低次の諸力から自由になる事が出来るのです。
・・・』
1968年4月26日 バパ
『・・・
人々は、低次の諸力によって操作された欲望と、神が人間を愛していることを羨望する天使たちによって誘惑され続けました。
それはあなた方が守る必要があるものです。
それはあなた方が知る必要がある事です。
あなた方が全能の神の実存を得るのを妨げる、あなたが直面する誘惑は、悪魔 devilsだけからではなく、天使からも来ます。(
注1)
天使たちは絶えずあなた方を誘惑します。
そして、天使たちはラフートlahut[アラビア語:神の領域]の領域に飛ぶことができ、マラクートMalakut[アラビア語:天使の世界]の領域に到達することができ、彼らはジャバルットJabarut[アラビア語:魂の世界、精霊の世界]の領域に到達することができます。
彼らは他の創造物が通過できない領域に到達することができます。
人間はそれらの領域で呼吸することはできません。
その世界にはこの世界のような大気はありませんから。
・・・
注1:バパが使う単語setanは文字通り(英語に)翻訳されると 'satan'または 'devil'になり、saitaniahは 'satanic'に対応します。
しかしながら一般にバパはこれらの単語を使用して、物質レベルの存在を記述します。
・・・』
さて、このトークのインドネシア語ーー>英語への翻訳者はラフートlahutがアラビア語で神の領域を示すコトバであることを知っています。
And angels can fly to the realm of lahut [Arab.: the divine realm]・・・
↑
このように英訳し[・・・]内の記述はその英訳者のコメントとなりますから。
ちなみに和訳ではこうなります。
↓
そして、天使たちはラフートlahut[アラビア語:神の領域]の領域に飛ぶことができ・・・
そうであればラフートlahutが最上位の領域であって、地球から離れるときに通過するとすれば、それは最後に通過する事になるであろう領域に相当する、という事を知っています。
つまりこの英訳者は、バパが並べている3つのアラビア語の順序は本来の順序ではない、と暗に主張している事になります。
PS
アラビアで発生したスーフィーズムは上記の3つのコトバを使ってはいたようですが、
4元素(土、水、風、火)とそれらのコトバを関係つけることはなかった様です。<--リンク
その後スーフィーズムはインドを経由してインドネシアに伝わったものと思われますが、インドにおいて4元素と上記の3つのコトバの間にリンクが生じた可能性があります。(前掲「イ ン ド思 想 と イ ス ラ ム」を参照願います。)
いずれにせよ、バパが奉じるジャワイスラムでは上記の3つのコトバと4元素とをリンクさせている模様です。
PS
「雑記帳・目次」にはこちらから入れます。<--リンク