ラティハン日記2

ラティハンと人生の散歩道

アンワスとアンワルの物語(その2、神々と人類)

2014-08-20 | 日記
さて、バパによればアダムには二人の息子がありました。

名前をアンワス(Anwas)とアンワル(Anwar)といいます。

アンワルは預言者たちの先祖になりました。

そうしてアンワスは神々たちの先祖になりましたとさ。


ところがジャワで一般に言われている伝承では「神々の祖先はアンワル」でした。

そしてどうやら伝承としては「アンワルというのが正解」の模様です。(前回記事を参照ねがいます)

それでバパは「アンワル」と言うべきところを「アンワス」と言い間違えたようです。

さてバパとしましては「この言い間違いの理由は、昔聞いた神話を少し記憶があいまいのまま話した為」と、まあそれだけのことでありましょうか。


ところでバパの神話の話のポイントはもう一つありましたね。

それは「人類が先か?それとも神々が先か?」ということでした。

それでバパの答えは「人類が先」というものでした。

「アダムが最初にあり、そうしてサンヒャン・ツンガルまでつながる」と。

「そうしてその子どもたちがヴィシュヌ、ブラーマ、そしてシヴァです。」というのがバパの回答でしたね。(これも前回記事を参照ねがいます)


そういう訳で「シヴァの直系の先祖はアンワル、シスの息子」ということになります。

そこまではいいのですが、チレボン神話でもインドネシア・ウィキペディアの記述でもアンワルの誕生の秘密を語っています。<--リンク

それによれば「アンワルはIdajilの策略によって誕生した子ども」であり、「人類ではなくジン(jinn)であった」とされています。(注1

さあそうすると「人類から神々が誕生した訳ではなく、ジンから神々が誕生した」と神話は語っていることになります。

さすがに神話の作者達も「人類を神々の先祖にはしなかった」とそういうことでありましょうか。


でもバパは「人間は修行すれば神々を生み出せるのだ。」と言います。

この主張は単に「神話の記憶間違い」、あるいは「言い間違い」とは言いにくいですね。

バパ独自の見解、理論とそういうことでありましょうか?

そうしてこれはまた、そのままではなかなか理解しがたい、ほかに例のない特殊な主張の様に見えるのでありました。


注1)南海の女王 ニヤィ ロロ キドルを代表例としてバパのトークにも出てくるジン(jinn)についてはこちらを参照願います。<--リンク

PS
ワヤン(wayang)の世界でもこの誕生の秘密は同様に語られています。<--リンク

PS
ワヤンの記述でも少々、ウィキペディアの記述では明らかにそうなんですが、アンワルの系統が「力を持つものの系統」であり、そうして「力とは善にも悪にもなりうる」という立場を表明していますね。

それがより一層明らかになるのが、マタラム王国の史伝である『ババッド・タナ・ジャウィ』です。(前回記事を参照ねがいます)

ここでは国王の系列の正統性の表明(これは力と正義でしょうか?)にアンワルの系統を使っています。


さて、これは価値観の問題でしょうか。

預言者の系列であるアンワス側からみればアンワル側は明らかに「対立するもの」。

しかしそうだからといって一概に「否定し、消し去らねばならないもの」という見方もなにやら一方的であります。

そのようにジャワの伝統は言っている様に聞こえました。

PS
バパの母方の祖先が九聖人(ワリ・ソンゴ(Wali songo))の内の一人、スナン・カリジョゴ(Sunan Kalijaga)だろうと思われます。(81・7・28 LOS)

それに対してバパの父方の祖先は王家につながるようです。(星々の彼方の旅)

それゆえにバパはラデン・マスという貴族の称号を使うことができるのでありました。

こうしてバパの中にも国王の系列と預言者の系列の幸福な融合を見ることができるのでした。

そうしてこれは、ジャワの社会ではとても高く評価される正統性の表明なのであります。

PS
・アンワスとアンワルの物語(アダムの子どもたち?)にはこちらから入れます。<--リンク

PS
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