カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

スタッフ紹介:HCCスバイリエン農村開発指導員チャン・パーリン氏

2009年02月06日 17時29分26秒 | Weblog
前回、シーライツの現地パートナーNGO、HCC(HealthCare Centre for Children)のスタッフ、シム・ピセットさんの紹介をしました。シーライツとHCCが協働で実施しているプロジェクトの一つ、カンボジア/スバイリエン州(ベトナム国境近くの州)の農村で実施しているスバイリエン・プロジェクトを現地でシム・ピセットさんと一緒に活動している農村開発指導員のチャン・パーリンさんの紹介を今日はさせて頂きます。

パーリンさんが幼いころに抱いていた夢は医者になることでした。
彼は1997年に高校で、牛の売買の仕方などをビジネスとして勉強し、その後、コンポンチャム州の高校で引き続き勉強をしていました。2003年には農業を専門に大学で勉強し、多くの経験を得たのは大学在学中でした。野菜の栽培法などについて大学では勉強し、夜は、警備員として、早朝には、新聞配達をしながら生活をしていたそうです。2006年には、大学を卒業し、スバイリエンで英語とITの先生として、CCPCR(カンボジア国内における児童虐待や性的搾取、人身売買の被害にあった子どもや会う可能性のある子どもの保護・防止活動を主にするNGO Cambodian Center for Protection of Child Rights)に勤務していました。CCPCRで1年間勤務した後、CEDAC(農業専門NGO)にて、フィールドトレーナーとして3ヶ月勤務し、その後、フィールドコーディネーターとして仕事をしていたそうです。CEDACに勤務している間に、スバイリエン州での自助グループの形成に携わり、同時に、5州の各1村において野菜の生産などについて指導をしていました。2007年終わりごろに、CEDACを退職し、現在のHCCで、2008年8月より農村開発指導員として勤務しています。「医者にはなれなかったけれど、動物や野菜の医者だ」と彼は言います。

子どもの権利について、パーリンさんが初めて知ったのは、2006年にCCPCRで勤務していた時だそうです。当時、児童労働によって権利侵害を受けた子どもや、被害の可能性のある子どものために仕事をしていたことがきっかけでした。

「現在、農業指導員としてHCCで勤務していて、やりがいのあることは?」という質問に、人々と仕事をしていること、と答えてくれました。貧困層の人と仕事をしていることにとくにやりがいを見出しているそうです。というのは、貧困層の人を助けたいという思いだけでなく、実際に行動に起こす事が出来るからだそうです。でも、すべての農民が必要な知識を持っているわけではなく、農業技術指導の際の教え方に苦労しているといいます。「それでも絵を描いたり、写真を見せたりすることで理解してもらえて、面白いけどね。」とも言っていました。

パーリンさんの将来の夢は、大学でもう一度勉強をしたいことだそうです。パーリンさんにはつい最近生まれた4ヶ月半の息子さんがいます。彼のためにも、家族のためにも頑張って仕事するんだと言っていました。

以上がパーリンさんに伺ったお話です。
毎回スバイリエンに出張に出かけるたびに、ピセットさんとパーリンさんに会い、元気を貰ってプノンペンに帰ってきます。1月の中旬に初めてパーリンさんの農業技術指導を見学させて頂いて、スイカの栽培法について学びました。もし、畑を持っていたら、私も実践してみたいと思わせるような指導内容でした。また、パーリンさんの農業技術研修に参加した村人の識字率は約80%。その識字率にあわせてか、参加者全員に理解してもらえるように、牛の絵を描いたり、一生懸命努力をしている様子が伺えました。指導をするパーリンさんの姿からはやる気に充ち溢れ、そのやる気が村人にいい影響を及ぼしているということが、パーリンさんの質問に積極的に答える村人の姿勢からはっきりと感じ取れました。「農業をする術を知っている今、出稼ぎに行く必要もないし、出稼ぎに出て欲しくない」というパーリンさんの思いは少しずつでも確実に村へ浸透していっているように感じました。シーライツのスバイリエン・プロジェクトを実施しているピセットさんとパーリンさんを、そしてシーライツの今後の活動への支援を、よろしくお願いいたします。

甲斐田です。一言補足させていただきます。
パーリンさんは、農業大学で獣医学を学ばれ、卒論も牛と豚の育て方について書かれました。HCCのスタッフに応募した理由は、そういうテーマで自分が学んだことを活かせると思ったからだそうです。CEDAC(有機農法を進めるNGO)のスタッフとして働いていたときは、有機農法による果物を生産共同組合でつくる指導をするフィールドワーカーでした。収穫した果物をCEDACの市場へつなげて販売する仕事をしていたときは、有機産品ということで通常より10%高い値段をつけて売っていたそうです。そんなに高い値段でも売れていたのかと尋ねたところ、果物、野菜、豚やトリもすべて自然農園のものがおいしいと消費者に評判で買ってもらえたそうです。最近、CEDACは、有機作物を販売したり、有機作物による食事を出したりするお店や食堂を3つオープンしましたが、その1つはスバイリエンにあるそうです。将来は、パーリンさんと一緒にスバイリエンで有機農業を広めて、それらのお店に出荷できるくらいになると、私たちの支援する家庭も貧困から抜け出せるのではと夢は広がります。

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*記事・写真掲載にあたり、本人の了解を得ています。