こんばんは。甲斐田です。今日(13日)映画「闇の子供たち」(子どもの人身売買、性的搾取が描かれています)の試写会に行ってきました。加害者としての日本人がしっかり描かれているところがいいところだと感じました。映画のパンフレットに書かれているように恵泉女学院大学の斉藤百合子さんが助言された点に対して、監督がきちんと応えていることが評価されると思います。多くの人に見てほしいです。7月から劇場公開だそうです。
さて、スタディツアー報告その7を掲載させていただきます。1月に招聘したソマリー・マムさんが代表をつとめるアフェシップについて渡邊美奈子さんが報告してくれました。なお、明日のスタディツアー報告会で渡邊さんも発表されます。
写真はアフェシップの施設トムディセンターの様子です。
強調は編集部。
AFESIPで話を聞いて
渡邊美奈子(大学生)
AFESIP(アフェシップ)は、カンボジアの7つの州で活動しており、買春宿にコンドームや石鹸を配ったり、売春に従事している女性たちにHIV/AIDSの予防法を教えたり、病気になった時にトゥクトゥク(カンボジア版タクシー)で彼女たちをクリニックに連れて行く、などの活動をしています。
現場での情報は全てコンピュータに記録し、月に1回の頻度でデータファイルを作っており、センターと関わりを持った1人1人のデータが保管されています(どこで保護してどこへ移動されたかなど)。勿論人身売買や性的搾取の被害者である彼女たちには、AFESIPのルールを伝えてから了承サインをもらい、その人の個人情報などを記録しています。
クリニックに来た女性たちに対しては、まず医者が身体の状態を調べ、精神状態なども一緒に記録しています。そして、女性たちがAFESIPのシェルターを出た後、そこで学んだ職業技術のグレードアップをどうやってしていったかも記録していきます。具体的には、女性たちを必要としてくれる市場にはどのようなものがあるか、その後の職業などです。また、家族が再び彼女たちを売ったりしないかなども記録します。
女性たちを家族の元に戻した後に、後からAFESIPが非難されないためにAFESIPの活動を理解してもらい、村長や福祉省職員にサインをもらっています。
この記録によってどんな家族構成が被害に遭いやすいかなどを分析することが出来ます。現在のデータに載っている女性は3000人ほど(1996年からのデータなので、年間100人くらいか)です。
しかし、今現在、全部を分析することは出来ていません。どの地域で、女性が被害を受ける確率が高いかなども不明のままです。これが分析できればもっと効率よく被害を受けている女性を助けることが出来ると思いますので、一刻もはやく分析が進むことを願います。
セックスワーカーとして働かされていた女性の中には、カラオケやビアガールなど、間接的な性労働に従事させられていた人もいます。ビアガールは、店が終わった後に売春を強制されます。世間でもそういった仕事であるという目で見られているので、普通のクリニックにはいけないという現実があります。 こういった差別をなくす活動はしていないのかどうか少し気になりました。市民に呼びかけて、ビアガール買春反対運動をしたり、警察と協力して取り締まったり、偏見をなくしていく努力をすればもっと状況はかわるのではないかと思います。
AFESIPでは性産業で働く女性が病気になったとき、無料でトゥクトゥクでの送迎を行っており、AFESIPの施設の中には、ITルームやクリニックなど様々な部屋があります。クリニックには婦人科の医者と看護士がおり、3~7日間の滞在が可能です。クリニックの費用は必要な時は50%をAFESIPが負担しています。
お金を持たない女性たちにとって、50%の負担でも大きくてたいへんなのだろうな、と思いました。
また、妊娠した女性はAFESIPのクリニックではなく、病院で出産していますが、もともとAFESIPにいた女性はAFESIP内で出産しています。
裁判などで法的な保護を得るために、加害者を調査するのも活動の一つです。例えば、女性たちが誰に売られたのか(家族か友人かなど)などです。摘発された後に、どんなケアをしたのかも全て記録します。しかし、現在、カンボジアの法が変わり、人身売買の定義が変更され、現場では混乱がみられます。人身売買の定義が性産業に売られることだけでなく、その他の目的で売られる場合にも広がったからです。また、未成年の定義も混乱しています。カンボジアの法律では15歳以下が人身売買から保護される年齢となっていますが、子どもの権利条約では18歳未満が子どもの定義となっています。この年齢差から生まれるグレーゾーンの扱いが問題となっており、それが汚職にも繋がっていたりします。現在は、国内法が条約よりも重要な位置にあるので、それを条約に沿った国内法に変えていくことが必要です。そのためのロビー活動もAFESIPは行っています。
規模は違えど、日本でも権利条約と国内法の差異はあると思いますので、決して他人ごとではないと思います。
また、司法関係者が女性の精神状態について正しい理解をしてくれないことも多いので、それも今後なんとか理解を広めなければなりません。現在は、たくさんの男性の前で自分の被害について話さなければならなかったり、加害者の見ている前で話さなければならなかったりします。
人身売買や性的搾取の加害者の中には日本人もたくさんいるので、日本大使館にそのことを訴えたりもしています。また、タイのAFESIPにかけあって、タイ人のブローカーを15年の刑罰に処することが出来たケースもあります。他に、ベトナム人や中国人や台湾人の加害者がいます。例えば、台湾人が女性たちと偽装結婚し、彼女たちを連れ帰って、売り払ってしまったりすることもあります。その被害者数は5000人ほどだそうです。また、昨年はマレーシアから3人の女性を救出しました。これらの犯罪は組織化されています。
マレーシアにもたくさんの被害者がいますが、マレーシアは宗教的にも法的にも厳しい場所なので、パスポートを持っていないのが見つかると、売られてきた被害者である女性たちをもが処罰されてしまったりすることもあります。
このように、カンボジアの女性の被害は日本人とも無関係でないことがわかります。日本では、未だに買春ツアーなどというものがあるそうですが、それらの雑誌の取り締まりを強化し、買春男性にこの被害の状況を知ってほしいと思いました。
【編集部より】
アフェシップの活動を通して被害少女・女性をもっと支援できるように会員になってください。
http://www.c-rights.org/join/kaiin.html
さて、スタディツアー報告その7を掲載させていただきます。1月に招聘したソマリー・マムさんが代表をつとめるアフェシップについて渡邊美奈子さんが報告してくれました。なお、明日のスタディツアー報告会で渡邊さんも発表されます。
写真はアフェシップの施設トムディセンターの様子です。
強調は編集部。
AFESIPで話を聞いて
渡邊美奈子(大学生)
AFESIP(アフェシップ)は、カンボジアの7つの州で活動しており、買春宿にコンドームや石鹸を配ったり、売春に従事している女性たちにHIV/AIDSの予防法を教えたり、病気になった時にトゥクトゥク(カンボジア版タクシー)で彼女たちをクリニックに連れて行く、などの活動をしています。
現場での情報は全てコンピュータに記録し、月に1回の頻度でデータファイルを作っており、センターと関わりを持った1人1人のデータが保管されています(どこで保護してどこへ移動されたかなど)。勿論人身売買や性的搾取の被害者である彼女たちには、AFESIPのルールを伝えてから了承サインをもらい、その人の個人情報などを記録しています。
クリニックに来た女性たちに対しては、まず医者が身体の状態を調べ、精神状態なども一緒に記録しています。そして、女性たちがAFESIPのシェルターを出た後、そこで学んだ職業技術のグレードアップをどうやってしていったかも記録していきます。具体的には、女性たちを必要としてくれる市場にはどのようなものがあるか、その後の職業などです。また、家族が再び彼女たちを売ったりしないかなども記録します。
女性たちを家族の元に戻した後に、後からAFESIPが非難されないためにAFESIPの活動を理解してもらい、村長や福祉省職員にサインをもらっています。
この記録によってどんな家族構成が被害に遭いやすいかなどを分析することが出来ます。現在のデータに載っている女性は3000人ほど(1996年からのデータなので、年間100人くらいか)です。
しかし、今現在、全部を分析することは出来ていません。どの地域で、女性が被害を受ける確率が高いかなども不明のままです。これが分析できればもっと効率よく被害を受けている女性を助けることが出来ると思いますので、一刻もはやく分析が進むことを願います。
セックスワーカーとして働かされていた女性の中には、カラオケやビアガールなど、間接的な性労働に従事させられていた人もいます。ビアガールは、店が終わった後に売春を強制されます。世間でもそういった仕事であるという目で見られているので、普通のクリニックにはいけないという現実があります。 こういった差別をなくす活動はしていないのかどうか少し気になりました。市民に呼びかけて、ビアガール買春反対運動をしたり、警察と協力して取り締まったり、偏見をなくしていく努力をすればもっと状況はかわるのではないかと思います。
AFESIPでは性産業で働く女性が病気になったとき、無料でトゥクトゥクでの送迎を行っており、AFESIPの施設の中には、ITルームやクリニックなど様々な部屋があります。クリニックには婦人科の医者と看護士がおり、3~7日間の滞在が可能です。クリニックの費用は必要な時は50%をAFESIPが負担しています。
お金を持たない女性たちにとって、50%の負担でも大きくてたいへんなのだろうな、と思いました。
また、妊娠した女性はAFESIPのクリニックではなく、病院で出産していますが、もともとAFESIPにいた女性はAFESIP内で出産しています。
裁判などで法的な保護を得るために、加害者を調査するのも活動の一つです。例えば、女性たちが誰に売られたのか(家族か友人かなど)などです。摘発された後に、どんなケアをしたのかも全て記録します。しかし、現在、カンボジアの法が変わり、人身売買の定義が変更され、現場では混乱がみられます。人身売買の定義が性産業に売られることだけでなく、その他の目的で売られる場合にも広がったからです。また、未成年の定義も混乱しています。カンボジアの法律では15歳以下が人身売買から保護される年齢となっていますが、子どもの権利条約では18歳未満が子どもの定義となっています。この年齢差から生まれるグレーゾーンの扱いが問題となっており、それが汚職にも繋がっていたりします。現在は、国内法が条約よりも重要な位置にあるので、それを条約に沿った国内法に変えていくことが必要です。そのためのロビー活動もAFESIPは行っています。
規模は違えど、日本でも権利条約と国内法の差異はあると思いますので、決して他人ごとではないと思います。
また、司法関係者が女性の精神状態について正しい理解をしてくれないことも多いので、それも今後なんとか理解を広めなければなりません。現在は、たくさんの男性の前で自分の被害について話さなければならなかったり、加害者の見ている前で話さなければならなかったりします。
人身売買や性的搾取の加害者の中には日本人もたくさんいるので、日本大使館にそのことを訴えたりもしています。また、タイのAFESIPにかけあって、タイ人のブローカーを15年の刑罰に処することが出来たケースもあります。他に、ベトナム人や中国人や台湾人の加害者がいます。例えば、台湾人が女性たちと偽装結婚し、彼女たちを連れ帰って、売り払ってしまったりすることもあります。その被害者数は5000人ほどだそうです。また、昨年はマレーシアから3人の女性を救出しました。これらの犯罪は組織化されています。
マレーシアにもたくさんの被害者がいますが、マレーシアは宗教的にも法的にも厳しい場所なので、パスポートを持っていないのが見つかると、売られてきた被害者である女性たちをもが処罰されてしまったりすることもあります。
このように、カンボジアの女性の被害は日本人とも無関係でないことがわかります。日本では、未だに買春ツアーなどというものがあるそうですが、それらの雑誌の取り締まりを強化し、買春男性にこの被害の状況を知ってほしいと思いました。
【編集部より】
アフェシップの活動を通して被害少女・女性をもっと支援できるように会員になってください。
http://www.c-rights.org/join/kaiin.html