カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

カンボジアの教育制度と子どもの権利条約(その2)

2008年01月22日 00時07分04秒 | カンボジアの子ども



こんにちは。中川香須美です。今回は、カンボジアの子どもたちが通っている小・中学校の様子について紹介します。わたしは2002年に中学2年生の国語の補習授業に参加して勉強したことがあるので、その時経験したことについて紹介します。

2002年当時、いつも食料品を買いに出かける中央市場で物売りをしている女性と仲良くなって話していると、その彼女の息子が中学2年生で、その子とも仲良く話す関係になりました。カンボジアの学校は半日なので、学校に行かない時間は母親の商売の手伝いをしていたのです。わたしはちょうどその頃クメール語を学ぶ毎日を送っていたので、「一緒に学校で国語の授業に参加できないかしら」と聞いてみると、「普通の授業は分からないけれど、補習なら朝6時から1時間やってるから、きっと大丈夫だと思う」とのこと。担任の先生に参加していいか聞いてもらうと、「1週間500リエルの補習料を他の生徒と同じように支払うなら参加してもいい」と許可がでたので、プノンペンの真ん中にある有名校に通うことになりました。カンボジアの学校は日本の学校と違ってとても開放的なので(子どもの安全面では問題ですが)、部外者でも簡単に校内に入れるのです。

その学校は小学校と中学校が同じ敷地内にあり、当時ですでに1000人近くが学ぶ学校でした(小・中学校ともに2部制)。通常授業は7時から始まるので、私が通う6時からの補習はお金を払って参加する生徒だけが出席します。担任の先生が開いている私塾といってもいいかもしれません。中学2年生といっても、最年長は19歳の女子、最年少は10歳、飛び級で小学校を4年間くらいしか行かなかった優秀な男子生徒と一緒に勉強しました。

都市部には優秀な先生が集まるとうわさには聞いていましたが、担任の先生は若いながらもベテランで、とても分かりやすい授業をしていました。先生から生徒に質問することはあまりなく、先生が文法を説明して黒板に板書する時間が圧倒的に多かったので、生徒が発言すると内容がちゃんと聞き取れなかった私にとってはとてもありがたい授業でした。有名校だったせいもあるかもしれませんが、生徒は皆まじめに授業を聞いていました。遅刻もほとんどなかったような気がします。

時々ですが、授業の最後10分くらいに突然国語から社会科の授業になって、問題が黒板に板書されることがありました。あまり覚えていませんが、「カンボジアで地雷がたくさん埋まっている州は、以下の4州のうちどれか」とか、「ビタミンCが多い果物は以下の4つのうちどれか」など、国語とはあまり関係のない内容でした。これらの問題は、月末の定期試験に出される内容だそうです。子どもたちがお金を払って参加する補習の時間に、次の試験の内容が提示されるのです。

この授業には、10月から12月中旬まで通いました。カンボジアでも12月は朝日が昇るのが遅くて、6時ではまだ暗いため、教室に行ってもろうそくを立てて授業をしていたのです。効率性も悪いし、朝は寒いし、と理由をつけて数日欠席が続き、そのまま行かなくなってしまいました。毎朝会っているうちに仲良くなった19歳の女の子は、わたしがやめた直後にポイ・ペトというタイとの国境の町へ出稼ぎに行くために退学したと聞きました。わたしが黒板の板書を書き取れないでいた時、いつもあとからノートを見せて助けてくれていたのです。今、彼女はどうしているでしょうか。

(つづく)