こんにちわ。中川かすみです。今回は、カンボジアの司法制度における汚職の蔓延と、その弊害として多くのレイプの加害者が損害賠償支払いだけで無罪放免になってしまう現状を報告します。
カンボジアでは少女・女性に対する差別は深刻な問題ですが、それを象徴する問題が少女・女性に対する性暴力問題です。特にレイプに関する情報は新聞や雑誌などで連日報道されています。アドホック(ADHOC)というカンボジア全土に事務所を持つ人権保護団体の報告によると、2006年は前年度と比較してレイプの被害報告数が25.7パーセントの増加となっています。以前と比較して報告数が増えている大きな理由は、人権や法律の知識が多くの人に知られるようになり、被害者が沈黙を破って届け出るケースが増えているからです。したがって、単純にレイプの数が増加しているわけではありません。
さて、レイプの被害者の多くは子どもです。アドホックに2006年連絡があった478ケースのうち、71パーセントの被害者は5歳―18歳の少女でした。わたしが最近かかわったケースも、3歳と5歳の姉妹が同じ加害者にレイプされるというケースでした。カンボジアではレイプの加害者のほぼ100パーセントが被害者の知り合い(あるいは親族)です。多くのレイプは昼間に発生しており、少女が自宅や野原で一人でいる時を狙った犯罪がほとんどです。
レイプの被害者が子どもである場合、出血していたり泣いている場合が多いため、多くの保護者がすぐレイプに気がつきます。レイプ発生後、保護者はまずNGOに連絡することがほとんどです。一般市民の警察や公的機関(村長など)に対する信頼が極めて低いため、警察ではなくNGOに連絡することが普通なのです。なぜ警察や公的機関に連絡しないのでしょうか?その理由は、公権力は加害者と被害者の間に入って、金銭的な解決方法を指導する場合がほとんどだからです。加害者は被害者よりも裕福だったり権力を持っている場合が多いため、加害者は警察にわいろを払って損害賠償金を出来るだけ最小にとどめようとするのです。「子どもと女性への法律支援の会(Legal Support for Children and Women LSCW)」が最近担当したレイプ事件でも、弁護士が被害者側についたにもかかわらず、4000ドル(50万円弱)の和解金で訴追が取り下げになったケースがありました。検察も加害者から賄賂を得て、公訴を取り下げたのです。このような和解金の交渉役を果たすのが、警察であったり村長であるのです。
レイプが刑事事件であり民事訴訟(損害賠償)だけでは済まされないという認識が、警察官の間でもまだ知れ渡っていないという問題もあります。例えばラタナキリというベトナム・ラオスと国境を接する州では、警察官6人のうち1人しかまともに読み書きができないというほど、警察官に求められる要求水準は低いのです。警察官を対象とする人身売買取引調査の訓練に参加したことがありますが、「買春宿に取り締まりに入ろうと思ったら夜の場合がほとんどだが、その場合は勤務時間外だが法的に可能か」「共犯とはどういう行為を指すのか」など、初歩的な質問が出て驚いた経験があります。
損害賠償だけでレイプ事件が解決されるだけでなく、被害者が加害者と結婚させられるケースも少なくありません。少女の価値が「処女であるか否か」で判断される傾向が強いため、被害者の保護者が加害者側に結婚を迫る場合もあるのです。また、加害者が被害者と結婚したいためにレイプする場合もあります。結婚の望みがない恋愛対象の少女をレイプし、自分の望みを達成するのです。そういった加害者と被害者との交渉において、仲介役を果たして手数料を得ようとするのも公的機関です。
レイプが10年から20年の処罰対象となる重大な犯罪だという認識を一般市民や警察の間で高める必要もありますが、警察などの公的機関にはびこる汚職を取り締まることがより重要です。罪のない市民を守るための警察が、罪のある市民を守る役割を果たしているのは許せません。性犯罪の被害者は圧倒的に少女・女性が多いため、被害者は被害にあったことで何度も苦しめられるのです。
カンボジアでは少女・女性に対する差別は深刻な問題ですが、それを象徴する問題が少女・女性に対する性暴力問題です。特にレイプに関する情報は新聞や雑誌などで連日報道されています。アドホック(ADHOC)というカンボジア全土に事務所を持つ人権保護団体の報告によると、2006年は前年度と比較してレイプの被害報告数が25.7パーセントの増加となっています。以前と比較して報告数が増えている大きな理由は、人権や法律の知識が多くの人に知られるようになり、被害者が沈黙を破って届け出るケースが増えているからです。したがって、単純にレイプの数が増加しているわけではありません。
さて、レイプの被害者の多くは子どもです。アドホックに2006年連絡があった478ケースのうち、71パーセントの被害者は5歳―18歳の少女でした。わたしが最近かかわったケースも、3歳と5歳の姉妹が同じ加害者にレイプされるというケースでした。カンボジアではレイプの加害者のほぼ100パーセントが被害者の知り合い(あるいは親族)です。多くのレイプは昼間に発生しており、少女が自宅や野原で一人でいる時を狙った犯罪がほとんどです。
レイプの被害者が子どもである場合、出血していたり泣いている場合が多いため、多くの保護者がすぐレイプに気がつきます。レイプ発生後、保護者はまずNGOに連絡することがほとんどです。一般市民の警察や公的機関(村長など)に対する信頼が極めて低いため、警察ではなくNGOに連絡することが普通なのです。なぜ警察や公的機関に連絡しないのでしょうか?その理由は、公権力は加害者と被害者の間に入って、金銭的な解決方法を指導する場合がほとんどだからです。加害者は被害者よりも裕福だったり権力を持っている場合が多いため、加害者は警察にわいろを払って損害賠償金を出来るだけ最小にとどめようとするのです。「子どもと女性への法律支援の会(Legal Support for Children and Women LSCW)」が最近担当したレイプ事件でも、弁護士が被害者側についたにもかかわらず、4000ドル(50万円弱)の和解金で訴追が取り下げになったケースがありました。検察も加害者から賄賂を得て、公訴を取り下げたのです。このような和解金の交渉役を果たすのが、警察であったり村長であるのです。
レイプが刑事事件であり民事訴訟(損害賠償)だけでは済まされないという認識が、警察官の間でもまだ知れ渡っていないという問題もあります。例えばラタナキリというベトナム・ラオスと国境を接する州では、警察官6人のうち1人しかまともに読み書きができないというほど、警察官に求められる要求水準は低いのです。警察官を対象とする人身売買取引調査の訓練に参加したことがありますが、「買春宿に取り締まりに入ろうと思ったら夜の場合がほとんどだが、その場合は勤務時間外だが法的に可能か」「共犯とはどういう行為を指すのか」など、初歩的な質問が出て驚いた経験があります。
損害賠償だけでレイプ事件が解決されるだけでなく、被害者が加害者と結婚させられるケースも少なくありません。少女の価値が「処女であるか否か」で判断される傾向が強いため、被害者の保護者が加害者側に結婚を迫る場合もあるのです。また、加害者が被害者と結婚したいためにレイプする場合もあります。結婚の望みがない恋愛対象の少女をレイプし、自分の望みを達成するのです。そういった加害者と被害者との交渉において、仲介役を果たして手数料を得ようとするのも公的機関です。
レイプが10年から20年の処罰対象となる重大な犯罪だという認識を一般市民や警察の間で高める必要もありますが、警察などの公的機関にはびこる汚職を取り締まることがより重要です。罪のない市民を守るための警察が、罪のある市民を守る役割を果たしているのは許せません。性犯罪の被害者は圧倒的に少女・女性が多いため、被害者は被害にあったことで何度も苦しめられるのです。