カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

子どもの人身売買防止プロジェクト現地出張報告<最貧家庭との家畜貸し出し説明会>

2005年08月19日 17時12分04秒 | 人身売買防止プロジェクト(収入向上)
みなさんこんにちは。甲斐田から紹介を受けました、カンボジア事務所平野将人です。自己紹介につきましては、近々「駐在員のつぶやき」のようなかたちで別にブログを開設いたしますので、そちらをご覧ください。

さて、今回から数回にわたって、8月9日から12日にかけての3泊4日の出張について、いろいろとご報告させていただきたいと思います。純粋な活動紹介からこぼれ話的なものまで、HCCの国際子ども権利センター支援プロジェクトの活動地域の様子がイキイキと伝わる内容にしたいと思いますのでお付き合いください。

※プロジェクトの概要については、18日付けの甲斐田の記事を、また会員の皆様は子夢子明51号をご参照ください。

【子どもが主役の家畜銀行】

到着日最初に訪れたのは収入向上プログラムの対象となった、コムチャイミア郡ソムオンチューンコミューンの10家庭に対する家畜貸し出し説明会です。これはお金の代わりに家畜(雌)を貸し付け、子どもが産まれたら返してもらうという「家畜銀行」です。支援対象の10家庭が一堂に会し、契約書の取り交わしや家畜銀行のルールについての話し合いが行われました。

特徴的なのは、牛はあくまでも少女に対して提供されること。彼女たちが出稼ぎに出ることなく、学業を進められることが大切なので。会では始めに少女たちが一人一人呼ばれ、氏名年齢学年を確認、また成績に将来の夢も聞かれました。気になったのは成績で、1番が4人に2番、3番…ことごとく成績優秀者。選考基準には貧しさ、女の子どもの多さ、などがあり、最終的にはHCCと村のリーダーたちが決めるので、それらの基準を満たした、支援の必要な少女であることは確かなのですが、第一段階は学校長による推薦のため、貧しい子どもたちの中でも成績が優秀な子どもが選らばれたのかもしれません。
 将来の夢としては教師と農民が半々。「プノンペンの大学に通ってみたい?」との質問に何人かの子が「人身売買が怖いからいやだ」と返答。よく分かってくれているようですが、もう少し大きくなったら、怖さを理解しつつ大志も抱いて欲しいものです。

それはそれとして、まわりの大人たち(村長やコミューンの顔役たち)、ちょっと口を挟み過ぎ!「成績は何番だ?3番か?5番か?10番か?ん?ん?」「教師になりたいのか?どうなんだ?ん?ん?」みたいな感じで、困っている女の子もいました。もういいですよ、というムードを甲斐田やHCCスタッフがそれとなく出すのですが、そこは“村の有力者たち(village authority)”(この言葉、頻出です)「ちょっと黙って」とも言えず苦笑いの我々でした。

【ギャンブル禁止!】 

 肝心のローン内容の家畜ですが、原則として皆が牛を欲しがっていることを言わねばなりません。主な理由は、稲作(田起し)の労働力・めったに死ぬことがない・餌が要らない(そのへんの藁や草を食べさせていればいい)といったものです。しかし今回は予算の都合から2家族は豚ということになっています。

牛銀行ルール:

売ってはいけない
交換してもいけない
ギャンブルに手を出さない
種付けして産まれた1頭目の仔牛はHCCに、2頭目はその家族に、そして最初の牝 牛をHCCに返す

といったもの。死んだ場合どうするかはその時相談とのことです。豚については予算内で買えそうな優良な母豚がなかなか見つからず、その時点では未購入、小さい豚を2匹買う案も出たこともあり、豚銀行のルールは後日再検討になりました。ちなみに牛銀行ルールの最後の1つは、ズバリ責任感を持ってもらうためです。1頭目が自分達に来ると、そのあと牛の世話が疎かになるかもしれない、というのがスタッフの弁でした。考えてみれば私だったらその時点で牝牛を返しますね。ということでなるほどと納得。
 面白いのは「ギャンブルをしない」という項目でどうやって監視するんだという気もしますが、要はせっかく牛を貸し付けるのだからしっかり仕事してください、ということでしょう。契約者は少女たちながら、ここだけは、お父さんたち向け?ともあれ全ての牛(豚)が丈夫な赤ちゃんを産むことが待たれます。