「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和2年(2020)8月19日(水曜日)
通巻第6624号
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ルカシェンコ当選に祝電を送ったのはロシア、中国、そしてカザフスタンだった
ベラルーシ野党、EU、「大統領選挙の早急なやり直し」を要求
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野党の有力候補三人を逮捕し、選挙管理委員会に一般国民は参加できず、申し込んでも「もういっぱいです」と言われ、せめて開票の立会人、観察要員を申請しても、すでに決まっているとの返答だった。
最初からルカシェンコと書いた投票用紙が用意されていた。
それでも投票に行った国民が多かったのは西側メディアの出口調査に期待したのだ。ロシアの『プラウダ』ですら書いた。
「選挙はルカシェンコの敗北だった」と。
ところが、開票結果はルカシェンコが80%、野党のスベトラナ・チハルフスカヤは9・9%だった。(逆だろ)。
「そんな莫迦な」。激昂したベラルーシ市民は街頭に飛び出した。催涙ガス、放水、ゴム弾。そして特殊部隊がデモ隊弾圧に動いた。
16日にも、首都ミンスクで十万人があつまってルカシェンコ六選に不満をのべた。「ルカシェンコはすぐにやめろ」「不正投票だ」「彼が当選するはずがない」。
18日もミンスクの中央公園に数万があつまって「票の再集計」などを求めた。この集会ではメディア数人が拘束された。
選挙終了から十日になるが、騒ぎは収まるばかりか拡大の一途である。
国有企業トラクター工場では視察にきたルカシェンコに「やめろ」と罵声が飛んだ。国有のテレビ、ラジオ放送局からもデモの参加者が目立ち、おどろくべし!「オーメン」(OMON)の部隊員が制服を脱いでデモに加わった。
国有企業の幾つかではストライキに入った。こうなると未曽有の事態である。
東欧でも連帯集会がワルシャワとプラハなどで開催され、またEUは首脳同士の電話海外、プーチンも頻繁に電話外交を展開している。ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領もプーチンと電話会談。プーチンは「ベラルーシの内政に干渉は許されない」と不満を述べたが、EU首脳らは早急の選挙やり直しを求めた。
トランプ大統領も記者団に「適当な時期にプーチンと話し合う。ベラルーシには民主主義が足りないようだ」と語った。
ルカシェンコ体制を守る特殊部隊「オーメン」は黒づくめに覆面、特殊エリート部隊で嘗てはソ連のOMONがバルト三国に軍事介入したことでも有名だろう。警官も制服を脱いで市民側に駆けつける者がいるという。
ルカシェンコは選挙やり直しではなく、新憲法採択を待って身を引くと発言した。時間稼ぎである。
ベラルーシ国内は、すでに33都市にデモが拡大し、死者二名、負傷数百。逮捕者3000名余。収容所は満員となっている。女性らは白い服に、白い花を掲げて、集会を開催し、この騒擾は収まる気配がない。
▼ルカシェンコ体制の終わりが見えた
NATO軍はリトアニア国境付近に展開され、国境は閉ざされた。ベラルーシ軍は、西部国境に展開しており、軍隊がにらみ合っている。先日もトランプは、駐独アメリカ軍を削減するとしたが、そのうちの千名をリトアニアへ移動させている。
ならば軍のクーデタは起こるか?
ルカシェンコの独裁体制はベラルーシ版のKGBと「シロビキ」でもっている。この二つの権力構造を破壊しない限り、体制転覆は難しいとされる。
1991年のゴルビー監禁クーデタは失敗し、かえってソ連の崩壊を早めた。
2016年のトルコのクーデタも失敗に終わり、アンチ・エルドアン勢力およそ十万人が軍隊、行政機構、教職員からパージされた。クーデタの動きをひそかにエルドアンに知らせたのはロシアの諜報機関だった。
ベラルーシにおいても、軍の少壮幹部らはクーデタによる政権強化には消極的で、求心力が失われつつある。同時に軍はロシアの介入をもっとも嫌う傾向がある。
ルカシェンコ当選に祝電を送ったのはロシア、中国、そしてカザフスタンだった。
エストニアに逃れたチハルフスカヤは「政治犯全員の即時釈放」と「大統領選挙のやり直し」をもとめるとSNSで表明した。
ほかの野党とEUは、「大統領選挙の早急なやり直し」を要求している。まだまだ解決のめどは立っていない。
令和2年(2020)8月19日(水曜日)
通巻第6624号
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ルカシェンコ当選に祝電を送ったのはロシア、中国、そしてカザフスタンだった
ベラルーシ野党、EU、「大統領選挙の早急なやり直し」を要求
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野党の有力候補三人を逮捕し、選挙管理委員会に一般国民は参加できず、申し込んでも「もういっぱいです」と言われ、せめて開票の立会人、観察要員を申請しても、すでに決まっているとの返答だった。
最初からルカシェンコと書いた投票用紙が用意されていた。
それでも投票に行った国民が多かったのは西側メディアの出口調査に期待したのだ。ロシアの『プラウダ』ですら書いた。
「選挙はルカシェンコの敗北だった」と。
ところが、開票結果はルカシェンコが80%、野党のスベトラナ・チハルフスカヤは9・9%だった。(逆だろ)。
「そんな莫迦な」。激昂したベラルーシ市民は街頭に飛び出した。催涙ガス、放水、ゴム弾。そして特殊部隊がデモ隊弾圧に動いた。
16日にも、首都ミンスクで十万人があつまってルカシェンコ六選に不満をのべた。「ルカシェンコはすぐにやめろ」「不正投票だ」「彼が当選するはずがない」。
18日もミンスクの中央公園に数万があつまって「票の再集計」などを求めた。この集会ではメディア数人が拘束された。
選挙終了から十日になるが、騒ぎは収まるばかりか拡大の一途である。
国有企業トラクター工場では視察にきたルカシェンコに「やめろ」と罵声が飛んだ。国有のテレビ、ラジオ放送局からもデモの参加者が目立ち、おどろくべし!「オーメン」(OMON)の部隊員が制服を脱いでデモに加わった。
国有企業の幾つかではストライキに入った。こうなると未曽有の事態である。
東欧でも連帯集会がワルシャワとプラハなどで開催され、またEUは首脳同士の電話海外、プーチンも頻繁に電話外交を展開している。ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領もプーチンと電話会談。プーチンは「ベラルーシの内政に干渉は許されない」と不満を述べたが、EU首脳らは早急の選挙やり直しを求めた。
トランプ大統領も記者団に「適当な時期にプーチンと話し合う。ベラルーシには民主主義が足りないようだ」と語った。
ルカシェンコ体制を守る特殊部隊「オーメン」は黒づくめに覆面、特殊エリート部隊で嘗てはソ連のOMONがバルト三国に軍事介入したことでも有名だろう。警官も制服を脱いで市民側に駆けつける者がいるという。
ルカシェンコは選挙やり直しではなく、新憲法採択を待って身を引くと発言した。時間稼ぎである。
ベラルーシ国内は、すでに33都市にデモが拡大し、死者二名、負傷数百。逮捕者3000名余。収容所は満員となっている。女性らは白い服に、白い花を掲げて、集会を開催し、この騒擾は収まる気配がない。
▼ルカシェンコ体制の終わりが見えた
NATO軍はリトアニア国境付近に展開され、国境は閉ざされた。ベラルーシ軍は、西部国境に展開しており、軍隊がにらみ合っている。先日もトランプは、駐独アメリカ軍を削減するとしたが、そのうちの千名をリトアニアへ移動させている。
ならば軍のクーデタは起こるか?
ルカシェンコの独裁体制はベラルーシ版のKGBと「シロビキ」でもっている。この二つの権力構造を破壊しない限り、体制転覆は難しいとされる。
1991年のゴルビー監禁クーデタは失敗し、かえってソ連の崩壊を早めた。
2016年のトルコのクーデタも失敗に終わり、アンチ・エルドアン勢力およそ十万人が軍隊、行政機構、教職員からパージされた。クーデタの動きをひそかにエルドアンに知らせたのはロシアの諜報機関だった。
ベラルーシにおいても、軍の少壮幹部らはクーデタによる政権強化には消極的で、求心力が失われつつある。同時に軍はロシアの介入をもっとも嫌う傾向がある。
ルカシェンコ当選に祝電を送ったのはロシア、中国、そしてカザフスタンだった。
エストニアに逃れたチハルフスカヤは「政治犯全員の即時釈放」と「大統領選挙のやり直し」をもとめるとSNSで表明した。
ほかの野党とEUは、「大統領選挙の早急なやり直し」を要求している。まだまだ解決のめどは立っていない。
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