「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和五年(2023)5月22日(月曜日)弐
通巻第7759号
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ロシア「G7はゼレンスキー・ショーだ」、中国「内政干渉に強い不満」
シュルツは板門店へ、モディはパプアニューギニアへ。バイデンは岩国から帰国
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広島G7はゼレンスキー大統領の一人舞台となった。ロシアはこの日を狙ってバムフトを陥落させた。ゼレンスキー大統領は陥落を認めながら、「われわれの心の中にバムフトは生きている」と複雑な心情を吐露した。
闘い済んで日が暮れて。バイデンはそそくさと岩国基地から帰国の途に就いた。6月1日にもデフォルトが予想されるため、赤字上限枠上乗せで下院議長との折衝が続く。
イタリア首相は北部洪水のため二日目の討議をキャンセルし帰国し、代わりに駐日大使が参加した。しかしイタリア北部の洪水は三日前である。
シュルツ独首相は帰路に韓国へ飛んで板門店を見学した。
インドのモディ首相はパプアニューギニアへ。首都ポートモレスビーでは大歓迎の嵐だった。モディはここで南太平洋諸国14ケ国首脳と「インド南太平洋サミット」(FIPIC)に出席する。パプアニューギニアをインド首相が訪問するのは初めて。当該地域にはインド移民が夥しく、パプアやフィジーにはインドタウンがあって、新興のチャイナタウンと各地で張り合っている。
中国はフィジーの首都にチャイナタウン、華字紙、そして援助する学校では中国語を教えサウスパシフィック大學には孔子学院がある。
パプアのポートモレスビーにおける中国投資も顕著で高層ビルを立て、ファーウェイがあちこちに販売店を組織した。というのも、APECの折に国際会議場を建築して寄付し、習近平が訪問したことがあり、爾来、中国人移民は凄まじい勢いで流れ込んだ。
バヌアツも首都の目抜き通り商店街は80%が中国人経営となった。
ロシアは、「G7はゼレンスキー・ショーだ。まるで反露、反中のヒステリーだ」と批判した。
中国はG7の声明に「台湾海峡の安定と、力による現状維持の変更に反対」を盛り込んだことに、「内政干渉だ」と強い不満を表明し、「G7が世界平和に貢献するなどとおこがましい。当該地域の安定を損ねている」と真逆の論評を加えた。
ウクライナの反露感情はますますエスカレートし、都市や町の名称変更が続く。キエフはキーフに、オデッサはオデーサとなったのはウクライナ読みに戻したに過ぎないが、今度は「トルストイ広場」を「英雄広場」と改称、「ゾルゲ通り」は「エロシェンコ通り」となった。エロシェンコは中村屋のメニューにウクライナの名物料理ボルシチを採用させたことで知られる。
またロシアと呼ぶのを止めて「モスコビア」と呼ぼう、軍港セバストボリは「アフティアル」に改称しようという呼びかけに数十万の署名が集まっているという。セバストボリはトルストイの名作の題名で、ギリシア語から採用した軍港だが、アフティアルはクリミア半島の入り口の地名である。
▲バイデンは米国のデフォルトを望んでいるのか
下院議長のケビン・マッカーシーはFOXニュースとのインタビュー(5月21日)で、「バイデン大統領は交渉よりデフォルトを望んでいるかのようで、毎回ころころと立場が変わるが極左思想にこだわり、われわれの要求を、じつに97日間も無視してきた。2兆ドルの予算削減を要求しているが、バイデンはあくまでも1兆ドルしか削減しないと交渉にまじめに取りくんでいる様子はない。かれはデフォルトに陥る米国初の大統領として歴史に名を刻むことになるかもしれない」
現在、赤字上限の31兆4000億ドル。バイデン政権は1・5兆ドルを上乗せし、2025年予算としたい考えだが、共和党が要求するウクライナ支援削減などの代替案を「受け付けられない」と突っぱねてきた。
具体的には6月1日に750億ドルが支出できなくなり、470億ドルの医療援助、120億ドルの軍人恩給ならびに100億ドルの軍人給与が含まれている。
6月2日には社会保障福祉関連250億ドルが不足、6月5日に220億ドルが不足し、6月6日には20億ドルが支払い不能に陥る。
ポール・クレイグ・ロバーツ(元財務次官)はこう言う。
「バイデン大統領における『国境』は(不法移民が流入する)米国とメキシコ国境ではなくウクライナ国境だ。まるで米国は1900年頃のインドの状況である。ディープステーツとかのエスタブリッシュメントが米国を分裂させ、トランプを誣告し、まるでいまの米国は『バベルの塔』だ」。
ロバーツはレーガン政権下で財務政策を主導し、82年に政界を引退後はいくつかの大學で教えるとともに経済分野の著作に専念してきた。現在84歳、健在で、多くの著作があり、日本語に訳された著作には『暴走する新自由主義』がある。
令和五年(2023)5月22日(月曜日)弐
通巻第7759号
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ロシア「G7はゼレンスキー・ショーだ」、中国「内政干渉に強い不満」
シュルツは板門店へ、モディはパプアニューギニアへ。バイデンは岩国から帰国
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広島G7はゼレンスキー大統領の一人舞台となった。ロシアはこの日を狙ってバムフトを陥落させた。ゼレンスキー大統領は陥落を認めながら、「われわれの心の中にバムフトは生きている」と複雑な心情を吐露した。
闘い済んで日が暮れて。バイデンはそそくさと岩国基地から帰国の途に就いた。6月1日にもデフォルトが予想されるため、赤字上限枠上乗せで下院議長との折衝が続く。
イタリア首相は北部洪水のため二日目の討議をキャンセルし帰国し、代わりに駐日大使が参加した。しかしイタリア北部の洪水は三日前である。
シュルツ独首相は帰路に韓国へ飛んで板門店を見学した。
インドのモディ首相はパプアニューギニアへ。首都ポートモレスビーでは大歓迎の嵐だった。モディはここで南太平洋諸国14ケ国首脳と「インド南太平洋サミット」(FIPIC)に出席する。パプアニューギニアをインド首相が訪問するのは初めて。当該地域にはインド移民が夥しく、パプアやフィジーにはインドタウンがあって、新興のチャイナタウンと各地で張り合っている。
中国はフィジーの首都にチャイナタウン、華字紙、そして援助する学校では中国語を教えサウスパシフィック大學には孔子学院がある。
パプアのポートモレスビーにおける中国投資も顕著で高層ビルを立て、ファーウェイがあちこちに販売店を組織した。というのも、APECの折に国際会議場を建築して寄付し、習近平が訪問したことがあり、爾来、中国人移民は凄まじい勢いで流れ込んだ。
バヌアツも首都の目抜き通り商店街は80%が中国人経営となった。
ロシアは、「G7はゼレンスキー・ショーだ。まるで反露、反中のヒステリーだ」と批判した。
中国はG7の声明に「台湾海峡の安定と、力による現状維持の変更に反対」を盛り込んだことに、「内政干渉だ」と強い不満を表明し、「G7が世界平和に貢献するなどとおこがましい。当該地域の安定を損ねている」と真逆の論評を加えた。
ウクライナの反露感情はますますエスカレートし、都市や町の名称変更が続く。キエフはキーフに、オデッサはオデーサとなったのはウクライナ読みに戻したに過ぎないが、今度は「トルストイ広場」を「英雄広場」と改称、「ゾルゲ通り」は「エロシェンコ通り」となった。エロシェンコは中村屋のメニューにウクライナの名物料理ボルシチを採用させたことで知られる。
またロシアと呼ぶのを止めて「モスコビア」と呼ぼう、軍港セバストボリは「アフティアル」に改称しようという呼びかけに数十万の署名が集まっているという。セバストボリはトルストイの名作の題名で、ギリシア語から採用した軍港だが、アフティアルはクリミア半島の入り口の地名である。
▲バイデンは米国のデフォルトを望んでいるのか
下院議長のケビン・マッカーシーはFOXニュースとのインタビュー(5月21日)で、「バイデン大統領は交渉よりデフォルトを望んでいるかのようで、毎回ころころと立場が変わるが極左思想にこだわり、われわれの要求を、じつに97日間も無視してきた。2兆ドルの予算削減を要求しているが、バイデンはあくまでも1兆ドルしか削減しないと交渉にまじめに取りくんでいる様子はない。かれはデフォルトに陥る米国初の大統領として歴史に名を刻むことになるかもしれない」
現在、赤字上限の31兆4000億ドル。バイデン政権は1・5兆ドルを上乗せし、2025年予算としたい考えだが、共和党が要求するウクライナ支援削減などの代替案を「受け付けられない」と突っぱねてきた。
具体的には6月1日に750億ドルが支出できなくなり、470億ドルの医療援助、120億ドルの軍人恩給ならびに100億ドルの軍人給与が含まれている。
6月2日には社会保障福祉関連250億ドルが不足、6月5日に220億ドルが不足し、6月6日には20億ドルが支払い不能に陥る。
ポール・クレイグ・ロバーツ(元財務次官)はこう言う。
「バイデン大統領における『国境』は(不法移民が流入する)米国とメキシコ国境ではなくウクライナ国境だ。まるで米国は1900年頃のインドの状況である。ディープステーツとかのエスタブリッシュメントが米国を分裂させ、トランプを誣告し、まるでいまの米国は『バベルの塔』だ」。
ロバーツはレーガン政権下で財務政策を主導し、82年に政界を引退後はいくつかの大學で教えるとともに経済分野の著作に専念してきた。現在84歳、健在で、多くの著作があり、日本語に訳された著作には『暴走する新自由主義』がある。
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