胃 癌 日 記 11
(四国88ヶ所 第51番霊場 石手寺 は道後温泉に近く、賑わいの寺)
11月22日(火) 術前診察
今日はS病院の外科受診日。今日は連れ合いが同行。11時30分の予約で10時55分に受付を済ませ外科待合で待っていると暫くしてスタッフに呼ばれる。
「【いそ】さん。済みませんがたいへん混んでおりまして、13時30分過ぎになると思いますので、食事をしてきていただけませんか。とのこと。仕方なく近くの喫茶店へ。
昼食を済ませ、パソコンを使って執筆中の原稿の続きを書く。暫く順調に書き続けて行くと、突然バッテリー上がりでシャットダウン。ややっ、なんということだ。書き綴ったものが上書きしていないからすべてパー。頭にくるやら情けないやら。
(55番霊場 南光坊 は今治市の街中。東屋ではお遍路さんを大声で罵る人がいた)
13時が過ぎたので、病院へ戻る。戻った事を伝え順番が来るのを待った。診察はA先生の紹介で、外科部長のベテランのT先生。午後はT先生の1診だけ。余り多くの患者さんが待っているというのではないが、待てども待てどもなかなか呼ばれない。患者1人に30分から1時間かかっている。持参のロバート・B・ライシュ著の「Super Capitalism」も読んでしまった16時30分に業を煮やして受付けにどうなっているのか尋ねた。暫くして看護師さんが出てきて、
「すみません。手術前の患者さんばかりで説明に時間がかかっていまして、【いそ】さんは次にお呼びすることになっています。」
とのこと。待っていると一人検査結果報告の患者さんを挟んで、16時55分にやっと呼ばれた。T先生は比較的小柄で、華奢な感じ。お互い初めての挨拶後、
(57番霊場 栄福寺 ではおじいさんと中学生くらいの男の孫二人連れの遍路さん)
「遅くなってすみません。これでも昼の休憩も無しで診ています。検査結果は今のところ転移も無いようですが、手術はどうされます。内視鏡手術は無理ですが。」
「開腹手術ということですか。」
「癌細胞が一番性質の悪い細胞で、PET検査では写っていませんが、癌の近くのリンパ腺も腫れていますし、念のため採ったほうが良いでしょう。腹腔鏡手術も出来ますが、癌の性質からして念のためには開腹手術のほうが良いと思います。手術後は痩せますよ。実は私も胃癌で開腹手術をしました。【いそ】さんと同じの悪性の癌でした。」
といって、診察着をめくって、手術の跡を見せてくれた。
「覚悟はしていますので、開腹手術をしてください。」
「解りました。【いそ】さん、手術をすると痩せますよ、私の場合は手術後14キロ痩せました。IDカードの写真はふっくらしているでしょう。それと、胃カメラをもう一度撮ってください。前回残渣が多くよく映っていませんでした。他にも癌があって残渣で見えていなかったら無駄ですので、もう一度撮ってください。」
といって、内視鏡室に電話を入れ、A先生に胃カメラを撮ってもらうよう指示している。結局胃カメラは11月29日9時30分と決まった。
Tドクターは、なるほどIDカードの写真はふっくらしているが、現在は華奢で、何かインターネットで見た写真とも随分イメージが違うなあと思っていた。
そのあと自覚症状が今のところ全く無いことや、非常に早期の発見でよかったなどの話を聞く。ただ、私は休み明けの24日でも入院になるのかと思っていたら、11月中は手術の予定が一杯で、12月中旬以降になるだろうとのこと。手術予定を貼り付けたボードを持ってきて説明。連れ合いが、
「先生、何とかもう少しでも早くならないでしょうか。胃カメラが10月15日でそれからでも1ヶ月以上経ってまして、癌細胞も悪質なものと聞いていますので、心配です。」
「私は、N先生やA先生の紹介のときは私が斬ることにしています。誰でもよいのなら少しは早くできるかもしれませんが。」
「それは、先生にお願いしたいのですが。」
「急病で手術が出来ないキャンセルが出れば、そこに入れますが。いずれにしてもカンファレンスして手術日を決めます。決まれば連絡します。」
その後直腸診等をして、診察終了前に、
「【いそ】さん。怖がることはありません。ちゃんと仕事にも復帰できます。大丈夫です。」
と、励ましてくれた。
(58番霊場 仙遊寺 その名のとおり山の上の寺)
11時30分から延々5時間20分待たされたが、T先生は丁寧に患者に説明する先生であることがよくわかった。17時30分に診察が終了して、受付のスタッフに入院のことやら今後の検査の説明を受けた。私は胸部・腹部のレントゲン、血液検査、心電図、肺機能の検査を受けて、外科以外には患者のいなくなった静かな病院で精算を済ませ、家路へとついた。
(続く)