いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
会の趣旨に賛同される方、メールでご投稿ください。

英国兵士の手紙「もしぼくが死んだら、開封して読んでほしい」/山崎孝

2006-10-25 | ご投稿
【英参謀長が撤退主張 イラク駐留で状況悪化】10月14日付け「しんぶん赤旗」電子版報道

【ロンドン=岡崎衆史】英陸軍のリチャード・ダナット参謀長はデーリー・メール紙十三日付とのインタビューで、イラク駐留英軍がイラクの治安状況を悪化させているとして、早期撤退を求めました。英国は七千人以上の兵力をイラクに駐留させています。今回の発言は、制服組の最高首脳の一人が駐留継続というブレア政権の方針に公然と反旗を翻した形です。

 同参謀長は、「私たちの駐留は治安を悪化させており、近いうちに手を引く」べきだと述べました。イラク侵略の経緯については、「明らかに私たちは当時のイラク人に招待されてはいなかった。二〇〇三年の軍事行動はドアをけ破ってしまったという事実を認めなければならない」と発言しました。

 さらに、「私たちが世界で直面している困難がイラク駐留によって引き起こされているとはいわないが、イラク駐留が事態を悪化させているのは疑いない」と述べ、イラク人の意思を無視した強引な軍事行動と軍駐留が、イラク情勢の泥沼化やロンドン同時テロを含むテロ拡大の要因となっているとの見方を示しました。

 ダナット参謀長は侵略の目的にも言及。「もともとの意図は自由民主主義を植え付けることだった」が、「私たちがそれを実現するとは思えない。より低い目標を目指すべきだ」と述べました。(以上)

★10月24付け朝日新聞夕刊は、イラク南部の多国籍軍を統括する英軍のシレフ司令官は22日、BBCラジオに対し、バスラの治安回復作戦が来年前半に終了した段階で、イラク側に治安権限委譲の条件を改めて提示する考えを示した。そして、来年中に「英軍部隊を相当数削減できるだろう」と語り、早期撤退への意向をにじませていた。これに先立つ13日には「英陸軍トップのダナット参謀総長が、英軍の駐留長期化によってかえって治安が悪化していると異例の警告を発していた。ICM社の世論調査では、ダナット氏の発言を支持する人が英国民の74%にのぼった、と報道しています。

★朝日新聞には同じ紙面で次のような悲しい記事が掲載されています。若い英国人兵士がイラクで銃弾に倒れた。戦場に赴く前、彼は婚約者に一通の手紙を残していた。もしぼくが死んだら、開封して読んでほしい、と託して「君はぼくの世界のすべて、ぼくはいつでも君のことを見守っている」。手紙は婚約者によって公開され、深く静かな感動を呼んでいる。

(中略)手紙の内容は英BBC放送や主要紙に報道され「涙が止まらなかった」といった声が寄せられ続けている。2003年に始まったイラク戦争では、これまでに119人の英国兵士が犠牲になっている。(以上)

記事には手紙の全文が掲載されています。英陸軍のリチャード・ダナット参謀総長は、「私たちの駐留は治安を悪化させており、近いうちに手を引くべきだ」、「イラク人の意思を無視した強引な軍事行動と軍駐留が、イラク情勢の泥沼化やロンドン同時テロを含むテロ拡大の要因となっているとの見方を示し」、英国の政策の誤りを認めました。これは米国のイラク戦争とテロとの関係を評価した機密報告書「国家情報評価」の結論部分「イスラム世界への米国の干渉に対する深い恨みを生み、地球規模のイスラム過激派運動への支持を拡大させた」と分析したのと同じ考えです。

私は戦争の大義を論ずる前に、指導者もその国の民も、戦争に参加する兵士たちの人生、兵士たちが戦うことになる相手国の人たちの人生と運命に想像力を働かせて、軍事にかかわる国家の政策は決めなければならないと思います。後から「涙が止まらなかった」では遅いと思います。両親、兄弟、恋人、友人たちが悲しい思いをしないために、日本国憲法前文は「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意」したのだと思います。

北朝鮮の核実験を受けて、枡添要一氏は国会質問で北朝鮮の核実験を絡ませて、米軍が北朝鮮の船を臨検中に発砲されても、側にいる自衛隊は何も出来ませんというのか、と発言。久間防衛庁長官は10月17日の衆院安全保障委員会で、海上自衛隊が補給している米艦船が攻撃された場合について、「(自衛隊が)自分が攻撃されたとみなして反撃するのが自然だ。『自分が攻撃されていないから知らない』ということが、現実に選択できるのか」とのべて個別的自衛権の範囲で認められるとの考えを示しましたが。しかし政府が選択しなければならないのは、久間防衛庁長官が想定するような危険なことが起こる政策を実行しないことです。

朝日新聞の報道によりますと、10月24日、安倍首相は、伊吹文部科学相に対して教育基本法の改定案について「民主党の案のいいところを含めて話し合うように」と指示しています。民主党案は前文に「日本を愛する心を涵養する」などを盛り込んでいます。

現在の教育基本法は教育の目的を「平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび」となっています。私が紹介した英国のイラク戦争に関する新聞報道を見れば、どの教育のあり方が、一人一人の人生を明るい未来に導くかは明瞭です。国家は往々にして誤りを犯します。その国家の価値とするものが個人の価値より上位において、絶対化してはならないのです。民主党案は「人間を愛する心を涵養する」に変えなければなりません。

日本、韓国、中国、ロシアの4カ国を訪問したライス米国務長官は「危機をエスカレートさせるつもりはない」と強調して、「危険な船の情報が得られた時だけを特定して検査する」と各国首脳に伝えた。外務省幹部は「米側は当分外交に力を入れる。貨物検査で米軍をどう動かすかの検討は時間がかかる」と分析する、と10月24日の朝日新聞は報道しています。

この報道からでも、危機をエスカレートさせないためには、貨物検査で米軍をどう動かすかの検討は時間をかけて慎重に行わなければいけない事柄だということがわかります。にもかかわらず、日本の周辺事態と認定して米軍の船舶検査の支援を行い、集団的自衛権行使の議論を行う政治家のセンスは、軍事の恐ろしさを麻痺させて、事態をエスカレートさせるようなことを国会で平然と論議します。この軍事の恐ろしさを麻痺させた政治家たち、命令された任務を遂行する人たちの大切な人生に対する想像力が欠如した政治家たちが、世界の人たちから厳しい批判を受けているにもかかわらず、米国の戦争の大義を肯定的に捉え、それを支援するための集団的自衛権行使が出来る憲法を推進しています。一人一人の人生に思いやる血の通った心「人間を愛する心を涵養」して政治を行ってほしいと思います。