いせ九条の会

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ベートーヴェンの平等と平和思想/山崎孝

2006-12-29 | ご投稿
日本各地で12月に演奏され、歌われる古典音楽の曲にベートーヴェンの「第9交響曲」があります。この曲は私も経験がありますが、窮境の中に陥った人に限りない勇気を与える音楽だと思います。

ベートーヴェンの逸話で有名なのは、ベートーヴェンはナポレオンが登場すると、彼こそが理想の政治を実現してくれる英雄だと思い、交響曲第3番「英雄」を作曲し贈ろうとしました。しかし、ナポレオンが皇帝の位に就いたため失望しました。しかし、理想的な社会を実現するために、人々を鼓舞する音楽を作ることは諦めませんでした。

ベートーヴェンは、大学でフランスの啓蒙思想に刺激を受け、音楽を通じてヒューマニストの使命を果たそうと決意したと言われています。

理想的な社会とは、人はみな平等で兄弟みたいになること、議会政治、民主制度、国民主権でした。

ベートーヴェンは、出来る限り良い行いをして、自由を愛し、真実を愛し、そして、たとえ権力者の前にあっても、真実を否定しないこと、馬鹿げた野心のために、友人や家族を傷つけてはならないと言う信条を持っていたと言われています。

ベートーヴェンの会話帖(註、ベートーヴェンは耳が聞こえなくなり、相手と会話するときに会話帖を用いた。その会話帖が残されている)のことを書いた山根銀二さんは、「ミサ・ソレニムス」の楽譜の上部に書かれた《内と外の平和を求める願い》について次のように解説しています。

《「内の平和」は心の平和である。平安と訳されてもよいものである。「外の平和」は自分の外部の、つまり社会の平和である。その二つは別のものではありえない。心の安らぎは、社会の平和がなくてはありえない。もし心の救いを求めるならば、それをとりまく社会の平和も一緒に実現するのではなくてはならない。ベートーヴェンにあっては、人民の自由を求める要求を蹂躙し血の弾圧をほしいままにしているメッテルニヒ体制の暴虐を打破し、平和の実現以外には、心の救いがないわけであった。神に平伏して憐れんでもらうことによってでなく、神に対して、心の平和の条件である外の平和を与えよと要求する、というのがこの言葉の意味だし、このところにこの言葉を掲げた意義でもある。(以下略)》(「孤独の対話」より)

ベートーヴェンは社会の自由と芸術の自由とは分離できないという考えでした。

ベートーヴェンの「第9交響曲」は、人はみな兄弟と歌い、理想をうたう音楽、人々を鼓舞する音楽ですが、人々を鼓舞することが悪用されてヒトラーに利用されてしまっています。戦後は、EUの歌、国連の歌にもなりましたが、人種隔離政策を行うローデシアの国の歌になったりしています。このことからいえることは、私たちがまやかしの理念を事実に照らして見抜かなければならないことを教えています。

(ベートーヴェンに関するNHKの番組も参考にしています)