いせ九条の会

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福田首相の事実認識は正確ではない/山崎孝

2007-10-05 | ご投稿
【首相「軍関与否定せず」「沖縄戦教育に力」答弁】(2007年10月5日付朝日新聞)

 福田首相は4日、衆参両院の代表質問で、沖縄戦で日本軍が住民に「集団自決」を強制したとの記述が教科書検定で削除された問題で、「(検定意見は)軍の関与を否定するものではない」と答弁した。そして、沖緒戦についても「これからも学校教育でしっかりと教えていかなければならない」と明言した。沖縄県民や記述削除に批判を強める野党に一定の配慮をしたとみられる。

 首相は「06年度の教科書検定は、沖縄の集団自決に関する記述について軍の関与を否定するものではなく、集団自決された沖絶の住民のすべてに対して自決の軍命令が下されたか否かを断定できない、という考えに基づいてなされたと承知している」と述べた。

 そのうえで「沖縄県民の思いを重く受け止め、文部科学省でしっかりと検討している」と述べ、教科書会社から訂正申請があった場合には「真摯に対応する」とする同省の姿勢に理解を示した。さらに首相は「沖縄戦は住民を巻き込んだ悲惨な戦いであり、これからも学校教育においてしっかり教えていかなければならない」と強調した。(以下略)

首相は「06年度の教科書検定は、沖縄の集団自決に関する記述について軍の関与を否定するものではなく、集団自決された沖縄の住民のすべてに対して自決の軍命令が下されたか否かを断定できない、という考えに基づいてなされたと承知している」と述べましたが、このような考え方の検定意見ではありません。検定意見のついた結果、ある教科書は、すべてと記述したのではなく「なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた」と範囲を限定した記述でも「なかには集団自決に追い込まれた人々もいた」と書き直し日本軍という主語が削除されています。

以下、検定意見によりいろいろなケースの記述で「日本軍」という主語を削除した例を示します。「日本軍に『集団自決』を強いられたり…」との記述は、「追いつめられて『集団自決』した人や…」に変更。

「日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民や、集団で『自決』を強いられたものもあった」との記述は、「集団自決に追い込まれたり、日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民もあった」に変更。

「日本軍によって壕を追い出され、あるいは集団自決に追い込まれた住民もあった」という記述は、「日本軍に壕から追い出されたり、自決した住民もいた」と自決の規模を小さくして記述をしています。

【検定撤回拒否をつくる会が要望】(2007年10月5日付朝日新聞)

 沖縄戦で日本軍が住民に「集団自決」を強制したとの記述が教科書検定で削除された問題で、「新しい歴史教科書をつくる会」は4日、文部科学省に対して検定意見の撤回をしないよう申し入れた。

 記者会見した会長の藤岡信勝・拓殖大教授は「検定制度の枠組みを外部の圧力によって有名無実化することになる」と述べた。(以上)

3月31日の朝日新聞は、検定意見がついた時に、訴訟を起こした原告側は「勝利宣言」をしたと報道しています。

裁判に判決が下されていない段階で「勝利宣言」をするということは、この裁判の目的が名誉を回復させるだけの目的でなく、文科省の検定意見に根拠を与えるための訴訟であったことを如実に物語ります。

藤岡信勝氏は以前、沖縄に行き1日か2日滞在しただけで「もう調査は済んだ」としてすぐ帰っています。それからまもない時期に原告らは提訴を行ないました。「新しい歴史教科書をつくる会」こそが、文科省の検定に外部から圧力をかけた組織という疑いをもたざるをえません。