いせ九条の会

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読売新聞の社説を考える/山崎孝

2008-06-21 | ご投稿
自衛隊海外派遣 恒久法論議を継続すべきだ(2008年6月20日付・読売社説)

自衛隊の海外派遣に関する恒久法の検討は、簡単な作業ではない。しかし、問題を棚上げせず、粘り強く論議を継続することが必要だ。

自民、公明の与党恒久法検討チームがまとめた中間報告は、「検討」「引き続き議論」といった、先送りの表現が目立つ。合意した項目は、「部隊派遣には原則、国会の事前承認を要する」など、数少ない。

検討チームは当初、今国会中に恒久法案の骨子をまとめる予定だったが、実現しなかった。与党内では、秋の臨時国会への法案提出も困難との見方が強い。

意見が最も食い違ったのは、自衛隊に警護活動を付与することの是非だ。自民党は、後方支援や人道復興支援に加え、警護活動の追加を主張したが、公明党は慎重姿勢を崩さなかった。

警護活動は、要人や物資の輸送車両に随伴したり、建物を守ったりする形態が想定される。本格的な戦闘に発展する恐れのある治安維持活動と違い、警護活動ならば実施していいのではないか。

その場合、重要なのが、憲法9条との関係を整理し、武器使用基準を見直すことだ。

武器の使用は現在、正当防衛などに限られている。自衛隊は国際機関などに警護を依頼されても、恥を忍んで断るか、別の名目で出動し、自らの身を危険にさらすことで武器を使うしかない。

自衛隊が車両で物資を輸送中、道路上で妨害されても、警告射撃さえできず、妨害者を避けて通行するしかない。これでは、効果的な活動はできない。

相手の抵抗の程度に応じた武器使用の手続きを明確に定め、事前に自衛官を十分訓練しておく。その方が、必要以上に武器を使用することの歯止めとなる。

来年1月にインド洋での給油活動、7月にイラクでの空輸活動の特別措置法の期限が切れる。イラク多国籍軍に関する国連安全保障理事会決議も今年末に切れ、多くの国が撤収する可能性がある。

日本も、アフガニスタンとイラクでの活動をどうするかを総合的に判断し、今秋の臨時国会で必要な法整備を図らねばならない。

政府が今月、アフガンに調査団を送り、周辺国からアフガンへの空輸やアフガンでのヘリ輸送などの実現可能性を探ったのも、その準備の一環である。

恒久法でなく、新たな特措法で対応するにしても、自衛隊の活動や武器使用について議論を深めることの必要性は変わらない。(以上)

【コメント】読売新聞の社説は《日本も、アフガニスタンとイラクでの活動をどうするかを総合的に判断し、今秋の臨時国会で必要な法整備を図らねばならない》と主張していますから、アフガニスタンとイラクの状況との関連において次の主張を考えなければなりません。

《警護活動は、要人や物資の輸送車両に随伴したり、建物を守ったりする形態が想定される。本格的な戦闘に発展する恐れのある治安維持活動と違い、警護活動ならば実施していいのではないか》。この主張はアフガニスタンの国際治安支援部隊がおかれている状況を無視した机上の空論です。

アフガンの戦況は、【アフガンで英軍兵士3人死亡、展開開始以来の死者100人に】(2008年6月9日付読売新聞)英国防省は8日夜、アフガニスタン南部ヘルマンド州をパトロールしていた英軍兵士3人が同日、自爆テロを受けて死亡したと発表した。

【2008年6月17日付朝日新聞の報道】アフガン南部のヘルマンド洲カシュガルガ近郊で、パトロール中の英軍車両が爆破されて、英軍兵士4人が死亡した。英軍の死者は2001年駐留開始以来、106人になった。

【2008年6月17日の毎日新聞報道】【アフガン2001年以降の米軍とNATO軍兵士死者数は800人超える アフガン:テロ急増】2007年のアフガンでの自爆攻撃は過去最悪の138件だったが、うち8割近くは8月までに集中し、9月以降は急減した。この傾向は2008年も4月まで続いたが、5月には12件と07年前半のペースに戻り、6月は16日までの半月で9件と異常な事態となっている。

【6月15日6時台のNHKテレビの国際ニュース】アフガニスタンのタリバン勢力に対するインタビューの模様を伝えていました。タリバンの小グループが米軍やNATO軍(国際治安維持支援部隊)の通る道路に5分で地雷を仕掛ける場面がありました。その道路にはタリバン勢力の仕掛けた地雷で破壊された残骸がいくつも写っていました。小グループは無線で連絡を取り合っていました。これがすばやく的確な攻撃を成功させています。(以上)

アフガンではかように相手の姿が明確に捉えられない勢力との戦いが多いのです。自衛隊が要人や物資の輸送車両に随伴したりしていれば、このような攻撃にあうことは避けられません。

それに自衛隊がアフガニスタンに来ることで今まで行なってきた日本のNGOの活動が攻撃の標的になると指摘されています。

アフガニスタンにおける国際治安維持支援部隊の活動が、アフガニスタンの治安維持に役に立っていないことは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が2008年6月17日、最も難民数が多いのはアフガニスタンの310万人、イラクの230万人で、この2カ国で全体の半数近くを占めると発表していることに如実に表れています。

アフガニスタンもイラクも内乱が起こり、紛争当事者の了解の下に、治安維持のために国際部隊が派遣されたのではなく、米国がタリバン政権、フセイン政権を打倒するために攻め込んで、以前の政権より酷い状態にしてしまった国です。ですから9月開会の第63回国連総会議長ミゲル・デスコト・ブロックマン氏は6月4日、議長選出にあたっての演説で、イラク、アフガニスタン戦争について「侵略行為」だと述べ、名指しは避けながらも米国を批判しています。

国民の意見は、朝日新聞の2008年5月3日の報道を例に挙げれば、自衛隊の海外活動をどこまで認めるか三つの選択肢で聞くと、「武力行使をしなければ認める」が最も多く2007年と同じ64%。「必要なら武力行使も認める」が17%(2007年22%)、「一切認めない」は15%(同10%)でした。読売新聞の社説は《武器の使用は現在、正当防衛などに限られている。自衛隊は国際機関などに警護を依頼されても、恥を忍んで断るか、別の名目で出動し、自らの身を危険にさらすことで武器を使うしかない》と主張していますが、国民の多数はこのような考えはしません。なせなら日本の国のあり方は、憲法の定めた国際紛争を武力で解決しないを国是とする国であるからで国民の多くはこれを是としています。そして戦争に協力しない方法での国際貢献をすればよいと考える人が多いのです。