いせ九条の会

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時代の変化についていけないのは日米同盟を要とする外交/山崎孝

2007-01-27 | ご投稿
安倍首相は26日の施政方針演説の中で「はじめ」のところで《憲法を頂点とした、行政システム、教育、経済、雇用、国と地方の関係、外交・安全保障などの基本的枠組みの多くが、21世紀の時代の大きな変化についていけなくなっていることは、もはや明白です》と述べています。

「主張する外交」のところでは《「世界とアジアのための日米同盟」は我が国外交の要であります。日本を巡る安全保障の環境は、大量破壊兵器やミサイル拡散、テロとの闘い、地域紛争の多発など、大きく変化しています。こうした中で、日本の平和と独立、自由と民主主義を守り、そして日本人の命を守るために、日米同盟を一層強化していく必要があります。米国と連携して、弾道ミサイルから我が国を防衛するシステムの早急な整備に努めます。さらに、世界の平和と安定に一層貢献するため、時代に合った安全保障のための法的基盤を再構築する必要があると考えます。いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権行使に該当するのか、個別的具体的な類型に即し、研究を進めてまいります》と述べています。

私は《「世界とアジアのための日米同盟」は我が国外交の要》と規定したことこそ、《21世紀の時代の大きな変化についていけなくなっていることは、もはや明白です》。日本外交は、世界の良識が示される国連を要にすることでなければと思います。

安倍首相は「主張する外交」のところで《私は首相就任直後、中国及び韓国を訪問して、首脳レベルで胸襟を開いて話し合いを行い、両国との関係を改善しました。中国とは、両国国民にとってお互いの利益になるよう、戦略的互恵関係を築いてまいります。韓国との間でも、未来志向の緊密な関係を築いてまいります》と、自ら行った外交を協調しています。

「胸襟を開くとは」相手を信頼することで可能になります。これを基本にして「戦略的互恵関係」を築くとは、相互扶助の経済関係を基盤にして隣国やアジアの国との関係を強化して、日本の周辺事態とする中国と台湾の軍事紛争や朝鮮半島有事が起こらないように日本が活動することだと思います。中国の基本政策は大陸と台湾との互恵関係を目指しています。韓国の北朝鮮宥和政策を支持して、韓国と北朝鮮の平和的統一を日本が支援することだと思います。アジアの国に不信感をもって日本の周辺事態を想定して、紛争に介入する米国を支援するために集団的自衛権行使を可能にする憲法を持つことと正反対のことです。

安倍首相が主張する「日米同盟は血の同盟」にすることは、自衛隊員「日本人の命を守るため」とは大きく矛盾します。「日本の平和と独立、自由と民主主義を守」ることと、改憲とは相容れません。日米同盟で集団的自衛権行使が出来るようになれば、2006年1月に要求された「自衛隊にイラクの治安維持活動の要求」を現行の法律では出来ないとして断ることは出来ず、覇権国家である米国の要求をのまざるをえないようになります。個人の尊厳を尊ぶことが民主主義の基本ですが、改憲は国家を個人より上位に位置づけて個人に国家の縛りをかけることを狙っています。

「いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権行使に該当するのか」は、明確です。憲法は日本の領域で攻撃されたときのみに自衛権が発動でき、それ以外はできない。自衛隊を持つときに自衛隊は国を守るための最小限度の戦力(個別的自衛権)から持たないから違憲ではないとする政府の釈明であり、歴代政権が国民に自衛隊は専守防衛の組織と明言して、これを根拠に国民の多くは自衛隊を受容れるようになっていきました。このような経緯をもつ国の最高法規の解釈を勝手に変えることは出来ません。

「21世紀の時代の大きな変化」や動向とは、イラクの大量破壊兵器の疑惑を武力で持って解決しようとした米英のイラク先制攻撃に対して、戦争をする前から世界の人たちが国際紛争に武力を使うなと、大きな反対運動を起こしたこと。レバノン紛争に対する国連の対応は、武力を使うな、即時停戦をでした。北朝鮮の核実験に対する国連の対応は、武力制裁を排除して話し合いの場である6カ国協議に北朝鮮を呼び戻すことでした。経済制裁はそのための手段と位置づけられ、国連加盟国に紛争を拡大する行為を戒め、北朝鮮政権を倒すことではありませんでした。

武力を手段に用いると、イラク戦争では平和と安定に全く役に立たず、かえって秩序が破壊され国際テロ組織に活躍の場を与え、そして内戦の様相さえ示し泥沼化が起こることを教えたことでした。

20世紀のヨーロッパの大きな変化は、欧州連合の拡大による多国間での経済の相互扶助と安全保障でした。21世紀にはいってからもこの欧州共同体はアジアにおいても評価されて、2007年1月にはASEAN諸国と日中韓の間で東アジア共同体の構築が確認されました。

決して国の骨格であり、世界平和への理念を示す憲法を変えてまで、二国間の軍事同盟を強力にする方向ではありません。