いせ九条の会

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ライス氏、放棄するかどうかを試すには、この路線を続けていくしかない/山崎孝

2008-06-27 | ご投稿
米国:「北朝鮮テロ指定」解除…6カ国協議再開へ(2008年6月27日の毎日新聞)

テロ支援国家指定解除を巡る今後の流れ ブッシュ米大統領は26日、ホワイトハウスで記者会見し、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除を決定したと表明し、議会に通告した。対敵国通商法の適用除外手続きも行った。北朝鮮が26日、6カ国協議の合意に基づき、核計画の申告書を議長国・中国へ提出したことを受け、見返り措置として決めた。北朝鮮が「敵視政策の象徴」と見なしたテロ支援国家指定の解除に米国が動いたことで、北朝鮮の核問題と米朝関係は新たな局面に入った。指定解除に慎重に対処するよう主張してきた日本は拉致問題解決に向け、厳しい対応を迫られそうだ。

 中国は6カ国協議の首席代表会合を7月1日ごろから5日間程度、北京で開く方向で調整に入った。申告内容の検討とともに、非核化への第3段階措置として検証方法も話し合う。日朝協議は別途再開を模索しそうだ。

 指定解除は通告翌日から「45日後」に発効する。実現すれば、20年ぶりの解除となる。

 大統領は会見で、北朝鮮の核申告は「正しい方向への第一歩」と述べる一方、「北朝鮮が国際社会の懸念に適切に対処しなければ、相応の結末が待っている」と北朝鮮をけん制した。さらに日本人拉致事件について「絶対に忘れない。日本と協力し、北朝鮮に圧力をかける」と語り、日本への配慮を示した。

 申告書の提出は北朝鮮の崔鎮洙(チェジンス)駐中国大使が中国外務省を訪れ、行った。外交関係者によると申告書は約60ページ。過去に抽出したプルトニウムは37キロ前後とされる。(1)プルトニウムの使用目的(2)核関連施設のリスト(3)天然ウランの在庫量--も記載されている。核兵器数は含まれていない。

 北朝鮮が否定する高濃縮ウランによる核開発、シリアの核開発への協力などは非公開の別の文書に盛り込まれる。

 昨年2月の6カ国協議で第2段階措置に位置付けた「完全かつ正確な核申告」は同年末までに完了する約束からすでに半年遅れたうえ、合意からほど遠い内容となった。

 一方、今後も米国の対北朝鮮制裁措置の多くが残る。ミサイルや核技術の拡散、人権侵害、06年の核実験などに伴うもので、武器の禁輸、米金融機関の信用供与禁止、資産凍結など数十項目に上る。

 核の申告と並び第2段階措置の柱である「核施設の無能力化」は全11工程のうち、8工程が終了。大統領は解除発効までの45日間で、6カ国協議の枠組みで申告内容を「厳格に検証できる」システムを構築する姿勢も示した。(以上)

2008年6月27日の中日新聞【ワシントン26日共同】ハドリー米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は26日、ホワイトハウスで記者会見し、北朝鮮が6カ国協議の議長国、中国に提出した核計画の申告で、米国が追及してきたウラン濃縮による核兵器開発や核拡散活動に関し「現在は一切手を染めておらず、今後もそうした活動に従事することはない」と約束したことを明らかにした。

過去における濃縮やシリアへの核協力については、北朝鮮が米側の「懸念」を「認識(acknowledge)」した上で、公の場でこうした懸念を否定したり、無視したりしないことを明文化していることを確認した。米政府高官によると、これらは申告本文とは別の付属文書「秘密覚書」に盛られた。北朝鮮は27日午後、寧辺の核施設の冷却塔を爆破する予定。

米国務省のケーシー副報道官は26日、申告書が約60ページだったことを確認。国務省高官によると、申告書は英文で書かれていたという。(以上)

【北朝鮮核申告 核廃棄への課題が多々残る】(6月27日付・読売社説抜粋)

(前略)第一に、申告には肝心の核兵器に関する情報が含まれていないという。核兵器の個数や所在、開発の実態は解明されないままだ。

北朝鮮はこれまで、「すべての核兵器及び既存の核計画の放棄」を約束し、「核計画の完全で正確な申告」をするとしてきた。だが、廃棄の対象となるべき核兵器の記載がない申告では、「完全で正確」とはとても言えまい。

ライス米国務長官は、核兵器の扱いは今後の交渉に委ねた、としている。

しかし、それは将来に重い荷物を残すことになる。北朝鮮はこれまで、情報を小出しにし、その度に大きな見返りを得てきた。

同様の戦術を繰り返せば、核廃棄交渉は長期化する恐れがある。その間、日本への核の脅威はまったく変わらない。(中略)

来週にも開かれる6か国協議では、検証の進め方について、厳しく詰めなければならない。

北朝鮮が欺瞞(ぎまん)戦術や合意破りに出るのなら、米国は制裁解除の方針を直ちに撤回すべきだ。

拉致問題を抱える日本も、北朝鮮が「再調査」などの合意事項を守らない場合には、日本独自の経済制裁措置の一部緩和方針を見送るのが当然である。(以上)

【コメント】読売新聞の社説は、北朝鮮に対する不信感を基調にした社説です。現在の状況はかつて長い間米朝が相互に不信感を露にして、睨み合ってきました。米国は2006年12月に入るまでは、6者協議の枠組みでは話し合うが、北朝鮮との米朝二国間交渉を拒否していた状況から比べて大きな変化です。米国が態度を変えて米朝協議を精力的に行なうようになってから6者協議は前進し始めます。

6者協議は2007年2月に初期段階の措置を合意して、2007年10月には第2段階の措置が合意されました。そして現在、北朝鮮の主要な核施設の無能力化は核の申告と並び第2段階措置の柱である「核施設の無能力化」は全11工程のうち、8工程が終了。この状況は核の申告が完全でないにしても大きな前進だと思います。

米国の国務省は交渉を前進させるために極めて現実的な考え方をしています。ライス米国務長官は6月18日の講演で「望むすべてを手に入れられる政策はない」として、「不完全な内容でも受け入れざるを得ない」と示唆しています。そして米紙に「放棄するかどうかを試すには、この路線を続けていくしかない」(6月24日の朝日新聞の情報)と語っています。2007年に入ってから北朝鮮と粘り強くに話し合ってきた米当局者の悟りのような気持ちを感じさせます。

また、ライス米国務長官は18日の講演で、北朝鮮は非核化の達成によって「人道的・開発支援、非核エネルギー支援、主権の尊重、国連憲章の諸原則の約束、朝鮮半島の永続的平和など」を確保できると指摘。「外交とは一連のインセンティブ(行動の促進要因)とディスインセンティブ(行動の阻止要因)を構築することだ」と述べ、「約束対約束、行動対行動」の原則を強調しています。(しんぶん「赤旗」の情報)