いせ九条の会

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イラク派兵 二つの国の政府の決定/山崎孝

2006-05-20 | ご投稿
伊新首相 イラク撤兵表明 四月の総選挙勝利を受けて政権についたイタリアのプローディ新首相は5月18日、上院で初の施政方針演説を行い、イラクに派遣しているイタリア軍部隊を撤退させる方針を表明しました。

 プローディ氏は演説で、「イラク戦争は重大な誤りだった」と断言。「それは安全の問題を解決せず、逆に問題を複雑にした」と指摘するとともに、「平和の使命こそが政府の決定の中心に置かれる」とし、「イタリア軍の帰還を議会に提案する」とのべました。

 ベルルスコーニ前右派連立政権は、七割を超す反戦世論に背いて、三千人のイラク派兵を強行、現在も二千六百人の兵士を駐留させています。この間、武装組織による攻撃などで二十人以上が殺されています。先の総選挙ではプローディ氏の中道左派連合「ユニオン」はイラク撤兵を公約に掲げて勝利しました。

 イラクには当初米国を含めて三十九カ国が派兵、すでに十五カ国が撤退しました。

 しかし、日本は麻生外相は、クウェートを拠点におこなっている航空自衛隊の空輸範囲を、南部の空港からバグダッドに広げても「問題がない」と発言しました。

 小泉政権の閣僚として、イラク空輸作戦の拡大を示したのははじめてのことです。陸上自衛隊のサマワ駐留継続に固執するばかりか、アメリカいいなりに航空自衛隊の空輸先をイラク全土に広げるなどとんでもない話です。

 アメリカは、サマワでの活動について意見交換した昨年秋の日米英豪四カ国会議以来、陸自の撤退に理解を示すかのような態度をとりつつ、空自の活動継続とサマワに近いタリル空港などに限っている輸送先をバグダッドや北部にも広げるようせまっています。

 小泉政権は「戦闘地域には行かない。危険な地域にはいかない」といってサマワやクウェートに自衛隊を派兵しました。アメリカの要求を受け入れることは、政府見解さえほごにし、戦闘地域での米軍支援にふみだすことを意味します。輸送先拡大をねらう外相発言は重大です。

 外相発言は小泉政権の考えを代弁しています。小泉首相は、昨年12月にイラク特措法にもとづく基本計画を変更した際、輸送先拡大問題について「日本で独自に判断していきたい」と肯定的姿勢を示しました。基本計画の変更に伴って実施要項も変更されましたが、バグダッド、北部のバラド、モスルなど四つの空港例示に変更はないものの、実際には、空自が活動できる空港をイラク国内二十四カ所に増やしていたことも判明しています。

 空自の輸送支援は米軍作戦を支えています。さらに米軍拠点地域にまで兵員と軍事物資を輸送し、米軍支援を強めるなど言語道断です。これ以上、罪のないイラク国民の殺りくに手を貸すべきではありません。

 外相は「バグダッド空港でロケット弾が撃たれた例はここ二年ぐらいない」「空自のC130輸送機はミサイル妨害機能がある」といいます。しかし、これはバグダッドでの戦闘状況を無視しています。危険なバグダッドに輸送機を飛ばすのは、自衛隊員の「安全の確保」を義務づけたイラク特措法にさえ反します。

 「バグダッドへの物資や隊員の輸送などに国連の要望が強い場合」など、国連をもちだすことによって輸送先拡大を合理化しようとしていることも重大です。イラク特措法は、戦闘行為が行われている地域、活動中戦闘行為が行われることがあると認められる地域での活動を禁じています。国連の依頼でも輸送はできません。国連をだしにして、アメリカの輸送先拡大要求にこたえるようなことはやめるべきです。

 イラク戦争は、アメリカが大量破壊兵器があるとうそをついてはじめた大義のない戦争です。宗派対立を呼び起こし内戦さえ危ぐされる状態にしたのはアメリカのせいです。

 バグダッドをはじめ中部でも北部でも戦闘は続いています。バグダッドで米軍とイラク軍がイスラム教シーア派のモスク(礼拝所)を攻撃。バグダッド南西で米軍ヘリが攻撃され墜落。米軍が中部で開戦以来最大規模の軍事作戦を実施。米海兵隊が西部で武装勢力と交戦…。米軍がいる限り、危険がいっぱいです。(「しんぶん赤旗」電子版、5月16日の社説と19日付け報道より)

イタリア政府は民意を尊重してイラクから撤兵、日本政府は憲法の規定の制限を受けたイラク特措法規定そのものを無視して、自衛隊の活動を拡大します。それも人道復興支援という側面を持っていない米軍などの後方支援活動が主流です。

このような米国追従の自民党政府の態度では、自民党の掲げる自衛軍の国際的協調活動が、正真正銘の国際協調活動になるのかは大いに疑問です。現在の憲法のもとで、自衛隊などの特別編成部隊で紛争地域の戦闘行動が終息してから、人道支援活動を行なうべきです。