いせ九条の会

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いかなる場合でも力の弱い庶民の立場で考えることが大切/山崎孝

2008-10-31 | ご投稿
私は10月25日の【消費税アップ―麻生首相は本気を示せ】という朝日新聞社説を読んで、高い所からの国家財政再建の視点で、その消費税率の引き上げを盛り込んだ財政政策の実行で大きな影響を受ける低所得層の庶民への視点を欠いた社説だと思いました。そのことを述べた文章を読書投稿欄「声」に投稿しました。その文章を朝日新聞名古屋本社「声」の編集部は採用して10月30日付「声」欄に掲載しました。この文章と社説を併せてブログに載せますのでお読み下さい。

【消費税アップ―麻生首相は本気を示せ】 少子高齢化で膨らむ社会保障の財源をどうするのか。景気対策は大事だが、国債の垂れ流しは困る。そんな不安が国民の間に漂うなか、麻生首相が注目すべき発言をした。

 月末にまとめる新総合経済対策に、消費税率の引き上げを含む中期の税体系プログラムを盛り込むよう与党に指示したのだ。

 何を言わんとしているのか、はっきりしないところはある。だが、首相の発言をいろいろ重ね合わせると、こんな趣旨になるのではないか。

 「全治3年」の日本経済が回復してくれば、消費税の増税に踏み出す。いつ、どのように税率を上げていくか、具体的なスケジュールを描き、負担増について総選挙で国民に訴える――。

 もしそうであるなら、その言やよしである。なにしろ、選挙の前に増税方針を打ち出すのはタブーといわれてきた。それを破って、負担増を真正面に掲げ、国民に信を問うという決意表明になるからだ。

 しかし、そう信じるにはいささか不安な材料もある。月末の対策とりまとめまでわずか1週間しかない。しかも与党や政府の税制調査会の議論もまったく経ていない。

 ひょっとして、実はまた、増税論議を先送りするための「逃げ水」公約ではないのか。小泉、安倍、福田政権はいずれも、税制の抜本改革の中で方向づけると言いながら、結局は論議を先送りしてきた過去がある。

 勇気をもって財源を語ろうというのなら結構だが、その割に新総合経済対策には定額減税をはじめ、高速道路料金の引き下げなど「バラマキ色」の濃い施策が並びそうだ。来春には国民年金の国庫負担割合を引き上げるための財源も必要になる。

 むしろ、とうぶんは国債を大量増発してしのぐための口実ではないのか、という意地悪な見方も出てきそうだ。

 首相は本気なのかもしれない。増税論を語らない民主党とここで差をつけ、責任政党として存在感を示すというなら、それは王道だろう。

 ならばこの際、首相に提案したい。

 増税の時期と引き上げ率などを具体的な行程表にして総選挙に臨み、勝てばただちにそれを法律で定めると約束することだ。景気回復の足取りによっては実施時期などを見直せる柔軟条項を組み込んでもいい。

 社会保障の負担をどのように分かち合っていくか。当面の経済失速を防ぎつつ、財政も再建していく。税制のあり方はそうした基本的な政策の土台になる。あいまいな議論でお茶を濁すことは許されない。

 首相は今回の発言をきちんと肉付けしなければいけない。当面の消費増税を否定する民主党にも、説得力のある税制論、財源論を求めたい。(以上)

2008年10月30日付朝日新聞「声」欄掲載文【社説はいつも弱者へ配慮を】

 本紙25日の「麻生首相は本気を示せ」との社説は、麻生首相が月末までにまとめる新総合経済対策に、消費税率引き上げを含む中期の税体系プログラムを盛り込むよう与党に指示したことを後押しするようにも取れた。

社説は、消費税率引き上げることが生活困難者に与える影響については触れていなかった。

消費税は低所得者ほど家計に対する負担割合が高くなる税金である。2006年には年収が200万円以下の人が1千万人を超えた。

福祉を一番必要とするのは様々な理由の生活困難者である。福祉と結びついた社会保障制度維持のための大衆増税は、さらに生活困難者に負担を増す矛盾を生む。

社会保障制度を維持するために消費税率の引き上げがどうしても必要であるのであれば、生きるのに必要な食料品に対する課税はやめるべきだと考える。

朝日新聞は庶民の生活を大切にする新聞だと思っている。その社説にはいかなる場合でも、貧しく、弱い人たちへの視点と配慮を望んでいる。(以上)

【意見】昨日のブログは、アフガニスタンの情勢を改善するために米国が武力行使に偏ったこれまでの戦略が情勢を泥沼化させた反省から、対話を含めた硬軟取りまぜた新戦略へと方針転換を図る姿勢を見せ始めていることを紹介しました。これは日本国憲法「紛争を武力で解決しない」という理念と一致する、対話のファクターの重要性が増したことを意味します。

けれどもブログで書きましたように、日本の二大政党は、日本が海外での武力行使を可能にする方向に進もうとする姿勢を見せており、これは国際情勢の趨勢をしっかりと認識しておりません。かように私は憲法の理念を踏まえて国際情勢を見るように心がけています。

国内問題も憲法の理念が活かされているのかという観点で見ています。とりわけ低所得者層が増大している今日の状況において、応分負担を無視した消費税率の引き上げは、憲法25条のすべての国民は最低限度の生活を営む権利の保障という理念を大きく逸脱します。