いせ九条の会

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自民党政権の情勢を読み取る力を検証する/山崎孝

2007-10-03 | ご投稿
「論座」2007年11号に、私が投稿した文章を掲載していただきました。その文章をブログにも投稿いたします。

【宮本常一の「読む力」が政治家にあるか】

 佐野眞一氏は9月号で宮本常一が杉皮を干してあるというだけの写真から、杉材の運搬に関わる全労働過程を読み解いている例などを挙げて、宮本常一が全国を旅して鍛え抜いた「読む力」と「読ませる力」を指摘していた。

 私はこの記事で宮本常一著「忘れられた日本人」所収されている旧名の愛知県北設楽郡名倉村の古老たちの座談会を記録した「名倉談義」を思い出した。座談会で村人が万歳峠で兵士となって出て行く人に名残を惜しんだことを話している。

峠の上までいって万歳を唱えたのでは、峠を下るとすぐ姿が見えなくなり、これでは愛想がないから、峠の上から6、7丁下った所で見送りそこで万歳を唱えた。峠が万歳峠と言われるようになったのは日清戦争が始まった頃からで、日露戦争の時も日独戦争の時も日中・太平洋戦争の時も兵士を見送ったことを話している。

かように辺鄙な山間の峠でも戦争の歴史が刻まれていたことがわかる。

 戦争にならないためには国家の政策が国際情勢をしっかり読み取り柔軟な外交政策が必要だ。私は国際情勢をしっかりと読み取る力が日本の政治家にあるのか心配している。

6者協議の合意が2月に成立しているが、5月18日、集団的自衛権を研究する有識者懇談会が「北朝鮮の核開発や弾道ミサイル問題など、わが国を取り巻く環境は格段に厳しさを増している」として、憲法解釈を変えてまで戦争の歯止めをなくそうと考えていることが、その一例だ。(以上)

自民党政府が情勢を的確に読めなかった事例では、最大の事柄にイラク戦争があります。ブッシュ政権と同様、短期間に勝利できると思っていましたが完全に読み間違いでした。

東アジアの情勢では、冷戦時代に厳しく対立していた中国と韓国、中国と米国が6者協議という枠組みを作り、協力して東アジアの平和と安定を図ろうとしている動向に対する認識、追従している米国が北朝鮮政策を転換したことを読めず、北朝鮮政策で対決一本槍の政策を取って拉致事件の解決をこじらせてしまいました。6者協議では孤立しかねない状況にあります。北朝鮮への第2段階のエネルギー支援に4カ国は準備を整えましたが日本は支援しない意向を示しています。そして韓国政府の見解では、北朝鮮へのテロ支援国家指定解除の解除期限が記されているとも記されていないともとれる9月の暫定合意を承認せざるをえなくなりました。

2005年暮れから2006年初めにかけて、日本の中国との貿易額が一番に大きくなろうとしている時期にも、民主党の党首も含めて中国脅威論を展開します。インドや豪州と共同して安倍政権は中国に対抗した「価値観外交」を行おうとしました。しかし、インドや豪州はその気はなく中国と良好な関係を結ぼうとしていました。読み違えもいいところです。

国内政治においては、自民党安倍政権は、有権者が政治と金の問題への怒りを持ち、格差社会への怒りなどを持っているのをしっかりと読めず、憲法改定を頂点とする「戦後体制の脱却」などイデオロギー的な政策を推し進めたことです。しかし前政権が改憲を目的とした国民投票法を強引に成立させながらも、新しく発足した福田政権は首相の所信表明演説で一言も改憲に触れることは出来ませんでした。一時的には封印?せざるを得なくなったのです。

安倍政権が教科書検定問題でも5月28日の段階で、”党派を超えて” 那覇市、沖縄市、渡名喜村など11市町村議会が検定意見の撤回の意見書を可決し、29日以降は座間味村、今帰仁村、名護市、南城市など20の市町村議会に同様の動きがあって、沖縄の人たちが”ただならぬ動き”を見せていることを認識できなかったことです。そして11万人と言う9・29沖縄県民大会の規模の大きさに驚いて、真剣に対処しなければと思いはじめました。

【参考】沖縄タイムスは10月2日《渡海紀三朗文部科学相は二日午前の閣議後会見で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、教科書会社から記述の訂正申請があった場合の対応について「真摯に対応する」と述べ、記述を復活させる可能性を認めた。また、申請の内容を承認するかどうかを判断する際に、教科用図書検定調査審議会で再検討する必要があるとの認識を明らかにした。

訂正申請に前向きな姿勢を示した理由について渡海文科相は「県民大会だけでなく、新たな事実、証言が出てきた」と述べ、県内の「集団自決」体験者による日本軍の強制を示す新証言が相次いでいることを根拠に挙げた。

その上で「今回は検定結果に異論があるわけだから、もう一度審議会で検討いただけないかなと思っている」として、再審議の必要性を明確にした。

渡海文科相は一日、「政治が介入をしないというこの(検定)制度をしっかり守っていきながら、なおかつ、沖縄県民の気持ちに何ができるのか考えたい」と述べ、検定制度に矛盾しない形で事態打開を図る考えを示していた。

訂正申請は教科書会社の主体的な判断で文科省に対して記述変更の承認を求める手続きで、渡海文科相はこの方法ならば「政治介入」に当たらないと判断したもようだ》と伝えています。

安倍政権が「政治介入」をして起きた事なのに、変な言い訳をしています。

10月3日朝6時の民放のテレビニュースを見ました。コメンテーターは、2000年6月の南北首脳会談時の金大中大統領と金正日総書記、今回の盧武鉉大統領と金正日総書記の握手の仕方の違いをとりあげて興味本位の解説をしていました。しかし、肝心な南北首脳会談と日本の進路という関係という視点での解説はありませんでした。

自民党政府が朝鮮半島有事にもそなえて、膨大な国費を使いミサイル防衛網の拡充を図っていること。戦争をしないとした国是を転換してまで、朝鮮半島有事に備えて日米同盟において集団的自衛権行使を企図していることへの言及はありませんでした。映像マスメディアの情勢を読み取る力に不安を覚えます。