いせ九条の会

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ミサイル防衛に力を入れるより、平和な環境作りを/山崎孝

2007-05-13 | ご投稿
【ミサイル迎撃:高出力レーザー兵器開発に着手 防衛省方針】(5月13日付毎日新聞ニュース)

防衛省は12日、ミサイル迎撃のための高出力レーザー兵器の研究、開発に来年度から着手する方針を決めた。来年度予算の概算要求に盛り込む方針だ。北朝鮮のミサイル発射や核実験で日本上空の脅威が高まる中、日本の防空機能を強化する狙い。まずは本土防衛に直結する地上配備型レーザーの研究、開発を目指すが、将来的には航空機搭載レーザー(ABL)についても検討する。

日本は現在、弾道ミサイルの迎撃手段として(1)地上配備型の「PAC3」(2)イージス艦に搭載する海上配備型の「SM3」--の2本柱で両迎撃ミサイルの配備を進めている。PAC3はミサイルが大気圏に突入後、着弾するまで、SM3はミサイルの大気圏外の飛行中の迎撃を想定している。これに対しABLは、弾道ミサイル発射直後の撃ち落としやすい段階での迎撃手段として米国が開発を進めている。

ABLについて日本はこれまで、発射国上空の迎撃が領空侵犯につながったり、ミサイルの攻撃目標が日本であることが判明する前に迎撃すれば、憲法解釈が禁じる集団的自衛権の行使となる恐れがあるため、研究や開発には慎重だった。

しかし、1日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)でミサイル防衛(MD)分野での協力強化がうたわれた。米側からABLの開発に対し協力を求められていることや、北朝鮮の脅威が昨年7月のミサイル発射で顕在化したことから、慎重姿勢を転換させる方針を固めた。【田所柳子】(以上)

《北朝鮮のミサイル発射や核実験で日本上空の脅威が高まる中》と報道しています。しかし、その後に起きた朝鮮半島の非核化を目指す6者協議の前進を見れば、北朝鮮の脅威が高まったとは言えません。

米国は北朝鮮がテロ支援国家と指定していますが、この指定の解除について4月末の日米首脳会談で、日本人拉致問題の解決が指定解除の条件になることに「配慮する」と一方で、法的な面で「前提条件にはならない」と説明したことを5月12日付の朝日新聞は報道しています。これは米国独自の政策基準で北朝鮮政策を実行する態度です。

昨日紹介した5月11日の毎日新聞は《バシュボウ駐韓米大使がウリ党国会議員団との会合で、北朝鮮の非核化を前提に「来年の今ごろ米朝国交正常化ができると期待する」と述べた》ことを報道しました。

これらを見れば、イラク戦争で政権の権威を大きく失墜させたブッシュ政権は、政権の名誉挽回をかけて本腰を入れて、6者協議の合意を実現させるべく、また米朝の国交正常化に取り組むことがわかります。

北朝鮮は、2005年の6者協議で「北朝鮮の安全を保障すれば軍事的核と開発計画を放棄する」と述べていますから、決して覇権主義の国家ではありません。覇権主義を取ろうとしても、外国の援助が無ければ真っ当な国家経営が出来ない国力です。

昨日、著書を紹介した軍事ジャーナリストの田岡俊次さんは、ミサイル防衛の効果は、飛んでくるミサイルを完全には撃ち落せない。また撃ち落しても空中で搭載した兵器が爆発する可能性もあり「ないよりましか」「気休め程度」だと考えています。このようなシステムに膨大な国費を使うより、6者協議合意の実現に向けて努力する方が日本の安全保障に取ってはるかにましだと思います。