いせ九条の会

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町村信孝官房長官の言葉を考える/山崎孝

2007-10-27 | ご投稿
【町村氏が外相見解批判 拉致めぐり足並み乱れ】(2007年10月26日付中日新聞)

町村信孝官房長官(拉致問題担当)は26日午後の記者会見で、北朝鮮による拉致被害者数人の帰国実現を拉致問題の「進展」とみなすとした高村正彦外相の見解について「ここで(進展の定義を)具体的に言って何の意味があるのか。相手に付け入るすきを与えるだけだ」と強く批判した。福田康夫首相は「積極的アジア外交」の推進を掲げているが、最重要課題の北朝鮮対応をめぐり担当閣僚間の足並みの乱れが露呈した形だ。

会見で町村氏は、外相発言について「被害者が何人帰国しそうだとか、(帰国の可能性がある)何人かの名前が出ているのではないかとの誤解を与える。そんな事実はない」と指摘。政府として「すべての被害者の一刻も早い帰国を求めるとの一点に尽きる」と述べ、対処方針は変わっていないと強調した。(共同通信)

【福田首相「進展は全員帰国」 拉致めぐる外相発言を修正】(2007年10月26日付中日新聞)

福田康夫首相は26日夜、北朝鮮による拉致問題が進展したかどうかの判断基準について「全員だ。こちらが向こうにいると言っている方々が全員帰ってくるということだ」と述べ、政府が認定する拉致被害者全員の帰国が必要との認識を強調した。数人の帰国実現を「進展」とみなすとした高村正彦外相発言を軌道修正した形。官邸で記者団の質問に答えた。

町村信孝官房長官(拉致問題担当)も記者会見で、外相発言を「ここで(進展の定義を)具体的に言って何の意味があるのか。相手に付け入るすきを与えるだけだ」と強く批判。閣内の足並みの乱れが露呈した。

首相は記者団に対し「高村大臣と話していないからお答えしにくい」としながらも、「思いは同じだと思う」として閣内不一致との見方を否定した(共同通信)(以上)

高村正彦外相の見解は、現在の6者協議の、北朝鮮の核の無能力化の方向とそれに対応した4カ国の北朝鮮への支援の具体化という進捗状況、米朝国交正常化部会での米国の北朝鮮テロ指定国家解除の方向への進展を考えれば、拉致問題の従来からの硬直した姿勢、制裁一本槍の姿勢を固執していると、日本が孤立しかねないという外務省の情勢分析の危機感からくる見解だと思います。

「すべての被害者の一刻も早い帰国を求めるとの一点に尽きる」という基準は、基準としては良いとしても、問題はこの基準にどうやって到達するかです。2002年9月17日の日朝首脳会談以降、5年経ってもいまだに拉致被害者の全貌が明確になっておらず、従来の政府の制裁一本槍の態度では、現実に少しも前進出来る兆しが表れていません。

政府の外交責任は会談で机を叩いて自国の主張をしているだけでなく、交渉の中から相手の本音を掴み分析して、具体的な形で物事を良い方向に進展させることだと思います。外交の到達すべき基準は、意地を張り合い喧嘩するのではなく、近隣諸国との「和平の環境」を獲得することであると思います。

相手の本音を掴むことは大切です。2005年に北朝鮮は6者協議で、北朝鮮の安全を保障すれば軍事用の核を廃棄すると約束します。客観的に見ても軍事超大国の米国に北朝鮮が軍事で対抗できる力はなく、これが北朝鮮の本音でした。米国はこの北朝鮮の本音に基本をおいて、ブッシュ政権内の強硬派を押さえて、北朝鮮の金融制裁を解除する方向を示し柔軟路線に転換し、2006年の暮れから今年の1月にかけて米朝の二国間協議を本格化させてこれが6者協議の推進材料となりました。

今までの路線で拉致問題が打開できないのは明白です。これを打開できる可能性を探らなければならないと思います。