伊佐子のPetit Diary

何についても何の素養もない伊佐子の手前勝手な言いたい放題

智積院の長谷川等伯

2023年05月16日 | 京都の社寺と文化財
NHK総合の「歴史探偵」という番組で、
京都・智積院が所蔵する長谷川等伯の障壁画について放送された。



「松に秋草図」(一部)


智積院(ちしゃくいん)の障壁画の一部が欠損しているのは
知っていたが、切り貼りされ再構築されていたまでは知らなかった。
番組はCG?でそれの復元を試みたものだった。


長谷川等伯 幻の障壁画 – 歴史探偵 – NHK
https://www.nhk.jp/p/rekishi-tantei/ts/VR22V15XWL/episode/te/L1MRMZ647K/
京都・智積院の国宝障壁画。
戦国の絵師・長谷川等伯の傑作だ。
現代へと伝わる中で切り貼りされて姿を変えた国宝。
現代の技術と研究成果を手がかりに復元される姿とは!?



[歴史探偵] 秀吉感激!!
長谷川等伯 一世一代の大仕事をCG復元 |
NHK
https://youtu.be/dMvBo67Jjl0



智積院というお寺は三十三間堂や京都国立博物館の近くにあり、
東山七条にある。
うちからはわりと近い。(市バスで4駅くらい)
いつか行きたい、そしていつかはあそこの等伯の障壁画を見たい、
と思いつつなかなか行く機会がなかった。
近いからよけいにいつでも行けると思って行かなかったこともあるかも…。

NHKが取り上げたこの機会に行ってみようと思い立ち、
とうとう行くことにした。


智積院ホームページ
https://chisan.or.jp/


智積院とはどんな寺院なのかと思っていたら真言宗のお寺だった。
「真言宗智山派 総本山智積院」というらしい。

宗祖が弘法大師だが東寺とはまた別の宗派らしい…
真言宗については全然分からない(>_<)。。




ただ入ってすぐのところに金堂があり、密教寺院らしかった。
が、見たいのは障壁画なので今回はそこには入らなかった。



明王殿という建物があり、
そこに密教らしく不動明王が本尊として祀られていたので
なるほどと納得した(内部の写真撮影は不可)。


「歴史探偵」を見ていたら、
豊臣秀吉が智積院に功績があったかのように思ったが、
実は現在地の東山七条に智積院があるのは、
徳川家康が中興の祖・玄侑(げんゆう)という僧正に
土地を寄進したからであった。
宝物館には家康の朱印状がいくつか展示されていたのも
そのつながりだからだろう。
秀吉は智積院というより、長谷川等伯に障壁画を描かせた、
秀吉が等伯を重用したのであった。




長谷川等伯といえば国宝「松林図屏風」(トーハク)が
もっとも有名かもしれない。
日本的な侘びさびの最高峰と言われていると思う。
でもあれは未完成だという話もある。下絵だという説もある。
自分も下絵説を支持しているが(←何様💦)、
水墨画としての筆さばきが見事である事には変わりなく、
単色でありながら空気感も感じさせる傑作であることにも変わりはない。


長谷川等伯は桃山時代を代表する画家であり、
「歴史探偵」で触れられていた通り、
能登の出身であり入洛して利休らと交流して人脈を広げ、
当時(いやずっと)主流であった狩野派絵師に実力で割って入り、
秀吉に認められ、
秀吉の子、早世した鶴松の菩提寺に障壁画を描くチャンスを得た。
その菩提寺が現在の智積院である。
智積院の障壁画は秀吉に認められた等伯の出世作であり、
代表作でもある。
桃山時代の華麗な画風と独自の個性が溢れ出ている。





智積院の境内はとにかく広く、名勝庭園(有料)や
あじさい園などがあるようだが、今回は宝物館のみ行って来た。
宝物館は真新しい建物でこの4月に開館したばかりだそうだ。
新しいからとてもきれいで立派な作りで、
外観を見ればかなり広そうに見えたが、展示品はあまり多くない。
(靴を脱いで裸足で入る)
料金は500円。




長谷川等伯とその一派による障壁画は6面で、常設展示されており、
それが宝物館のほとんどを占める。
すべて国宝でそれだけで壮観だった。





展示はまず家康の朱印状から始まって
密教寺院らしい曼荼羅図(両界曼荼羅、金剛界曼荼羅図)の
2面が展示されている特別展示室と、
そして国宝の障壁画が展示されている壁画展示室があった。
奥には再現展示室がある。

「昭和43年(1968年)まで障壁画が収められていた
大書院の上段の間が再現されており、
障壁画が本来どのような形で収められていたかも分かります。」

ということだそうだ。
(美術展ナビより)
https://artexhibition.jp/topics/news/20230510-AEJ1374147/

NHK「歴史探偵」で取り上げられていたのはこの再現展示室で、
この再現展示室の展示からもとの襖絵をCGで蘇らせる試みだった。


「歴史探偵」でも触れられていたように、
等伯(とその一派による)障壁画は火事による焼損や
盗難などを幾度も繰り返され、修正が加えられたりして、
切り貼りもされていたという。
展示されている障壁画も一部欠損している部分があった。
また展示の説明では現在よりもっと大きなものだったらしいし、
もとはすべて襖絵だったものを壁画のように仕立て直したものということだ。
大きさが揃っていないのもそのせいだろう。

それでも暗い照明の中、浮かび上がる障壁画は迫力があり、
細部まで見入ってしまった。

展示されているのは
「桜図」「楓図」「松に秋草図」「松に黄蜀葵図」「雪松図」
そして復元された「松に立葵図」という6作品である。



始めに展示されている「桜図」は等伯の息子・久蔵によるものとされている。
桜の描写に胡粉が使われ、立体的に浮き出ていて、レリーフのようだ。
この時代にこのような画法があったのかと驚くとともに、
派手好きの秀吉好みの華麗な作品でもあった。



「楓図」は等伯作とされる。
楓の大きな木だけでなく絵の下部には秋の花が描かれており、
それが画面を効果的に彩っていて美しい。
図版では何度も見たことがあったので、
実物をやっと見られて何とも感激した。
図版で見ていた時は、楓の木の左側に少し見えている川(?)、
或いは水(?)のようなものが気になっていた。
それが絵のアクセントになっているのは見て取れた。

実物を見ると、雲の合間に川の流れが少し見えている、
というような描写だった。
川の水の蒼い色が図版より鮮明で美しかった。
絵を見るという快楽を改めて感じ取れた。


「歴史探偵」ではこの絵と狩野永徳の国宝「檜図屏風」を比べて
永徳を何となくdisっていたが、
永徳の大胆さはそれはそれで迫力があるのに…。
等伯の「楓図」は木だけを描くのではなく、草花も散らされていて
より華麗で装飾的である。
狩野派に負けじと独自の個性を追求したのだろう。
桃山時代ならではの華麗さが心地よかった。




「松に秋草図」
これも松だけを描くのではなく、
金地の画面全体に秋の草花が華麗に描かれ画面を彩っている。
松の木や岩の描写は様式的で狩野派に学んだもののようだが、
それだけに留まらない桃山時代ならではの華やかな作品だった。





智積院の境内は広々としていて、行ってみて初めてその広さを知って実感した。
境内そのものは無料で、庭のような所に石が置かれていたりして
木々も茂っていてよい環境だ。
ただ建物(講堂?)に入る時には料金がいる。




七条にあるので観光客にはあまり知られていないが、
等伯の障壁画を見るだけでも見応えがある。
すべて国宝で常設展示されているし、
そして庭園を見なかったのでまた行きたい、
次回に行く時はゆっくり庭園を見てみたいと思った。




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