伊佐子のPetit Diary

何についても何の素養もない伊佐子の手前勝手な言いたい放題

シネマ歌舞伎・桜姫東文章

2022年04月21日 | 演劇・ミュージカル
京都新聞に2021年だったか、歌舞伎座で公演があり、
チケットが即日完売したという、
片岡仁左衛門・坂東玉三郎共演の「桜姫東文章」のシネマ歌舞伎が
上映されているという記事が掲載された。


「桜姫東文章」は36年前、仁左衛門さんが片岡孝夫時代に演じられ、
玉三郎とともに人気を決定づけた演目だ。


玉三郎さんは長大な通し狂言で体力がいるから、もう演じることはないだろう、
というようなことを語っておられたような気がするので、
36年ぶりに「桜姫」が演じられると知り、
驚いたと同時に大いにうれしかった。

東京の歌舞伎座での公演は大評判だったようで、噂は関西にも届いていた。
仁左衛門と玉三郎の共演とあれば(仁左・玉コンビだし)、評判にもなるはず。
ぜひとも京都の南座でも演じてほしいと思っていたが、
叶わない夢だった。



ところが今回、シネマ歌舞伎として映画館で上・下に分けて公開されるという。
これはぜひとも見なければと思い、新京極の映画館へ出かけた。


「桜姫東文章」はずいぶん昔、ビデオの時代にテレビで放映され、
それを録画して持っている。


濡れ場がひどく官能的で、何度も見たい魔力があった。
これぞ歌舞伎という、美しいながらも何とも言えない退廃美が漂い、
衝撃を受けた。
孝・玉時代のコンビの代名詞的な演目だ。

もう二度と見られないと思っていたのに、
それが今や二人とも人間国宝になった今、再び演じてくれるとは。
評判にならないわけがない。


上・下に分けての上映なので、今回見たのは前半の2時間ほど。




桜姫東文章 上の巻 (本編:124分)

鶴屋南北作の退廃的な美の世界を描いた物語を、
片岡仁左衛門と坂東玉三郎が36年ぶりに同じ配役で演じた歌舞伎公演を映像化。

キャスト
片岡仁左衛門、中村鴈治郎、中村錦之助、中村福之助、
片岡千之助、片岡松之助、上村吉弥、中村歌六、坂東玉三郎



70歳を超えた玉三郎が稚児の白菊丸を演じるのはどうかと思ったが、
シネマ歌舞伎でアップになっても違和感はなかった。
さすが当代の美貌の役者だけある。


「四谷怪談」で有名な鶴屋南北の原作は江戸後期の退廃的な雰囲気があり、
話がどんどん悲惨な方向に転がり堕ちてゆく。

が、それが避けられない悲劇の展開として戯曲の魅力になっている。

話はとても複雑で長大だが、二人の演技が目を見張るばかりで、
瞬きするのも惜しいくらいだ。


仁左衛門の高僧・清玄の品のある身のこなしと、
二役で演じるならず者の権助のやさぐれた感じの演じ分けはさすがに見もので、
権助のふるまい(こなし)に目が釘付けになってしまう。

玉三郎も、しぐさや身のこなし、仁左衛門との息の合った演技に
贅沢なため息が出てくる。

特に権助との、かつて自分を犯したならず者に身を任せる濡れ場の場面は
36年前と変わらず衝撃的で、官能的で、見入ってしまった。

これぞ、仁左・玉コンビの最大の見せ場。
人間国宝同士の、今、日本で見られる最高峰の場面だと思う。




後半ではならず者の権助に従う桜姫が女郎に身を落としてゆく
波乱万丈の展開になってゆくが、
今回上映された上の巻では、
清玄と桜姫の夜の歯がゆいすれ違いの場面で終わっていた。


29日から下の巻が公開される。
それも、ぜひ見に行きたいと思う。




それにしても、歌舞伎は今、初音ミクと共演したり、
鬼滅の刃を題材にしたり、スーパー歌舞伎はもとより、
様々な試みを試して新たな客層を掘り起こそうとしているが、
この仁左衛門・玉三郎を見ていると、
彼らが場に出るだけで醸し出される何とも言えない華があるのは
疑いもなく、否応なしに目が吸い寄せられるのである。

それがスター性であり、華であり、役者としての存在感だろう。




映画のスクリーンで見ているとよく分からないが、
実際の舞台で玉三郎なり、仁左衛門が登場して来るだけで、
その場がさっと華やぎ、彼らに目が自然と釘付けになってしまう。
出て来るだけで、その場にいるだけで絵になるというか。


その時代に合った新しい試みも必要かもしれないが、
今の歌舞伎に観客が本当に求めているのは、このような、
一目で観客をとりこにする、存在感のある役者なのではないか、
そんなことを考えたのである。




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