伊佐子のPetit Diary

何についても何の素養もない伊佐子の手前勝手な言いたい放題

生田耕作ダンディズム

2021年09月28日 | 本・書評
毎週月曜日の京都新聞に
「生田耕作ダンディズム」という記事が長期連載されている。

あまりにも長い連載なので、一冊の単行本が出来るくらいの分量の
記事である。

毎週、興味深く読んでいる。
京都生まれで京都大学の教授であったから、京都新聞で連載しているのだろう。




生田耕作(1924―1994)という人の名前は、
かつて澁澤龍彦を読み漁っていた時に、
何となく聞いたことがあるという程度だった。

澁澤がらみで名を知ったのだと思う。
澁澤が多分、生田耕作を評価していたのだろう。




京都新聞の連載によると
生田耕作は京都大学教授でフランス文学の学者で、
翻訳家でもあった。


妻子がいたが、彼らを捨て、
パートナーとサバト館と称する自費出版の社を立ち上げ、
そこから出版された「バイロス画集」が
猥褻容疑で摘発されるという事件になる。

それを契機に京都大学と対立、教授の職を辞する。


かなり激しい気性の人のようだ。




自分は講談社文庫で「眼球譚・マダムエドワルダ」を持っている。

「エロティシズム」という著書で有名なジョルジュ・バタイユの作品である。
この本を翻訳したのが生田耕作だった。
(当時の値段で260円!)


表紙はハンス・ベルメールの絵。センスが良い



バタイユは当時、澁澤龍彦が強力に薦めていた作家である。
自分は澁澤に心酔していたので、それもあって買ったものと思える。

自分が生田耕作について知っていたのは、それくらいだけなのだが…。
ただ知らないことを新たに知るのは、いつも興味深い。





生田耕作はそのほか、ピエール・ド・マンディアルグの「オートバイ」や
アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」などを翻訳していたという。

仏文学のいわゆる異端派、
或いは最先端の作家を紹介することに努めていたと思われる。




マダム・エドワルダ (角川文庫)
ジョルジュ・バタイユ



「眼球譚」も「マダム・エドワルダ」も
強烈にエロティック、というより猥雑というか、猥褻な本で、
いやらしい描写が随所に出て来ていた…

内容はもう忘れてしまっているが、
観念的でもあり、難解だった覚えはある。




三島の作品論が巻末に付されており、生田耕作の翻訳を激賞している。
三島も生田耕作を認めていたようだ。

そのような、当時の文化圏に生田はいた。


が、生田は孤高の道を選び、東京の出版業界から距離を置き、
関西で活動したという。



澁澤龍彦は自分の編集した本に生田訳のフランス異端文学を採用するなど、
生田耕作を高く評価していたはず。


京都新聞の連載には澁澤との交流について一章を割いている。




が、澁澤が亡くなった時、
生田耕作は澁澤の創作作品である遺作「高丘親王航海記」を幼稚であるとして、
ボロカスに批判したという。

生田耕作の孤高は、盟友と思われた澁澤にさえも牙をむいたのだという。




けれども生田が澁澤の創作作品を批判したのは分からないでもない。


澁澤龍彦といえば翻訳家として、それよりも名エッセイストとして、
当時は花形であった。


澁澤はフランス異端文学の紹介者ではあったが、
あの当時、彼の著作は書店に平積みされるほど人気があった。

思えば時代の寵児であったのだ。
当時、自分はその澁澤龍彦にのめり込んだ。
(渋沢栄一は澁澤の遠縁にあたる)



が、自分は澁澤を一度(生前)、自分の中で生意気にも完全否定したことがある。
閉ざされたサークルの中で充足しているのみ、と思われたからだ。

だから生田が批判した「高丘親王航海記」も読んではいない。



澁澤はエッセイストとしては秀でているが、
澁澤の創作作品、と聞いてもピンとは来なかったからだ。


生田耕作がかつての盟友であり高く評価していた澁澤を批判した真意は
分からないが、京都新聞では、
ジャーナリズムに迎合して楽な創作に走ったと批判した、と書いてあった。


生田耕作はあくまで翻訳家としての矜持で自身を通したのだろう。




↓生田耕作の公式サイト

https://atelier-sabattoyakata.info/category/kosaku-ikuta-dandyism/
アトリエ・サバト館
京都新聞長期連載『生田耕作 ダンディズム』


https://atelier-sabattoyakata.info/2021/06/07/16-%e6%be%81%e6%be%a4%e9%be%8d%e5%bd%a6%e6%89%b9%e5%88%a4/
#16 澁澤龍彦批判
『高丘親王航海記』



↓生田耕作で検索していたら出て来た
これはすごい



血と薔薇コレクション(1) (河出文庫)
澁澤龍彦
1,320円





血と薔薇コレクション(2) (河出文庫)
澁澤龍彦
1,320円




血と薔薇コレクション(3) (河出文庫)
澁澤龍彦
1,320円



文庫で出ていたとはΣ(゚Д゚)

澁澤龍彦が責任編集をして発行された雑誌(アンソロジー)だと思うが
編集に凝りすぎて3冊出版されたところで頓挫したらしい幻の本だ─

(あらかじめ3冊のみの発行だったかもしれないが、
3冊のみの雑誌なんて聞いたことがないから)

のちに復刻されたが、その時は高すぎて買わなかった。
この雑誌に生田耕作訳のフランス文学が3冊ともに掲載されている。



↓血と薔薇コレクション(1)
ムッシュー・ニコラ 
レチフ・ド・ラ・ブルトンヌーむきだしの男ごころ(生田耕作訳)

血と薔薇コレクション(3)
賢女テレーズ(生田耕作訳)



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