s02 シチリアのタオルミーナ
シチリア島の東北端にあるタオルミーナは、海岸から山の斜面へと広がった小さくて美しい街である。海の向こうには、ヨーロパではウェスウィウス火山と並ぶ著名な火山である。冬季には白い雪を頂いて特に美しい。ギリシア―ローマ劇場が海から立ち上がった断崖の上にあり、そこからの景観は殊さらに優れている。夜にもなると、この古代の遺跡と風景を愛でる観光客で繁華街は賑わう。
1,エトナ山は霧の向こうに 晴れた日には、青いエオニア海と白雪を頂くエトナ山が見える。それを背景とするこの舞台は、神々が舞い降りる場にふさわしい。だが神々は死んで、すでに久しい。 折も3月、みどりが劇場を彩る。
2, 神と人の劇場 俳優たちは仮面(ペルソナ)をつけて演技をした。ペルソナにはそれぞれ役割が定められている。ペルソナには個性がある。それが、個人(person) の存在、個人主義思想や人間主義の思想の源泉になったのだといわれる。異論もある。だが、古代ギリシアが個人主義にもとづく人間主義思想の発祥地であったことは否定できない、と私は思うのだが。この日早朝、劇場は霧に包まれていた。
3、ペルソナたちの舞台 劇のクライマックス、人間たちの手に負えない展開になると、ある仕掛けによって神が降りてきて解決させる(deus ex machina =機械による神)・・・ということになる。この図には見えないが、背景の白いエトナ山、そしてこの怪奇な岩山を背景にしてペルソナたちは、神々と人との交流する幻想と精神的高揚の世界に観客を誘い込んだに違いない。
4,午前中は静かな商店街も 夕方からは観光客で溢れる。そのような街の、飾り付けも魅力的な土産店のひとつ。