The Copland Collection
Orchstral Works
1948 - 1971
The Red Ponny
Music for A Great City
Down a Country Lane
Dance Panels
Three Latin-American
Sketches
(SONY Classical)
アメリカのダンス・シーンを語る際に、マーサ・グラハム (Martha Graham. 1894 - 1991) の名前を逸することはできますまい。
簡単に述べれば、イサドラ・ダンカン(Isadora Duncan. 1877 - 1927) が切り開いたアメリカでの芸術としてのダンスを、総合芸術へと高めたのがグラハムだったわけです。
いわば「第一世代」のダンカンに対して、「第二世代」のグラハム、そして「第三世代」のグラハムの弟子たち(例えば、マース・カニンハム)、という構図になる。
そのようなアメリカのダンス・シーンに音楽を提供した、最も有名な作曲家が今回取り上げるアーロン・コープランド (1900 - 1990)です。
彼は生涯にいくつかのバレエ音楽を作っていますが、『ビリー・ザ・キッド』と『アパラチアの春』が、前述したグラハムの振り付けです。
さて『ダンス・パネル』"Dance Panels"ですが、1959年作曲(62年改訂)のコープランド最後のバレエ作品です。
そのバレエの内容は、ということになると説明のしようがない。
というのは、資料がないということではなく、非常に抽象的なダンスだからですね。
ここでは、アメリカのダンスも次の世代(「第三世代」)に移ってきている。
今までのダンスが、総合芸術を目指してはいたが、ストーリー性のあるものだったのに対して、新しい世代は、体の動きを使って抽象的な概念までも表そうとする。
ですから、バレエ『ダンス・パネル』の内容は説明できないのね。
この動きの分り易い例としては、ジョン・ケージと組んだマース・カニンガムがいます(音楽でいえば、ジョン・ケージの『ソロイストと集団のための16のダンス』のように、「怒り」「ユーモア」「悲しみ」といったタイトルがつく)。
話をコープランドの音楽に戻しましょう。
『ダンス・パネル』は全7曲からなっています。しかし、個々の曲の題名は、情景を表すものではなく、イントロダクション、スケルツァンドなどと音楽の内容を示すものしかついていません(つまり、情景音楽ですらないのね)。そういって点からすれば、ケージの『……16のダンス』よりも、内容がつかみにくい。
ですから、バレエ音楽ということを忘れて、普通の7楽章の組曲を聴くつもりになった方がいい。
そういう意識で聴くと、この「組曲」はコープランドの作品の中でも、出来がいいのじゃないかしら。
どうしても、コープランドの音楽というと、『赤い子馬』などの映画音楽は別にしても、『アパラチアの春』『ビリー・ザ・キッド』『エル・サロン・メヒコ』『3つのラテン・アメリカのスケッチ』と、情景音楽的なものを多く作ってきたようなイメージが強い。
けれども、ここでコープランドが見せているのは、『ショート・シンフォニイ(第2交響曲)』『第3交響曲』の延長線上にある、シンフォニストとしての相貌です。
オーケストレーションが巧い作曲家であることが、まずはっきりと分ります。しかも、そのオーケストレーションに独自性がある。クールでクリアな音像を示し、しかも適度な叙情性もある(特に、第4曲 "Pas de trois - Lent" の叙情性のある音楽はお勧め)。
何より、音楽が下品(げび)ていないとこが、小生は好きですね。
このような上質なアメリカ音楽の流れが、おそらくは作曲家としてのレナード・バーンスタイン(特に初期)にもつながっていると思われます。
ちなみに、バーンスタインはジュリアード音楽院で、コープランドに作曲を学んでいます。
今みたいに力でごり押しするような国になる前、身体はでかいが人の良い、気前の良い国だったアメリカの音楽だといえるでしょう(バーンスタインには、ヴェトナム戦争の影が差してくるものね)。
♪
今日のJuncoさんのお勧めは、
William Grant Still: Symphony No. 1, 'Afro-American'
です。
例によって、珍しい曲が続々登場する
コメント欄をご覧ください。
Orchstral Works
1948 - 1971
The Red Ponny
Music for A Great City
Down a Country Lane
Dance Panels
Three Latin-American
Sketches
(SONY Classical)
アメリカのダンス・シーンを語る際に、マーサ・グラハム (Martha Graham. 1894 - 1991) の名前を逸することはできますまい。
簡単に述べれば、イサドラ・ダンカン(Isadora Duncan. 1877 - 1927) が切り開いたアメリカでの芸術としてのダンスを、総合芸術へと高めたのがグラハムだったわけです。
いわば「第一世代」のダンカンに対して、「第二世代」のグラハム、そして「第三世代」のグラハムの弟子たち(例えば、マース・カニンハム)、という構図になる。
そのようなアメリカのダンス・シーンに音楽を提供した、最も有名な作曲家が今回取り上げるアーロン・コープランド (1900 - 1990)です。
彼は生涯にいくつかのバレエ音楽を作っていますが、『ビリー・ザ・キッド』と『アパラチアの春』が、前述したグラハムの振り付けです。
さて『ダンス・パネル』"Dance Panels"ですが、1959年作曲(62年改訂)のコープランド最後のバレエ作品です。
そのバレエの内容は、ということになると説明のしようがない。
というのは、資料がないということではなく、非常に抽象的なダンスだからですね。
ここでは、アメリカのダンスも次の世代(「第三世代」)に移ってきている。
今までのダンスが、総合芸術を目指してはいたが、ストーリー性のあるものだったのに対して、新しい世代は、体の動きを使って抽象的な概念までも表そうとする。
ですから、バレエ『ダンス・パネル』の内容は説明できないのね。
この動きの分り易い例としては、ジョン・ケージと組んだマース・カニンガムがいます(音楽でいえば、ジョン・ケージの『ソロイストと集団のための16のダンス』のように、「怒り」「ユーモア」「悲しみ」といったタイトルがつく)。
話をコープランドの音楽に戻しましょう。
『ダンス・パネル』は全7曲からなっています。しかし、個々の曲の題名は、情景を表すものではなく、イントロダクション、スケルツァンドなどと音楽の内容を示すものしかついていません(つまり、情景音楽ですらないのね)。そういって点からすれば、ケージの『……16のダンス』よりも、内容がつかみにくい。
ですから、バレエ音楽ということを忘れて、普通の7楽章の組曲を聴くつもりになった方がいい。
そういう意識で聴くと、この「組曲」はコープランドの作品の中でも、出来がいいのじゃないかしら。
どうしても、コープランドの音楽というと、『赤い子馬』などの映画音楽は別にしても、『アパラチアの春』『ビリー・ザ・キッド』『エル・サロン・メヒコ』『3つのラテン・アメリカのスケッチ』と、情景音楽的なものを多く作ってきたようなイメージが強い。
けれども、ここでコープランドが見せているのは、『ショート・シンフォニイ(第2交響曲)』『第3交響曲』の延長線上にある、シンフォニストとしての相貌です。
オーケストレーションが巧い作曲家であることが、まずはっきりと分ります。しかも、そのオーケストレーションに独自性がある。クールでクリアな音像を示し、しかも適度な叙情性もある(特に、第4曲 "Pas de trois - Lent" の叙情性のある音楽はお勧め)。
何より、音楽が下品(げび)ていないとこが、小生は好きですね。
このような上質なアメリカ音楽の流れが、おそらくは作曲家としてのレナード・バーンスタイン(特に初期)にもつながっていると思われます。
ちなみに、バーンスタインはジュリアード音楽院で、コープランドに作曲を学んでいます。
今みたいに力でごり押しするような国になる前、身体はでかいが人の良い、気前の良い国だったアメリカの音楽だといえるでしょう(バーンスタインには、ヴェトナム戦争の影が差してくるものね)。
♪
今日のJuncoさんのお勧めは、
William Grant Still: Symphony No. 1, 'Afro-American'
です。
例によって、珍しい曲が続々登場する
コメント欄をご覧ください。
コープランドの曲は吹奏楽でもよく取り上げられているので、日本でも有名ですね。それとアメリカ映画音楽に大きな影響を与えた人だと思います。ほとんどのアメリカ映画音楽って彼の作品の延長みたいですから。
この人はこのまえ紹介されていた西海岸側のマッケイとは違ったいかにもの東のエスタブリッシュメントを感じさせます。ただ私の好みとしては同年代に同じジュリアードで活躍したW・シューマンの方がお好みです。
でもひねくれ者だから今日はWilliam Grant Still の Symphony No. 1, 'Afro-American'お薦めします。(^o^)アフリカものが話題になりそうなので、ちょっと前振りに。
こんな小娘にアフリカモノなんてわかるわけないじゃないですか。でも一応調べましたので、ご報告を。ただ曲が聴けるかどうかはわかりません。(^_^;)
1.Enoch Sontonga(南アフリカ)1873-1905 <N'Kosi sikelel' i Afrika>
2.ケヴィン・ヴォラン(南アフリカ)
3.Myriam Makeba(南アフリカ)
4.Thomas Rajna(南アフリカ)1928- <ハープ協奏曲南>
5.Niel van der Watt(南アフリカ) b.1962 <I am the Voice of Africa Operator>
6.Halim El-Dabh(エジプト) <Mekta' in the art of kita'>
7.Charles Camilleri(アルジェリア)1931~ <Schraab>
8.Gyimah Labi (ガーナ)1950~ <16 Earthbeats op.22>
9.Akin Euba(ナイジェリア)<Scenes from traditional life>
10.Ayo Bankole(ナイジェリア)<Sonata No.2>
11.Ratianarivo(マダガスカル)<Ny Sakaiza Fahazaza(=Childhood)>
ほとんどのアメリカ映画音楽って彼の作品の延長みたいですから。この人はこのまえ紹介されていた西海岸側のマッケイとは違ったいかにもの東のエスタブリッシュメントを感じさせます。
ただ私の好みとしては同年代に同じジュリアードで活躍したW・シューマンの方がお好みです。
でもひねくれ者だから今日はWilliam Grant Still の Symphony No. 1, 'Afro-American'お薦めします。(^o^)アフリカものが話題になりそうなので、ちょっと前振りに。
こんな小娘にアフリカモノなんてわかるわけないじゃないですか。でも一応調べましたので、ご報告を。ただ曲が聴けるかどうかはわかりません。(^_^;)
1.Enoch Sontonga(南アフリカ)1873-1905 <N'Kosi sikelel' i Afrika>
2.ケヴィン・ヴォラン(南アフリカ)
3.Myriam Makeba(南アフリカ)
4.Thomas Rajna(南アフリカ)1928- <ハープ協奏曲南>
5.Niel van der Watt(南アフリカ) b.1962 <I am the Voice of Africa Operator>
6.Halim El-Dabh(エジプト) <Mekta' in the art of kita'>
7.Charles Camilleri(アルジェリア)1931~ <Schraab>
8.Gyimah Labi (ガーナ)1950~ <16 Earthbeats op.22>
9.Akin Euba(ナイジェリア)<Scenes from traditional life>
10.Ayo Bankole(ナイジェリア)<Sonata No.2>
11.Ratianarivo(マダガスカル)<Ny Sakaiza Fahazaza(=Childhood)>
あれっ、夏休みじゃあなかったんですか。
17日過ぎにまとめて「宿題」を
してもらうのを
楽しみにしてたんですけどね(笑)。
さて、早速調べていただき、
ありがとうございました。
だけど、小生に音源が入手できるかなあ?
あと、2~3曲目処が立てば
小特集(10回以内)が組めますね。
その際は、Juncoさんにも、一回分位は
書いてもらおうかしら(コメントじゃあ
なくて、最初から本文をね)。
では、また。