一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

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マーラーのカンタータ『嘆きの歌』を聴く。

2007-09-18 04:19:29 | CD Review

MAHLER
DAS KLANGENDE LIED
MICHAEL TILSON THOMAS
SAN FRANCISCO SYMPHONY & CHORUS
SHAGUCH DEYOUNG
MOSER LEIFERKUS
(RCA BVCC-760)


ドイツ・ロマン主義の定石に則った作品です。

音楽的には、1878年(マーラーが17歳のとき)に手掛け、1880年に第1稿が出来上がりました(ただし、全曲初演は、没後23年も経った1934年のことだそうです)。
ですから、音響的には、まだまだマーラーの独自性があまり発揮されず、むしろヴァーグナーの影響を強く感じさせるものとなっています。

そんな後期ロマン派の典型とも言える音楽の題材となっているのが、グリム兄弟の民話集にある「歌う骨」(ブルーノ・ワルターが最初に指摘したとのこと)。
内容を簡単に述べると、
「森で赤い花を探してきた者を王女と結婚させると言われ、兄弟は森に入る。弟がその花を探しあてるが兄は弟を毒殺し、王女と結婚する。しかし死んだ弟の骨で作ったという笛を吟遊詩人が吹き、笛は悲しい物語を歌う。」(『クラシック音楽作品名辞典』より)
といったもの。

CD解説書で、最後の部分を詳しく見ると、
「彼(吟遊詩人)が現れる。彼が吹く笛は、再び忌まわしい物語を歌う。今や王となった兄が、思わず笛を取り上げて口にあてると、今度は自分の唇から、われとわが身を呪う言葉が奏でられてきた。
『ああ、兄さんだ、いとしい兄さんだ。ぼくを殺したのは貴方だった。貴方は今、ぼくの真白な骨でできた笛を吹いているんだ』
女王は気を失って床に倒れ臥し、客人は恐怖とともに逃げ去り、城は崩れ廃墟と化す。」
となります。

小生が最も不思議に思うのは、なぜ若き日のマーラーが、このような題材を選んだかということ。
確かに、グリム兄弟によって発見されたドイツの民話には、残酷なもの、恐ろしいものが数多あります。それがロマン主義者たちの興味関心を惹いた。
マーラーも、その例外ではなかった、ということでしょうが、それだけでは説明したことにはならない。

どうも、そこには「超自我」というか「良心」というか、心の深くにある「罪悪感」のようなものが感じられるのですが。
マーラーの生育歴に詳しい方は、どのようにお考えでしょうか。

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2 コメント

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ふむふむ (Junco)
2007-09-18 10:48:11
人は誰でも口が裂けても言えない秘密の一つや二つはあるそうですなぁ。主さまもそうじゃろうぉ(^w^)

マーラーのことはよく知らないですけど、ゲージュツ家ってのはいつの時代でもちょいとグロいものをさわりたがるんじゃないかなぁ。

私なんかは仕事柄グロなことが多いから麻痺してるんでしょうけど、普通の人にはある種の香辛料かもしれませんねぇ。(^o^)

え?私の秘密は毎日髭剃ってるんだろうって?(/#-_-)/~┻┻
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神話・伝説の根元にあるもの (一風斎)
2007-09-20 20:13:42
まあ、ごく日常的な「秘密」ならいいですけど、
この曲のように「兄弟殺し」となると
怖いものがありますね。

神話や伝説には、
「兄弟殺し」や「父親殺し」
なんてのがゴロゴロしているから、
人間の根ッ子のところには、
そういってドス黒い感情が
あるのかもしれない。

キリスト教の「原罪」なんていうのは、
どうなのかしら。

では、また。
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