MURRAY PERAHIA
MENDELSSOHN
Sonata, Op.6
Variations serieures
Prelude & Fugue, Op.35,No.1
Rondo capriccioso
(CBS Sony 32DC5023)
メンデルスゾーンの人気はそう高くはありません。
また、作品として知られているのも、『真夏の夜の夢』や『フィンガルの洞窟』『交響曲第3番〈スコットランド〉』『交響曲第4番〈イタリア〉』などのオーケストラ作品でしょうか(ヴァイオリン協奏曲は、今でも定番なのでしょうか)。
特に、室内楽やピアノ独奏曲となると、聴く機会もあまりないようです(『無言歌集』も聴かれるのは、その一部のような気がします)。
かく申す小生も、室内楽で聴いていたのは、『ピアノ三重奏曲第1番』くらいのものでした(カザルスのチェロ "A Concert at the White House" ですな)。
室内楽曲を集中的に聴き出したのは、最近になってですから、あまり偉そうなことは言えない(その前に聴いていたのはメンデルスゾーンの宗教曲。これもなかなか良いのですが、こちらを参照してください)。
さて、メンデルスゾーンの室内楽をまとめて聴けるアルバムとしては、小生の知る限り2種類あります。
第1は、EMI の "MENDELSSOHN Musique de chambre" という5枚組のセット。
もう1つは、Brilliant の "Mendelssohn Chamber Music Complete" という10枚組のセット。
後者は、すべての室内楽曲を収録してありますので、『クラリネット・ソナタ』などという珍しい曲を聴くこともできます。しかし、メンデルスゾーンの室内楽曲をほとんど収録してある前者でも、その全貌を掴むのに支障はありません。
また、全体的な演奏の質という面では、前者の方が優れているのではないかしら(例えば『ピアノ三重奏曲第1番』は、プレヴィンのピアノ、チョン・キョンファのヴァイオリン、ポール・トルトゥリエのチェロ)。
以上のような室内楽とともに、ピアノ独奏曲もメンデルスゾーンには、興味深いものがあります。
小生、メンデルスゾーンを好んで聴くようになったのは、どの曲もこちらの胸が広がるような気がするからなのね。多少の鬱屈した気分も、吹っ飛んでいくような気がする(また、特徴として、シューベルトとともに作品に独自の「歌」がある)。
そんなところが、「深刻好み」のこの国のクラシカル音楽ファンを、今一つ惹き付けないところだと思います。
この『ピアノ・ソナタ第1番』も、その例外ではありません。
ペライアのピアノの美しい音とともに、心優しい気持になれます。
特に第1楽章のメイン・テーマは、メンデルスゾーンの歌曲や『無言歌集』のような「歌」を感じさせます。
また、一転して、第3楽章から第4楽章へ休みなしに突っ込んでいく辺りは、スピードに乗った爽快感があります。
なかなか楽しい演奏を、このCDでお聴きください。