一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

新刊、旧刊とりまぜて
読んだ本の書評をお送りいたします。
活字中毒者のアナタのためのブログです。

今日はフンメルでも聴いてみましょうか。

2007-04-29 08:29:12 | CD Review
HUMMEL
Piano Quintets
Klavierquintett
Wien
(camerata CMCD-28055)


モーツァルトについて取り扱ったら、ハチャさんに冷やかされたので、今回は、ちょっと趣向を変えてフンメル(Johan Nepomuk Hummel, 1778 - 1937) などはいかがでしょうか。

フンメルは、ご承知のようにモーツァルトに師事した作曲家で、ベートーヴェンの友人にしてライヴァル、しかもメンデルスゾーンのお師匠さん、ピアノの名手としてはショパンに影響を与えた、というのですから、この時代の音楽史のキー・パーソンのような人です。
その割には聴かれることがないのは、なぜなんでしょうか。
決して、楽曲が詰まらないからではないと思います。となると、この辺は、やはり運不運という要素が働いているのかしら(生きていた時代には、結構人気があったようですが)。

まあ、名前くらいは聞いたことのある方が多いと思いますが、楽曲の方になると、なかなか聴くこともないでしょう。そもそも、音源がそれほどありませんからね。

小生もご多分に漏れず、滅多に聴かないので、久々に耳にすると、実に清新な印象を受けます。
確かに、ライヴァルであったベートーヴェンほどの重厚さはありませんが、それだけが音楽じゃあありません。
この清新さとか、叙情性は、師匠だったモーツァルトや、また後進のシューベルトに通じるものがあるような気がします。
また、作品番号87のピアノ五重奏曲は、シューベルトのピアノ五重奏曲『鱒』と同じ楽器編制で(ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)、1802年の作品。これはシューベルトに20年先行していることになります(同じCDに収録されている作品番号74は、彼自身がピアノ七重奏曲を編曲したもの)。

形式的には、ウィ―ン古典派のものですが、この作品番号87のピアノ五重奏曲の旋律には、ところどころに「憧憬(Sehnsucht)* 」が感じられ、この辺り、ロマン主義を準備した精神動向のようなものがあったのではないかしら(演奏家の解釈もあるのかもしれませんが)。
*「ロマン主義は憧憬(Sehnsucht)として純粋であり、そしてただ憧憬としてのみ純粋である。」(カール・バルト『プロテスタントの神学』)

なお、ここでご紹介したCDの演奏は、ウィーン・ピアノ五重奏団。なお、ピアノは、浦田陽子がベーゼンドルファー・インペリアルを弾いていることをつけ加えておきましょう。