一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

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実践的物語論(18) -ストーリーづくり【その10】

2007-02-06 10:42:51 | Criticism
「臨死体験」にせよ、「都市伝説」にせよ、はたまた「水伝(『水からの伝言』というニセ科学ね。詳しくはこちらを参照)にせよ、人間のつくった広い意味での「物語」であることに変りはありません。

しかし、「物語」は「物語」として享受する分には、特に他人に/社会に迷惑をかけることもないのですが、これが「真実」や「事実」などとして信じるようになると、とんでもないことにもなりかねません。
そのようなことは、この国で、ほんの50~60年前にあったことですし、現在でも起こっていることなのですから。
これは「物語」をつくる側にとっても、自戒すべきことでしょう。

そのような「物語」を「真実」としないためには、「科学」の方法も一つの有効な手段になります。


「臨死体験」が、そうそう身近にはない体験なのに対して、多少なりとも直接体験者から話を聞ける可能性があるものに、「金縛り」とそれに伴う経験談とがあります。

科学的には「金縛り」(「睡眠麻痺」とも)とは、レム睡眠との関係が深い現象。
レム睡眠時には、脳波の持続時間が短く、眠りも浅く、筋肉はほぼ完全にゆるんでいる。つまり「身体は眠っているのに、脳は起きている」状態である。
この時点で目が覚めると、意識はあっても身体は思うようには動かない。また、レム睡眠時の「夢」を現実の出来事と思い込むこともあるといいます。

この一連の現象に伴う幻覚を「入眠-出眠時幻覚」と呼ぶことがあります。
「入眠-出眠時幻覚」の際、身体が思うように動かないという「金縛り」だけではなく、意思に反する身体の移動、他者からの身体的干渉を経験することもあるとのこと。

さて、興味深いのは、この幻覚の解釈が、文化によって異なる点です。

日本の場合には、霊的な解釈をされることが多く、魂の体外離脱だとか、恨みを持った霊による呪縛とか、の話が生まれる。
これに対して、西洋人(黄色人種に比べると、アメリカの白人には「金縛り」が起る率が低いとのデータあり)には、「エイリアンに拉致されて、身体の中をいじくられたというような体験」(いわゆる「エイリアン・アブダクション」)を語ることがあるといいます。

また、同様な体験談が、長時間の夜間ドライヴ中の、意識せざる睡眠の解釈により発生することもある(人家を離れたところを走る、アメリカの直線の多いハイウェイを想起)。
この場合は、特に夜間の長距離走行という単調な刺激(同じ姿勢を続けることも原因の一つ)によって、期せずしてレム睡眠が発生し、そこでの幻覚が「エイリアン・アブダクション」として解釈されたり、UFOの目撃談になったりすることがあるようです。

これらは、広い意味での「都市伝説」の発生にもつながります。

今まで述べてきたことに関連づければ、「入眠-出眠時幻覚」という「ストーリー」が、霊魂なり、エイリアンという原因と結びつけられて、「都市伝説」という形での「プロット」を生んだのではないでしょうか。