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⚠️ 日本の賃金「長期停滞」の元凶、中国工業化の対応を間違えた失策 202201

2022-01-01 23:06:00 | 気になる モノ・コト

日本の賃金「長期停滞」の元凶、中国工業化の対応を間違えた失策
 ダイヤモンド onlain より 220101 野口悠紀雄


⚫︎1990年代の中頃に、 成長率の顕著な屈折点
 日本の賃金が長期にわたって停滞しているが、ここからの脱出は、2022年の日本にとって最重要の課題だ。
 そのためには、なぜこのような長期停滞に陥ったかの原因を知る必要がある。
 まず、経済指標の推移を見よう。
 資料1



 図表1に示すように、日本の名目GDP(国内総生産)は1990年頃までは高い成長率で成長した。しかし、90年代中頃からはほとんど変化しなくなった。このように90年代の中頃に、成長率の顕著な屈折が見られる。

 日本の経済指標が名目値で90年代中頃以降は成長しなくなったが、これは名目GDPに限ったことではない。

 法人企業統計で見ると、企業の売上高もそうだ。売り上げに対する原価の比率もほぼ一定だ。したがって付加価値も増えない(これが、名目GDPが増えないことと対応している)。そして分配率もほとんど変わらない。

 このため、賃金の支払い額がほぼ一定の値になっているのだ。

主要国では日本だけの現象 名目GDPの増加は6%、米国は200%
 日本の名目GDPの推移を見ると、1980年から95年までに名目GDPが104%増えたが、95年から2021年までは6%増えたにすぎない。

 また1995年から2021年までは、実質成長率が名目成長率より高くなっている。
 これは、他の国には見られない特異な現象だ。

資料2

 では、他の国はどうか?

 各国の長期的な成長率を比較すると、図表2、3のとおりだ。

 1995年から2021年までの名目GDPの増加率は、アメリカ200%、ドイツ87%、イギリス163%、韓国373%であり、いずれも日本の6%よりはるかに高い。

 とりわけ、日本と似た産業構造を持つ韓国の成長率が高いことが注目される。
 そして、いずれの国でも、日本のような成長率の屈折は見られない。

⚫︎中国工業化という大きな変化 従来型の製造業は競争力を失う
 1980年代から90年代の中頃にかけて、中国の工業化が軌道に乗った。これによって、それまで先進国の中心産業だった製造業が大きな影響を受けた。
 この影響は日本だけが受けたわけではない。世界の先進国が同じように受けた。それにもかかわらず、日本だけがこの時点で成長が止まったという点が重要だ。
 それは、日本が90年代にバブルの崩壊を経験し、それによる痛手から回復できなかったからだという見方があるかもしれない。
 しかし、バブル崩壊の影響は主として金融機関に生じた。それ以外の産業は、全体として見れば大きな影響を受けていない。

 また、韓国も90年代の末にアジア経済危機によって大きな痛手を受けた。それにもかかわらず、上で見たように高率の経済成長を続けている。
 中国の工業化によって,それまでのタイプの工業製品は安い賃金で製造できるようになった。
 その当時の中国の賃金は、日本から見ればタダ同然だった。1995年の1人当たりGDPで見れば、日本が4万4210ドルなのに対して、中国はわずか603ドルだ。
 このような低賃金国と同じものを作って、競争できるはずはない。
 このため、従来型の製造業は競争力を失った。
 最初は雑貨品などの軽工業などだったが、中国の工業化の進展によって、鉄鋼業が影響を受けた。そして、家庭電化製品に影響が及んでいった。

 これに対して本来行なうべきは、ビジネスモデルを変え、付加価値の高い製品の製造に転換していくことだった。
 高くても売れるもの、品質の高いもの、競争相手がいないものに特化し、新しい分野に活路を求めていくことが必要だった。
 つまり中国と差別化を進めていくことが重要だった。

⚫︎ビジネスモデルを転換せず、 円安による安易な利益増に頼った
 ところが、日本はそうした方向転換をしなかった。そして、円安政策によって対応しようとした。
 円安とは、日本の労働者の賃金をドル表示で見て安くすることを意味する。つまり、国際的に見れば、低賃金によって生き残りを図ったことになる。
 だから、国内の賃金を一定水準に維持するだけで精一杯であり、賃金を上げることはできなくなったのだ。
 日本の賃金を上げるためには、国際的に見て競争力を持つ製造業に変えていくことが必要だったにもかかわらず、そうした努力を怠ったのだ。

⚫︎2000年頃の鉄鋼業の復活は 一時的なものでしかなかった
 以上の過程が典型的な形で現れたのが、鉄鋼業だ。
 1990年代に日本の粗鋼生産量は減り続け、高炉の閉鎖が相次いだ。
 新日本製鐵(現、日本製鉄)は遊園地事業に乗り出した。
 福岡県北九州市のテーマパーク「スペースワールド」は、八幡製鉄所の遊休地に90年4月に開業したテーマパークだ。

 ところが、その鉄鋼業が2000年頃から復活した。これは円安の効果だ。
 製鉄業の場合には、原材料のほとんどを輸入する。しかも、さほど大きな付加価値を加えているわけではない。このような産業が中国に移転するのは、歴史的な必然であったはずだ。

 日本の鉄鋼業の復活は、そうした流れに逆行するものと思えてならなかった。
 その当時言われたのは、日本の鋼板、とくに自動車用鋼板は高品質であり、他国では生産できないということだった。だから日本の鉄鋼業は競争力があるというのだ。

 確かに中国の製品に比べれば高品質のものだったのだろう。しかし、それは、中国の低賃金に対抗できるほど高い付加価値のものではなかった。このことは、その後の鉄鋼業の歴史が示している。

 20年の世界粗鋼生産量は、中国が10億5300万トンで日本は8320万トンだ。

 ただし当時は、韓国も鉄鋼業を増強させていった。これは韓国の賃金がまだ低かったことによる。

 1995年の1人当たりGDPで見れば、韓国は1万2573ドルで、中国の603ドルとは大きな差があるとはいえ、日本の4万4210ドルの4分の1程度でしかなかったのだ。

⚫︎家電製品でも同じことが起きた 「ボリュームゾーン」という安売り戦略
 家庭電化製品について事態が悪化するのは、2000年頃のことだ。

 鉄鋼とは10年以上の差があるのだが、起きたことの本質は同じだ。従来のビジネスモデルでは世界の大変化に対応できなくなったのだ。

 こうして日本は産業構造の転換が進まず、付加価値の低い産業、つまり生産性の低い産業が残ってしまった。円安によって日本の輸出が増えたが、同時に輸入も増えた。このため貿易黒字が増えることにならなかった。つまり、GDPの成長には寄与しなかった。

 この頃、経済産業省は、日本の製造業は「ボリュームゾーン」に活路を見いだすべきだとしていた。新興国用の安い製品を大量に作ることが日本の製造業の生き残る道だというのだ。

 平成8年度(1996年)の『ものづくり白書』でもそうした主張が展開された。

 どうしてこのように誤った路線をとったのか? 本来は技術革新によって付加価値の高い製品に特化していくべきだったにもかかわらず、それができなかったので、従来の生産体制の中での安売り路線を選ばざるを得なかったのだろう。

 しかし、当然のことながら、この戦略も失敗した。

 韓国は、90年代頃には賃金が低かった。したがって、中国の工業化に対しても抵抗力があった。ただし、韓国が低賃金国のままでとどまっていたわけではない。

 韓国は製品の高度化を図った。このため1人当たりの付加価値が増えた。

 2021年の1人当たりGDPは、日本が4万704ドルなのに対して韓国が3万5197ドルと、大きな差はなくなっている(日本の値が1995年より低くなっているのは円安のため)。

 OECDの予測によれば、2040年には韓国が5万9338ドルとなって、日本の5万4307ドルを上回る。
 そして、60年には、韓国は8万3300ドルとなって日本の7万7241ドルの1.08倍になる。

 こうした予測を覆すために必要なのは、20年以上続いた円安政策を放棄し、本来必要である産業構造の高度化を進めることだ。

(一橋大学名誉教授 野口悠紀雄)
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⚠️実は10種類もある!脱炭素社会の実現に欠かせない「新エネルギー」への期待と課題 202201

2022-01-01 22:06:00 | 気になる モノ・コト

実は10種類もある!脱炭素社会の実現に欠かせない「新エネルギー」への期待と課題
 @DIME  より 220101


 原油価格の高騰により、さまざまな業界に影響が広がっている。ガソリンや灯油といった燃料のほか、家庭用製品の値上げも続いており、頭を悩ませている方も多いのではないだろうか。

 そこで、本記事では原油価格高騰をはじめとするエネルギー問題を打破するために、国内で利用促進の動きが加速する「新エネルギー」について紹介する。日本が直面しているエネルギー問題や、課題解決に向けた取り組みについても解説するため、この機会にぜひ理解を深めてほしい。

⚫︎新エネルギーの定義と再生可能エネルギーとの違い
 まず、「新エネルギー」とはどのようなエネルギーのことを指すのか紹介しよう。よく似た「再生可能エネルギー」との定義の違いについてもチェックしておこう。

 新エネルギーとは非化石エネルギーのうち,普及が十分に進んでいないもののこと
新エネルギーとは,非化石エネルギーのうち,技術的には実用段階にあるものの,経済性のハードルから現状は普及が十分に進んでおらず,今後利用促進を図るべきエネルギー源のこと。
 日本では、「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法施行令(略称:新エネルギー法)」の第1条において、以下の10種類を新エネルギーと規定している。

1.バイオマス(動植物に由来する有機物)を原材料とする燃料製造
2.バイオマス(動植物に由来する有機物)熱利用
3.太陽熱利用
4.河川水などを熱源とする温度差熱利用
5.雪氷熱利用
6.バイオマス(動植物に由来する有機物)発電
7.地熱発電(バイナリー発電)
8.風力発電
9.水力発電(出力1,000kW以下)
10.太陽光発電

⚫︎再生可能エネルギーとの違いは?
 再生可能エネルギーは、原油や石油ガスを利用した化石エネルギーを除く、自然界に常に存在し繰り返し利用できるエネルギーを意味する。再生可能エネルギーの種類については、先ほど紹介した新エネルギーの10種類に、さらに大規模水力、地熱、空気熱、地中熱を加えたもの。つまり、新エネルギーは再生可能エネルギーの一部ということになる。

⚫︎新エネルギーの特徴は?メリットとデメリット
 次に、新エネルギーの特徴を紹介していく。従来のエネルギーと比較した場合のメリットとデメリットを見ていこう。

▷メリット
新エネルギーを利用する主なメリットとしては、以下の3点が挙げられる。

・環境にやさしい
化石燃料を利用しないため、発電や熱利用の際の二酸化炭素排出量が少ない。地球温暖化対策に効果的な環境にやさしいエネルギーといえる。

・資源の枯渇リスクが低い
太陽光、風力、地熱などは自然界に常に存在するもの。化石燃料を使用した発電方法と比べると、資源の枯渇リスクが低い。

・エネルギー自給率の向上
国産エネルギーである新エネルギーを積極的に活用することで、エネルギー自給率を上げることが可能。また、例えば太陽光発電用のパネルを自宅に設置すれば、家庭で使用する電力を自家発電で賄うこともできる。

▷デメリット
一方で、新エネルギーにはデメリットも多い。国内でさらに普及を進めるためには、以下の課題を解決していく必要がある。

・発電コストが高い
設備建設にかかる費用が高額になるうえに、現状の設備利用率も低い。そのため、従来のエネルギーと比べると発電コストが高くなる。

・エネルギー出力が不安定
太陽光や風力発電の場合、電力の出力量が天候や季節などの自然条件に左右されてしまいコントロールできない。需要に応じた電力を安定的に供給するのも難しくなる。

・設置できる地点が限られる
自然の力を利用した発電方法のため、風力発電であれば強く安定した風が吹く場所といったように、設備設置が可能な地点が限られてしまう。また、大量のエネルギーを集めるためには、従来のエネルギーを利用した発電所よりも膨大な面積が必要だ。

⚫︎日本のエネルギー問題の現状と未来
 なぜ今、日本で新エネルギーの普及を進めていく必要があるのか。最後に、日本が抱えるエネルギー問題の現状と未来について、理解を深めていこう。

▷日本が抱える課題とは
 日本政府が新エネルギーを含む再生可能エネルギーのさらなる供給を目指す背景には、いくつかの課題がある。世界規模での取り組みが急務とされる「地球温暖化」問題への対応と「エネルギー自給率」の問題は、とりわけ深刻な課題だ。地球温暖化問題への対応については、先ほど紹介した通り、二酸化炭素の排出量が少ない新エネルギーを利用した発電の割合を増やすことが効果的とされている。

 もう一つの大きな課題であるエネルギー自給率について、日本のエネルギー自給率は世界的に見ても低い水準となっており、その割合は2018年時点で11.8%。日本は化石燃料として使用される石油・石炭の資源に乏しく、現状そのほとんどを海外からの輸入に依存しているためだ。国内では1970年代のオイルショック以降、化石燃料への依存度を下げる動きが見られ、2010年にはエネルギー自給率が20.3%まで上昇した。しかし、2011年の東日本大震災の影響により国内の原子力発電所が停止したため、火力発電量は再び増加し、現在の水準に至っている。

⚫︎脱炭素社会実現に向けた取り組み
 地球温暖化対策やエネルギー自給率向上のために日本が目指すのは「脱炭素社会」の実現。政府は,この目標達成のために「3E+S」と呼ばれるエネルギー政策の基本方針を定めている。この方針は安全性(Safety)を確保したうえで,エネルギー自給率(EnergySecurity)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)の調和を目指す考え方だ。
 再生可能エネルギーの活用は、なかでも日本が特に力を入れている分野。再エネが占める電力比率は、2019年時点で約18%と決して高くはないものの、発電設備容量に関しては世界第6位、さらに太陽光発電導入量は世界第3位となっている。

文/oki
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「老化細胞除去ワクチン」で加齢関連疾患の老化形質が改善 順天堂大学 202201

2022-01-01 21:46:00 | 健康関連

「老化細胞除去ワクチン」で加齢関連疾患の老化形質が改善 順天堂大学
大学ジャーナルオンライン編集部 より 220101

 順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学の南野徹教授らの研究グループが、老化細胞除去ワクチンの開発に成功した。

 本グループではこれまでに,加齢や肥満などの代謝ストレスによって組織に老化細胞(染色体に傷が入り細胞分裂を停止した細胞)が蓄積し,慢性炎症が惹起されることが,生活習慣病やアルツハイマー病などの加齢関連疾患の発症や進展に関与することを明らかとしてきた。
 蓄積した老化細胞を選択的に除去(セノリシス)すれば、加齢関連疾患における病的な老化形質を改善しうることの報告があるが、副作用なく老化細胞を除去する方法は開発されていなかった。

 今回の研究では、老化細胞に特異的に発現する老化抗原としてGPNMBを同定した。
 遺伝子改変モデルマウスにおいてGPNMB陽性老化細胞の選択的除去を行ったところ、肥満に伴う糖代謝異常や動脈硬化の改善が認められたため、次に、GPNMBを標的とした老化細胞除去ワクチンの開発に取り組んだ。
 接種するとGPNMBに対する抗体価が有意に増加し、誘導される抗体による免疫反応で老化細胞が選択的に除去(セノリシス)できるワクチンをデザインし、効果を検討したところ、各モデルマウスで老化細胞の除去と慢性炎症の改善が認められた。肥満マウスでは糖代謝異常や動脈硬化の改善、高齢マウスでは加齢に伴うフレイル(身体機能低下)の進行抑制、早老症モデルマウスでは寿命の延長効果が確認されたとしている。

 老化細胞除去ワクチンは、これまでの老化細胞除去薬よりも副作用が少なく、効果の持続時間も長い。本研究で糖尿病や動脈硬化、フレイルに対する改善効果や早老症に対する寿命延長効果を確認したことで、今後、様々な加齢関連疾患への新たな治療法として、老化抗原を標的とした老化細胞除去ワクチンのヒトへの臨床応用が期待される。


⚫︎論文情報: 【Nature Aging】Senolytic vaccination improves normal and pathological age-related phenotypes and increases lifespan in progeroid mice
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⚠️ 「日本勢はやられっぱなし」アマゾンに謎の中国メーカーが大量発生する本当の理由 202201

2022-01-01 20:33:00 | 気になる モノ・コト

「日本勢はやられっぱなし」アマゾンに謎の中国メーカーが大量発生する本当の理由
  プレジデント onlain より 220101 田中 謙伍


 アマゾンやヤフー、楽天などのネット通販サイトで、中国企業の存在感が高まっている。EC事業のコンサルティング会社GROOVE代表の田中謙伍さんは「日本のモノづくりは真面目でレベルも高いが、商慣行が足を引っ張っている。その結果、中国企業が国内市場でも台頭している」という――。

⚫︎日本で起きているのは中国からの「逆・越境EC」
 自宅のパソコンやスマホからネットの通販サイトで商品を購入する人は多い。こうした「eコマース」(電子商取引、以下「EC」)はもはや日常風景になっている。

 企業側の中には、海外向けに販売する「越境EC」も盛んだ。
だが、実際に日本で起きているのは中国からの「逆・越境EC」だ。
 Amazonやヤフーショッピング、楽天市場などのサイトに、中国人が運営するEC店舗が増えているのだ。アマゾンジャパンの市場シェア率をGROOVEが独自で分析したところ、金額ベースで全体の約25%を占める。
 なぜ、中国勢は日本国内のEC市場に侵食できるのか。それは、価格が安いからという単純な理由だけではなく、日本の商慣行に根本的問題があるからだ。
 このままでは、新型コロナウイルス感染症拡大による巣ごもり需要が高まる中、中国からの逆・越境ECだけが勢いを増す結果になりかねない。

 私は大阪府内にある5代続く繊維メーカーの後継ぎとして生まれた。大学を卒業してアマゾンジャパンの新卒採用1期生として入社後、数多くのメーカーの売り上げアップを実現しトップセールスとしての実績を挙げてきた。
 その後、独立。AmazonD2Cメーカーを立ち上げ年商50億円を実現した。
D2Cとは、メーカーが自ら企画・生産した商品を卸や小売店を挟まず、自社ECサイトなどを用いて直接、消費者に販売するモデルのこと。2015年には日本のモノづくりをアップデートすることをミッションにしたコンサル会社GROOVEを立ち上げ、メーカーに対し、EC市場での成功に向けた支援を行い、現在に至っている。
それだけに数多くの日本企業がECにおけるチャンスを取りこぼしている現状に危機感を覚えている。

⚫︎コロナでも開拓が進まない日本……EC化率は8%止まり
 コロナ禍でECは大きく伸びた。
経済産業省の調査によると、日本国内における2020年のEC市場規模(物販系)は12兆2333億円で前年比21.7%増となった。ここ数年のEC市場の伸び率は毎年1桁台で続いていたことを考えると急激な伸びを見せた年だった。
 また、小売業全体の商業販売額の増減率は前年比0.9%増だったことからも、消費者のEC需要が拡大していることが分かる。
 しかし日本のEC化率は前年から1.32ポイント増やしたものの、まだ8.08%しか開拓できていない。先進国の中では日本のECは遅れているのが現状なのだ。

 ここで米中両国のEC市場規模(2020年)も見ておこう。

・中国
市場規模:11兆7600億元(約208兆1520億円、前年比10.6%増)
EC化率:30.0%(前年比3.9ポイント増)
・米国
市場規模:7879億ドル(約89兆4270億円、前年比32.4%増)
EC化率:14.0%(前年比3.1ポイント増)

 米中は2桁増で市場規模を拡大させていた。日本は市場規模もEC化率も大きく差をつけられている。日本はコロナ禍による巣ごもり消費の定着で急拡大している市場をほとんど取り込めていないといえる。

⚫︎しがらみに悩むメーカー幹部
 日本国内のEC市場開拓率が低い背景には、日本独特の商慣行の構造的な「しがらみ」の問題がある。メーカーの中間流通業者への忖度がEC推進の障壁になっているケースが多い。
 現状、メーカーが消費者へ商品を届けるまでに、商社などの卸売業者や百貨店、ドラッグストアなどの小売業者が中間流通として複雑に絡み合っている。
 EC化を推進しようとしても、既存の取引先との古い付き合いや依然として高い実店舗売上比率(日本全体では約92%)もあり、中間流通業者の影響力は大きい。
 EC側で価格を大きく下げるとすぐさま小売店のバイヤーから指摘の連絡が入る。小売店も生き残りに必死だ。

 こういった状況もあり、実店舗と同様に卸売などを中継した旧来の商流構造をECでもなぞってしまうメーカーが多い。そのためEC化に向けた「戦略がない」「人材がいない」「ノウハウがない」といった課題が解決されず放置されたままとなっている。
 旧来のメーカーがこのような既存のしがらみや商習慣から脱却できないまま、片手間的にECに取り組んでいる間、近年「D2C(Direct to Consumer)」と呼ばれるECを通して消費者に直接商品を販売するビジネスモデルが、スタートアップ企業を中心に盛んになっている。
 D2Cはそもそも中間流通業者を挟まないビジネスモデルのため、利益率が高く、価格決定権がメーカー側にあることが特徴だ。
 またD2Cメーカーは消費者からの意見を吸い上げやすく、商品改善サイクルが早いことが従来のメーカーの新商品開発体制との大きな違いである。
 ターゲット消費者もミレニアルやZ世代といったデジタル世代を中心に拡大をしているD2Cは消費者の多様なニーズを捉え、次々と新ブランドが市場に誕生している。

⚫︎追い打ちをかける中国メーカーの躍進
 このように市場での存在感を増しているD2Cメーカーだが、当然この流れは日本国内に限った話ではない。世界中でD2Cメーカーによる市場開拓が進んでおり、中国をはじめ海外のD2Cメーカーは日本へと越境してきている。
 中国は安い人件費を武器に単価を下げた商品ラインナップで、ジリジリと日本への越境ECを展開してきた。10年以上前は、中国製品というと「粗悪品」「盗品」「コピー」などと否定的なイメージを抱く消費者が多かったであろう。

 しかし今では、このような商品は大幅に減ってきており、日本の家庭では、雑貨をはじめ、服やパソコンのマウスに至るまで中国からの逆・越境EC商品という事態になっていることに気づいているだろうか。
 低人件費で商品の単価を極限まで下げる一方で、商品の品質を徐々に“まとも”にさせ、日本国内に着実に浸透してきている。
 今やこの種の低価格品の大半は中国からの越境ECによってもたらされていて、日本のAmazonでは約4分の1を中国製品が占めてしまうことになったわけだ。この状況を日本企業が巻き返すのは容易ではない。

⚫︎中国と日本のメーカーの決定的な差
 なぜ中国メーカーの品質が向上してきているのか。国策をはじめいくつかの理由があるが、ここではメーカーとして日本との大きな違いをピックアップする。
 中国メーカーのモノづくりは、日本従来の完璧品質を求めるモノづくりとはスタンスが全く異なっている。最初から完全なものを作ろうとはせず、未完成な状態で市場に投入をして、後から改善をしていく考え方である。
 何よりも市場に投入するスピードを重視し、そして消費者の声を取り入れながら改善を繰り返していく。当然改善の速度も圧倒的で高い頻度で繰り返される。永遠のベータ版をリアルなモノづくりで行っているのだ。
 また中国のEC市場規模は世界ランキングのトップである。
 ECだけでなく、ライブコマースなどの新しい販売チャネルも発展しており、SNSを活用した消費者とデジタルで直接つながるマーケティングノウハウも、豊富に持ち合わせていることも中国メーカーが強い理由だ。

 旧来の日本のメーカーでは前述のとおり、国内の既存中間流通業者の存在感が高く、コントロールできない領域があまりにも多い。そのため消費者との距離が遠く、新商品の市場投入スピードも遅くなる。
 さらに日本中でDX人材不足が叫ばれているとおり、社内にデジタル人材が育っておらず、ECやデジタルマーケティングのノウハウの蓄積もできていない。
 なお、国内でもD2Cメーカーは中国メーカー同様の強みを持ち、従来の日本メーカーの弱点をついて、スピードとダイレクトな消費者とのつながりによる商品開発の力で成長をしてきている。

⚫︎従来の慣習から抜け出せなかった油断
 結論として、少々厳しい言い方となるが、中国発の越境ECがあふれてしまった本当の理由は従来の慣習から抜け出せなかった日本企業の油断が招いたと言っても過言ではない。
 EC事業の伸びは実店舗小売と比べると高く見えるので安心しているメーカーがいるが、実はEC市場全体の成長スピードにはついていけておらず、市場内シェアはどんどん中国メーカーや一部の国内D2Cメーカーに食われてしまっている実態を見落としている。特にAmazonではそのケースが多いので注意が必要だ。
 なお、政府も危機感を持って支援策を講じている。今年から10月10日を「デジタルの日」と定め、デジタル庁を中心にECでのセールやキャンペーン、イベントなどの開催に取り組んだ。さらに今年度の補正予算にも、事業者に対するEC化支援策を盛り込んでいる。
 成果はこれからとなるが、政府の支援策は企業がECサイトに出店することやECサイトを構築するスタートラインに立つところだけの支援で終わっており、その先の成長戦略を描けていない課題がみられる。
 本当に必要なのは、メーカーと消費者のコンタクトポイントをネット上に増やし継続的に運用し続けることであり、売り上げ増のための工夫やノウハウを伝える人材の確保・育成・投資などへの支援も今後期待したい。

⚫︎変化への対応力が日本メーカーに試されている
 さて、従来の日本のメーカーが本質的に持つ強みはこれからの時代全く通用しないのだろうか。
 日本EC市場に進出している中国メーカーのすべての企業がきちんとした商品を提供しているとは限らない。いわゆる「やらせレビュー」「サクラレビュー」といった不当な手法で高評価の書き込みを増やし販売を誘発するようなやり方をする企業も少なくない。

 Amazonではこの事態を大きく問題視しており、これら不当なレビューに対する対策に、年々力を入れ厳しく取り締まりを行っている。
 米Amazonシニア・バイス・プレジデントRuss Grandinetti(ラス・グランディネッティ)氏は10月5日に開催したAmazon ECサミット2021において、不正レビューの取り締まりに対して年間数百億円の投資をしており、2020年は2億件を超える不正なカスタマーレビューを停止したと明らかにした。消費者の不安や不信感を取り除き、健全な市場を作ることに力を入れている証拠だ。
 また、Amazonは日本国内の中小規模の販売事業者の支援を2020年から強化している。日本国内だけではなく世界に向けての販売支援を行っているのは、日本のメーカーにはまだまだポテンシャルが眠っていると感じているからだろう。

⚫︎「真摯な姿勢」だけでは中国勢に勝てない
 当然ながら消費者が求めているのは正しい情報と安心な取引、そしてきちんとした商品である。中国メーカーの安かろう・悪かろうが受け入れられたのではなく、自分自身のニーズに対してその商品が持つ価値と価格が見合っていたから受け入れたのだ。
 そこには中国メーカーであることもD2Cメーカーであることも老舗の国産メーカーであることも関係ないのが今の時代の消費者の姿だろう。
 日本企業のモノづくりや消費者に対する真摯さは、強みでもあり弱みにも成り得る。

 消費者、メディア媒体、流通構造など時代の変化を捉えてフェアバリューを生み出すことが肝要である。これまでの価値観を大きく変えてモノづくりを行いEC市場への進出をうまく活用していかない限り、中国メーカーの躍進に勝てない状況が当面の間続くだろう。


 ▷田中 謙伍 GROOVE代表 ECコンサルタント Amazon研究家
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社、出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、同社大阪支社の立ち上げを経験。マーケティングマネージャーとしてAmazon CPC広告スポンサープロダクトの立ち上げを経験。GROOVEおよび Amazon D2CメーカーのAINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円超の年商を達成。
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🚶‍♀️…宇治橋…🏣…槙島農地…巨椋社.蛭子嶋社… 220101‘

2022-01-01 19:02:00 | 🚶 歩く
🚶‍♀️…右岸堤防道…太閤堤跡公園…宇治橋…JR宇治北側…🏣宇治局…槙島農地(月夜…一町田…外)…巨椋神社…槙島農地(外…大町…蛭子嶋神社…幡貫…郡)…宇治川高架橋…>
🚶‍♀️11177歩2kg

⛅️:風やや強く冷たい,やや曇天

さすが元日:普段無人の巨椋神社も蛭子嶋神社も初詣の家族多い
🏣人多し

1年ぶりに家族揃って夕食団欒。



空模様



西山山系も冠雪

醍醐山系も冠雪
比叡山も

彩雲




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