東京オリンピック絶対開催の理由、海外メディアが指摘 (保存)
NewSphere より 210621
菅首相は、17日の記者会見で、五輪開催については、安全・安心な大会を実現するためにリスクを可能な限り小さくすべく取り組んでいくと述べた。これまで国内外から感染拡大の懸念から開催を中止すべきという意見が多数出ていたが、海外メディアは、ここにきて中止の可能性はほぼないとして、その理由を報じている。
◆もう戻れない、膨らんだお金の問題
ロイターは経済的観点からすでに中止の選択肢はないとしている。大会組織委員会は昨年、大会予算は1兆6440億円としていたが、延期でさらに費用は膨らんでいる。また、野村総研の試算では、完全中止となれば1兆8000億円、GDPの0.33%に相当する経済効果が失われるとされている。
68社の日本のスポンサー企業は過去最高の約3500億円のスポンサー料を支払い、延期後はさらに約220億円で契約を延長している。さらにトヨタなど上位のスポンサーは国際オリンピック委員会(IOC)と数億ドルの別契約を結んでいる。また、中止になれば世界の保険会社は20億~30億ドル(約2200億~3300億円)の損失を被るとされている。(ロイター)
米NBCユニバーサルは、NBCの歴史において最も利益の出る大会になりそうだとしており、CEOは視聴率にも収益にも楽観的だ。すでにネットワークやストリーミングを通じ「史上空前の」7000時間の放送を予定しており、もう後には引けない状態だ。(ロイター)
◆無観客なら税補填 スポンサーも苦悩
専門家は、開催なら感染拡大を防ぐため無観客で、と助言しているが、政府は人数制限をしても観戦客を入れようとしている。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、ここにも経済的理由があると指摘する。最近発表された東京大会のバランスシートでは、前受金として1183億円の負債が計上されていた。そのほとんどは、約2年前に受け取った日本国民からのチケット代金だ。もしも無観客開催となれば、延期された大会開催の費用支払いを保証することに合意している東京都が実質チケットの払い戻しをすることになり、税金で賄われることになるだろうとFTは述べている。
さらにスポンサー企業にとっては、昨年の大会前に行った消費者向けキャンペーンの当選者を参加させられるかどうかが大問題となっており、これらのチケットがキャンセルされれば多くの反発に直面すると関係者は恐れているという。(FT)
◆開催でもモヤモヤ 識者の意見は
もっとも政治専門紙ヒルに寄稿したハドソン研究所のライリー・ウォルターズ氏は、経済的な利益以外にも目を向けよと述べる。今年はとくにステイホームをする人々に必要な気晴らしを与えると同時に、パンデミックの終わりに光が見えそうなことを世界に示す大会になるという点から、開催継続を支持している。
一方ほかの識者のなかには、複雑な思いがあることをAPが伝えている。フォーダム大学のマーク・コンラッド氏や社会学者のヘレン・ジェファソン・レンスキー氏は、パンデミック下の東京大会でも、IOCがすべての権限を持つという事実が変わらなかったことを憂いている。
筑波大学の礪波亜希氏は、政府内の人々は五輪を実現するよう指示され、できる限り失敗せず乗り切ることが望みだと聞いているとした。政治家はひとたび大会が始まれば、国民は「日本のために」これまでの経緯を忘れて我慢してくれることを望んでいるのではないかと述べ、政府の甘えを指摘している。
同志社大学のジル・スティール氏は、普通なら五輪の失敗は国民の自民党への信頼低下につながるが、国民の大多数が野党の統治能力を疑っているため、自民党はおそらく安心していると述べる。政治的に野党があまりにも弱く、政府はなんでもできるというのが開催強硬の理由と見たようだ。
ほかにも、「誰も責任者がいないように見えるのが東京五輪」(作家、ロバート・ホワイティング氏)、「開催期間中に感染拡大や事故が起きなければ、放送関係者などの努力でうまくいくかも」(政治学者、デビッド・リーニー氏)、「感染が拡大すれば、責任を負うのはIOCではなく日本政府」(作家、本間龍氏)などの意見があった。
菅首相は、17日の記者会見で、五輪開催については、安全・安心な大会を実現するためにリスクを可能な限り小さくすべく取り組んでいくと述べた。これまで国内外から感染拡大の懸念から開催を中止すべきという意見が多数出ていたが、海外メディアは、ここにきて中止の可能性はほぼないとして、その理由を報じている。
◆もう戻れない、膨らんだお金の問題
ロイターは経済的観点からすでに中止の選択肢はないとしている。大会組織委員会は昨年、大会予算は1兆6440億円としていたが、延期でさらに費用は膨らんでいる。また、野村総研の試算では、完全中止となれば1兆8000億円、GDPの0.33%に相当する経済効果が失われるとされている。
68社の日本のスポンサー企業は過去最高の約3500億円のスポンサー料を支払い、延期後はさらに約220億円で契約を延長している。さらにトヨタなど上位のスポンサーは国際オリンピック委員会(IOC)と数億ドルの別契約を結んでいる。また、中止になれば世界の保険会社は20億~30億ドル(約2200億~3300億円)の損失を被るとされている。(ロイター)
米NBCユニバーサルは、NBCの歴史において最も利益の出る大会になりそうだとしており、CEOは視聴率にも収益にも楽観的だ。すでにネットワークやストリーミングを通じ「史上空前の」7000時間の放送を予定しており、もう後には引けない状態だ。(ロイター)
◆無観客なら税補填 スポンサーも苦悩
専門家は、開催なら感染拡大を防ぐため無観客で、と助言しているが、政府は人数制限をしても観戦客を入れようとしている。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、ここにも経済的理由があると指摘する。最近発表された東京大会のバランスシートでは、前受金として1183億円の負債が計上されていた。そのほとんどは、約2年前に受け取った日本国民からのチケット代金だ。もしも無観客開催となれば、延期された大会開催の費用支払いを保証することに合意している東京都が実質チケットの払い戻しをすることになり、税金で賄われることになるだろうとFTは述べている。
さらにスポンサー企業にとっては、昨年の大会前に行った消費者向けキャンペーンの当選者を参加させられるかどうかが大問題となっており、これらのチケットがキャンセルされれば多くの反発に直面すると関係者は恐れているという。(FT)
◆開催でもモヤモヤ 識者の意見は
もっとも政治専門紙ヒルに寄稿したハドソン研究所のライリー・ウォルターズ氏は、経済的な利益以外にも目を向けよと述べる。今年はとくにステイホームをする人々に必要な気晴らしを与えると同時に、パンデミックの終わりに光が見えそうなことを世界に示す大会になるという点から、開催継続を支持している。
一方ほかの識者のなかには、複雑な思いがあることをAPが伝えている。フォーダム大学のマーク・コンラッド氏や社会学者のヘレン・ジェファソン・レンスキー氏は、パンデミック下の東京大会でも、IOCがすべての権限を持つという事実が変わらなかったことを憂いている。
筑波大学の礪波亜希氏は、政府内の人々は五輪を実現するよう指示され、できる限り失敗せず乗り切ることが望みだと聞いているとした。政治家はひとたび大会が始まれば、国民は「日本のために」これまでの経緯を忘れて我慢してくれることを望んでいるのではないかと述べ、政府の甘えを指摘している。
同志社大学のジル・スティール氏は、普通なら五輪の失敗は国民の自民党への信頼低下につながるが、国民の大多数が野党の統治能力を疑っているため、自民党はおそらく安心していると述べる。政治的に野党があまりにも弱く、政府はなんでもできるというのが開催強硬の理由と見たようだ。
ほかにも、「誰も責任者がいないように見えるのが東京五輪」(作家、ロバート・ホワイティング氏)、「開催期間中に感染拡大や事故が起きなければ、放送関係者などの努力でうまくいくかも」(政治学者、デビッド・リーニー氏)、「感染が拡大すれば、責任を負うのはIOCではなく日本政府」(作家、本間龍氏)などの意見があった。
※※※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※※ 追補 ※※※※※※※※※※※
「東京五輪がそれでも開催される理由」を米紙が“数字”を使って徹底解説 | お金、人数、支持率に至るまで…
クーリエジャパン より 210623
米紙「ニューヨーク・タイムズ」は6月21日、最大1万人までの観客を認めることにした東京オリンピックについて、「なぜそれでも東京五輪は開催されるのか──その秘密は『数字』が握る」という記事を掲載した。お金、人数、支持率に至るまで、数字から五輪強行の理由を読み解く。
⚫︎「東京五輪がそれでも開催される理由」を米紙が“数字”を使って徹底解説
五輪はいつの時代も数字にこだわってきた。ラテン語で「キティウス(より速く)、アルティウス(より高く)、フォルティウス(より強く)」という五輪のモットーは、秒、メートル、キログラムを測らない限り、あまり意味をなさないからだ。つまり、どれくらい速いか、どれくらい高いか、どれくらい強いかを競うのだ。
だがここ1年と数ヵ月間、東京五輪をめぐって議論がなされる際には、別の種類の数字が目立っていた──増加する新型コロナウイルスの感染者数、増加するリスク要因、不充分なワクチン接種率。
こうした懸念にもかかわらず、五輪はこの夏、ほぼ確実に開催される。その最新の証拠は6月21日、日本国内の在住者は、観客数が制限された会場で観戦できると発表されたことだ。
五輪の開会式まで1ヵ月。五輪はなぜ、このような状況下でも開催される運びとなったのか、以下の数字がその理由を解き明かしてくれるかもしれない。
⚫︎ 154億ドル(約1兆6000億円)
五輪開会式の夜、東京の新国立競技場が空っぽだった場合、それは1兆6000億円の投資の大半が無駄になったことを意味する。巨額になることで知られる五輪費用だが、歴代の五輪でも記録的となった東京五輪の費用は、過去1年間だけでさらに30億ドル(約3000億円)増加。五輪が中止されれば経済的な損失に加え、日本の評判に傷がつくことのダメージは計り知れない。
「東京五輪は世界屈指のライフスタイル超大国に光を当てる、というブランディングの実践の場になるはずでした」。こう話すのは日本に30年以上暮らす投資アドバイザーのイェスパー・コールだ。「最終的に重要なのは、(スタジアム等の)建設費の元が取れるかどうかではなく、日本という国のブランド力が上がるかどうかです」とコールは言う。
五輪を組織する側が3月、海外からの観客受け入れを見送ったことで、東京のホテルやレストランが期待し得た五輪を開催するメリットの多くが消滅した。また日本に入国を許される五輪関係者も、行動範囲を五輪会場に限定されるため、東京の魅力のほとんどを経験することはできない。
⚫︎ 40億ドル(約4400億円)
これは東京五輪が開催されなかった場合、国際オリンピック委員会(IOC)が放送権者に返還しなければならないテレビ放映権料の推定金額だ。この金額はIOCの収入の 73%を占める。
五輪関連のスポンサー料がさらに数億ドルの収入を創出するが、もし五輪が中止されれば、こうした企業もスポンサー料の払い戻しを求めてくる可能性がある。
⚫︎ 12億5000万ドル(約1380億円)
夏季五輪のアメリカでの放送権は、世界で最も価値あるスポーツ資産の1つだ。またこれが定期的に生み出す広告収入によって、この放映権は収益性が最も高い資産の1つにもなっている。
五輪のアメリカ向け放映権を持つNBCユニバーサルは2020年3月、東京五輪の広告販売が12億5000万ドルに達したと発表。これは2016年のリオ五輪の販売額を上回る額だ。リオ五輪で同社の総収入は16億2000ドル、利益は2億5000万ドルに達した。
大会の開催が1年延期されたこともNBCの収益には響かないようだ。NBCのジェフ・シェルCEOは6月半ば、ある投資家の会議で、東京五輪は視聴率によっては「NBC史上最大の利益が得られる五輪になるかもしれない」と述べた。
⚫︎ 5億4900万ドル(約600億円)
IOCの最新の年次報告書には「連帯」という言葉が406回使われている。なかでも最も重要な言及は、IOCが大小さまざまな各国のオリンピック委員会にいわゆる連帯支援金および各種費用に充てるための支援金として5億4900万ドルを分配していることである(IOCの報告書には誰がいくら受け取ったかという内訳は記載されていない)。
運営費からトレーニングの助成金、若手育成プログラム費用までカバーするIOCからの寛大な支援は、多くのオリンピック委員会にとって、その財政の重要な生命線になっている。
元IOCメンバーのリチャード・ピーターキンによると、たとえばカリブ海の島セントルシアでは、IOCからの支援金が同国のオリンピック委員会の年間収入60万ドル(約6600万円)の約4分の1を占める。
だが、もっと大きな国もIOCからの支援金に頼っている。英国オリンピック委員会は今年、この夏の五輪が開催されなければ、財政危機に陥る公算を強めた。同委員会の幹部は最近、次のような結論に達した。
「2021年5月以降の五輪の中止は、大きな不確実性を生むことになり、ひいては委員会の事業体としての存続に大きな疑念を投げかける可能性がある」
⚫︎ 1万5500人
五輪には200以上の国を代表する約1万1100人のオリンピック選手と約4400人のパラリンピック選手が出場する。大会延期は、彼らの生活を1年間、保留の状態にさせた。
選手たちは1年間、余分にトレーニングすることになり、人によっては結婚の予定や大学に通う予定、さらには出産の予定を遅らせた人もいる。このため、ついに五輪が開催されることに世界の多くのアスリートが前向きなのは驚きに値しない。
「私の人生の次の章はすでにはじまっているはずでした」と2021年にプロに転身することを目指していたクリーブランド出身のボクサー、デランテ・ジョンソン(22)は言う。だが彼はアマチュアのステータスをもう1年、維持した。それは2015年に亡くなった元コーチ、クリント・マーティンとの約束を守るためでもあった。ジョンソンは言う。
「彼はいつも、私はオリンピックに出場できると言ってくれました。その言葉をいまも胸にしまっています」
夢を追いかけるために生活のあらゆる面を調整してきたオリンピアンたちにとって五輪はすべてだ。五輪は、スポンサーを得るチャンス、メダル獲得によるボーナス収入、大会後のキャリアにつながるかもしれない。
多くのアスリートにとって五輪は世界中の観客の前で競う貴重な機会でもある。「ようやくその興奮を味わえることになり、嬉しくてたまりません。これまで懸命に努力した成果をやっと披露できます」とカリフォルニア州ニューポートビーチ出身の水球選手ケイリー・ギルクリスト(29)は言う。
⚫︎ 37%
これは菅首相の現在の支持率だ。彼は自身の政治的運命が五輪とあまりにも密接に関係していることから、もはやそれを中止することはできないと感じているのかもしれない。
「いまプラグを引き抜けば、彼は政治的に身動きが取れなくなるでしょう」とテンプル大学アジア研究科学ディレクターのジェフ・キングストン教授は指摘する。衆院選が秋に迫るなか、菅は五輪を1つの生命線と見なす可能性があるとキングストン教授は言う。
菅とその政権にとって、五輪を安全に、そして成功裏のうちに開催できれば、それは政治的に極めて大きなメリットをもたらす。だが五輪を開催することのデメリットは当然だが、公衆衛生上の大惨事が起きるリスクがあることだ。
それは人命を奪い、日本経済に打撃を与えることになる。そのような事態は、ただ単に菅個人の政治的評判を傷つけるよりはるかに深刻なダメージをもたらす。
キングストンは言う。「ゴジラ変異株が生み出される可能性があります。東京はそんなふうに人々の記憶に残りたいのでしょうか」
※ クーリエ・ジャポン