中国語学習者のブログ

これって中国語でどう言うの?様々な中国語表現を紹介します。読者の皆さんと一緒に勉強しましょう。

中国の伝統菓子・薩其馬(サチマ)

2010年09月04日 | 中国グルメ(美食)

  前回、月餅のことを書いた時、薩其馬(サチマ)のことが出てきました。この不思議な名前の由来は、この後に出てきますが、見た目、日本の粟おこしのような感じですが、材料が言わばドーナツの生地のようなものを一旦油で揚げてから蜜で固めたものなので、食感はふわふわ、サクサクで、しっとりしています。中国のスーパーのお菓子売り場の隅にパックされたものが売っているので、一度お試しを。もっとも、今は大量生産品しか見たことがありませんが、昔は手作りで、バターや蜂蜜を贅沢に使ったものは、高級菓子であったのだろうと思います。

 今回紹介する文を書いた雲郷(1924-1999)氏は山西省生まれ。北京大学中文系を卒業し、1956年より1993年まで上海電力学院教授を務められ、紅楼夢研究の第一人者でしたが、歴史、民俗学にも深い造詣を持っておられました。《雲郷話食》は、専門の《紅楼夢》にまつわる食べ物の話、昔の北京の伝統的な食べ物の話などがまとめられていて、歴史好き、食べ物好きの私にとっては、美味しい、お気に入りの本です。

                      薩其馬

 ある友人が北京から一箱のお菓子を持って来てくれた。箱を開けひとつ取り出してみると、黄色くて、一本一本がくっつき合い、上を青や赤の糸で覆われている。その名を“薩其馬”という。これは北京の薩其馬であり、上海の薩其馬ではない。

 薩其馬は、“沙其馬”、“賽利馬”とも書き、要するに音訳の書き方であり、翻訳した言葉のように、決して一致しない。この奇妙な名前はどこから来たのだろう?《光緒順天府志》に簡単な記載がある。

 賽利馬はラマ教の菓子(点心)であり、今は店で商う。小麦粉を木の実と混ぜ、砂糖とラードを加えて蒸しあげたもので、味はすこぶる良い。

 富察敦崇《燕京歳時記》に言う。

 薩其馬はすなわち満州族の菓子(満州餑餑bo1bo)であり、氷砂糖、バターをメリケン粉と混ぜ合わせ、形をもちのようにし、灰の出ないオーブンでよく焼き、四角く切れば、甘くておいしい。芙蓉糕は薩其馬と同じだが、小麦粉に赤砂糖を加え、色艶がハスの花のようであるだけである。

 このふたつの記事は、大同小異で、どちらも簡単に書いてあり、その作り方は、あまりはっきりしない。しかしこの名前が音訳であること、モンゴル語でなく満州語であるので、書き方は人により異なる。ラマ教の菓子と言うなら、モンゴル語である。満州族の菓子なら、満州語である。かつて上海では、人々は薩其馬を広東のお菓子だとばかり思っていたが、それはその本源を知らない人が誤って伝えたからである。

 薩其馬の作り方は、卵白と牛乳、砂糖、小麦粉を混ぜて糊状にし、じょうごを揚げもの鍋の上に渡しかけ、糊状の小麦粉を揚げてはるさめのようなものにし、それを型の中に入れて蜂蜜でくっつけて押し固め、ちょっと蒸してから、上に煎ったゴマや、瓜(西瓜や南瓜)の種の仁、青や赤の糸状の飴をまぶし、長方形に切れば完成する。製造する時に蜂蜜を調合するのは、主に湿り気を与えるためで、日が経っても乾燥しない。また小麦粉の中に卵白を加えるので、油で少し揚げると中が中空で外側がまっすぐな細い棒状になる。食べる時、口に入れると溶け、ほとんど咬む必要が無い。その中には卵の味、牛乳の味、蜂蜜の味があり、三者が小麦粉、油と混ざり合い、他に無い美味しさを形成し、他の如何なるケーキやクッキーもそれに及ばない。

 薩其馬の表面に、一層のピンク色に染めた綿砂糖を敷いたなら、見た感じが一層きれいで、つけた名前がとりわけ耳に快く、これを芙蓉糕と言う。実際は薩其馬のようにおいしくなく、一に甘すぎ、二に綿砂糖を固めてあるので、食べてもさくっとした柔らかさが無い。薩其馬と芙蓉糕は何れも冬のお菓子であり、だいたい冬に入ると売り出し、春先まで売っているだろう。良い薩其馬は高さは1寸(3.3センチ)もなく、2寸余りの長さの長方形のぺしゃんこの固まりで、底は一面によく煎ったゴマが貼り付けられ、お菓子箱に入れられても、一層一層がお互いにくっつきあうことがない。

 北京の昔のお菓子屋は、おおよそ三種類に分かれ、ひとつは満州餑餑舗で、多くは内城に店を開いた。ひとつは南果舗で、多くは南城に店を開いた。後になってもうひとつ、西洋式の菓子店が現れ、麺包房(パン屋)とも呼ばれ、東安市場の国強、西単の濱来香等で、西洋式のケーキやお菓子を専門に売り、北京では洋点心と呼ばれた。この三種のお菓子屋の中で、前の二種類の店の看板には“満漢餑餑”等の文字が書かれ、何れもたいへん良い薩其馬を売った。例えば前門大街の正明斎、西単北の毓美斎、蘭英斎等で、それ以外にも庚子前の旧店があった。

 薩其馬は季節の食べ物で、一般には冬だけあり、夏は暑いので、粘り気のあるお菓子を作るのは当然困難であった。良い薩其馬はたいへんきめ細やかで、サクサクして、柔らかく、相当の技術を持っている必要がある。薩其馬がお菓子屋で価格が比較的高い理由は、バター、蜂蜜といった原料が何れも高級なものだからである。曾てのような品質の薩其馬は、現在は中国各地どこへ行っても見ることができないが、このことは製作技術とたいへん大きな関係がある。民間の伝統食品の製作技術は、しっかり発掘、継承していかなければならないようだ。

 薩其馬と似たものには、他にも年越しに仏様にお供えする“蜜供”があり、小麦粉を練って小さな棒状に切ったものを油で揚げてから一本一本を蜂蜜で貼りあわせ、積み上げて方形の塔状にし、高さは様々で、仏前に一対、左右各一個お供えし、終わったら子供達に食べさせるので、「蜜供尖」と呼ばれ、もっとも良いのは新街口の聚声斎、地安門外の増慶斎のもので、看板には桂花蜜供と書かれた。これは北京の昔の特別な食品で、江南には無く、想像の難しいものである。

(〈甜品集錦〉より)
【出典】雲郷《雲郷話食》河北教育出版社 2004年

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同音詞と多義詞の境界

2010年09月04日 | 中国語

 多義詞の次は、同音詞ですが、これについては既に、8月5日に《同音語の形成理由と文章中での効用、及びその分別方法》で説明しているので、そちらを参照してください。今回は、多義詞と同音詞の共通点、及び相違点について、説明します。

                   同音詞と多義詞の境界

 多義詞と同音詞は、何れも同一の語音形式を用いて異なる意味、内容を表す言語現象であり、これらは性質上、一定の共通点があるが、一方、相互間には大きな違いもある。
 これはつまり、多義詞が指すのは一つの詞が異なる意味を備えているということに対し、同音詞はいくつかの詞が同じ語音形式を備えているということである。したがって、多義詞のいくつかの意味の間には明確な、必然としてのつながりがある。それらは何れも、一つの基本意義から派生したもので、共同の基礎がある。一方、同音詞はそうではなく、それら相互の間には、語音形式は同じであるが、意味の上のつながりが欠けており、共同の基礎が欠けている。
 例えば、“打人”、“打水”、“打井”、“打草鞋”といった言語構造の中の“打”は、そのいくつかは異なる意味を表すが、これらの意味の間にはつながりがあり、これらは皆、“打撃”という基本意義から派生したもので、したがって、多義詞である。
 一方、“打今儿起”という構造の中の“打”は、上で挙げた打とは、語音形式上は同じだが、意味の上ではつながりが無く、これらは一つの詞ではなく、二つの同音詞である。

 もちろん、これら二つの言語現象は全くつながりがないという訳ではない。これらは皆、同じ音で異なる意味を表しており、言語の歴史発展の過程で、これら相互間で転化が起こった可能性がある。然るに前述のように、いくつかの同音詞は、多義詞の解体の結果生まれたものである。多義詞がより一層発展すると、しばしば同音詞が生み出される。したがって、歴史的な観点から、これら二つの現象を見なければならない。

 また、以上で述べた同音詞は、何れも音声形式で類似しているが、内容や意味は全く似ておらず、つながりがなく、これは純粋な同音詞である。

 中国語の語彙の中で、もうひとつ、音声形式が類似し、同時に語句の意味の上でも類似し、互いにつながりのある詞があり、このような「音が似て意味も相通じる」詞のことを、言語学では“同源詞”と呼ぶ。なぜなら、それら相互の間には同源関係があると思われるからである。すなわち、同一の語源(関連する意味を代表する語素)から派生したものと考えられる。例えば:
     空―孔  框―筺  糠―殻  広―曠
     寛―闊  挟―夾  満―漫  朦―盲
     溟―濛―茫  合―盍―闔

 これらの詞や語素は、現代漢語の中で互いに発音が類似しており、類似したり関連する意味を表すのに用いられることから、これら相互間には同源関係があることが証明できる。こうした現象は、中国語の語彙の発展の歴史において研究を加えなければならないものであり、現在の同音詞の種類を述べる時にも、分析を加えなければならない。

【出典】胡裕樹主編《現代漢語》重訂版・上海教育出版社1995年

 民国以降の白話運動に始まる中国語の近代化の動きから、現代漢語が体系として形成される歴史の中で、複雑化する社会での情報伝達の必要から、語彙は益々質量共に豊かになっていきます。正にそういう環境の中で多義詞、同音詞というものが生まれてきた、ということが言えると思います。

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