実は、既に温家宝さんの来日スピーチの内容は一度取り上げたのだが、この文のタイトルに惹かれ、紹介しようと思った。このことばは、近代の東洋史学者、内藤湖南のものだそうである。
温総理賛“日本文化是豆漿,中国文化是塩鹵”説
― 温家宝総理与中日文化界人士座談側記
2010年06月01日 来源:人民網・《人民日報》
温総理は「日本文化は豆乳、中国文化はにがりである」との説を賞賛した
― 温家宝総理と中日文化界の人士の座談会傍聴記
■ “我記得日本漢学家内藤湖南先生曾説過:‘日本文化是豆漿,中国文化就是使它凝結成豆腐的塩鹵。’在中国隋唐時期,日本曾経20多次派出遣隋使和遣唐使学習中国政治文化。明治維新之后,中国的仁人志士到日本求学。這都説明,中日文化交流源遠流長。”
・塩鹵 yan2lu3 にがり
・仁人志士 ren2ren2zhi4shi4 仁愛のある正義の人。衆人のために自己を犠牲にする人
「日本の漢学者、内藤湖南先生が、嘗て、“日本文化を豆乳とするなら、中国文化はそれを固めて豆腐にするにがりである。”と言ったと記憶しています。隋、唐の時代、日本は20数回、遣隋使と遣唐使を派遣し、中国の政治、文化を学びました。明治維新後、中国の仁愛のある正義漢が日本に学びに行きました。これらのことは、中日文化の交流の歴史の長さを物語っています。」
■ 5月31日下午2時45分,在毗隣日本皇宮的新大谷飯店芙蓉庁里,温家宝総理一段充満感情的開場白拉開了中日文化界知名人士座談会的序幕。
・毗隣 pi2lin2 隣接している
・開場白 kai1chang3bai2 前口上
5月31日午後2時45分、皇居に隣接したホテル・ニューオータニの芙蓉の間で、温家宝総理の感情のこもった前口上で、中日文化界の著名人の座談会は幕を開けた。
■ 芙蓉庁里,緑羅綻翠,百合飄香。明黄的屏風在灯光的照射下放散出絲絲温馨,墻壁上鑲嵌着日本人民喜愛的折扇則透着古朴与典雅。温家宝総理在繁忙的外事活動中,特意抽出時間与中日文化界人士共叙昔日友情,暢談文化交流前景。
芙蓉の間では、観葉植物が青々とし、ユリの香りが漂っていた。金色の屏風は明かりで照らされ、ほのかに温かさを醸し出し、壁には日本人の好きな扇子が嵌め込まれ、古風で典雅な雰囲気を形作っていた。温家宝総理は多忙な外交活動の中で、特に時間を作り、中日文化界の人士と昔日の友情を温め、文化交流の前途について語り合った。
中国の総理が主催する、中日文化界の著名人の座談会は、今回が初めてである。このことは、中国の指導者、政府の中日文化交流の強化を益々重視していることを反映している。
座談会に参加したのは、日中文化交流協会会長・辻井喬、茶道の裏千家大宗匠・千玄室、アニメ作家・辻信太郎、書家・柳田泰山、女優・中野良子、作家・浅田次郎、劇団四季芸術監督・浅利慶太、歌手・アグネスチャン、服飾デザイナー・コシノジュンコ、内山書店社長・内山蘺(まがき)。何れも日本文化界の著名人で、中日文化交流に突出した貢献をし、中国人民にも人気が高い。中国作家協会主席・鉄凝、中国書法家協会主席・張海、俳優・濮存、北京電影学院動画学院院長・孫立軍も、このために来日し、日本文化界の友人と交流、研鑽を行った。
「本日、座談会に参加されているのは皆、中日文化界の名高い方々であるので、私は皆さん方に学ばなければなりません。」温家宝総理は謙虚で真摯な語り口で、一同、一層の親しみを感じた。
■ 沈穏的辻井喬先生第一个発言。他還清楚地記得三年前以俳句“和対”温家宝総理漢俳的往事。那是一段令人難忘且激励人心的佳話,“和対”之后,中日青年進行了漢俳聯句的大接力。
物静かな辻井喬氏が最初に発言した。彼は三年前、温家宝総理の漢俳に、日本の俳句で「和した」(“和対”)ことを、はっきりと憶えていた。それは忘れ難く、人の心を鼓舞する佳話であり、“和対”の後、中日の青年は漢俳の連句のリレーを行った。
「三年前、温総理は漢俳を一首作られました。昨晩、日中友好七団体と華僑四団体合同で開催された歓迎宴会で、また即興で漢俳を一首作られましたが、このことは、あなた自身が中日文化交流の最前線におられることを物語っています。」辻井喬の発言は簡潔で、感情に満ちていた。
温家宝総理はそう聞くと微笑んで言った。「今日の昼に出席した日本経団連の昼食会で、私はまた一首漢俳を作りました。先生は新しい“和対”をまだ作られていませんか。」
「総理の漢俳は日中関係への願いが表現され、たいへんすばらしいので、すぐにそれに対するのは困難です。」辻井喬は謙虚にそう答えた。
「私のは自己流で、あなたこそ本当の専門家です。」温家宝は笑って言った。
「それでは真面目に考え、“和対”する漢俳を一首作ります。」辻井喬は喜び勇んでそう応じた。
温総理と辻井喬のやりとりは、ひとしきり歓声と笑い声を引き起こし、ホールの中は人を酔わせる友情で満たされた。
■ 満頭銀髪的千玄室先生身着一襲灰色和服,神情飄逸。他曾先后訪華100余次,開創了日本茶道界与中国友好交流的先河。他談到了曾経与小平先生的会面。当他献茶之時,小平対他説,茶是中国的根,茶道在日本又非常盛行。茶道最重要的是和平之心。中日両国文化有很多相通的地方,希望両国珍惜這種共通的文化。
・襲 xi2 [量詞]衣服を数える。そろい
・飄逸 piao1yi4 飄逸(ひょういつ)である。洒脱である
・先河 xian1he2 先に提唱された事物。(昔の帝王は、川を海の本源と看做し、先ず黄河を祭り、次いで海を祭った。)
総銀髪の千玄室氏は灰色の和服を纏い、表情は飄々としている。彼は中国を前後100回以上訪問し、日本茶道界と中国の友好交流の先駆けを拓いた。彼は嘗て小平氏と会見した時のことを語った。彼が茶を差し上げると、小平は彼に言った。茶は中国がルーツで、茶道は日本で盛んになった。茶道で最も重要なのは平和の心である。中日両国の文化は多くの共通点があり、両国はこうした共通の文化を大切にしてほしいと。
■ 温家宝聴后点頭説道:茶是中国的根,也是和平的象征,蚕絲也是如此。当年,徐福、鄭和両位中国航海家帯出去的是茶和蚕絲,伝逓的是和平和友誼。
温家宝はそれを聞くと、頷いて言った。茶は中国がルーツで、また平和の象徴でもある。シルクもまた同様である。嘗て、徐福、鄭和の二名の中国の航海家が持って行ったのは茶とシルクで、伝えたのは平和と友好である。
千玄室氏はそれを聞くとうれしそうに、また残念そうに言った。残念ながら今日は総理に茶を差し上げる機会がありません。
■ “三年前,我有机会在京都喝了一次茶道制出的茶,覚得非常好,我記不住茶社的名字,但我端碗的姿勢,品茶的様子,当時的茶師認為還合格。” 温家宝総理対千玄室先生説。
「三年前、私は京都で、茶道で点てたお茶をいただく機会があり、たいへんよかったことを憶えています。その時の茶室の名前は憶えていませんが、私の茶碗を持つ姿勢、茶を賞味する様子を、その時のお茶の先生は、合格ですと言ってくださいました。」温家宝総理は、千玄室氏にそう言った。
その時のお茶の先生が千玄室の子の千宗室と知ると、温家宝総理はたいへん驚き喜び、この一族の茶道文化の伝承と中国文化の交流の継続をうれしく思った。彼は千玄室氏に言った。「ご家族の皆さんによろしくお伝えください。」
深い思い出は更に平和、調和への思いをかき立てた。この時、会場の人々は中日友好交流の美しい情感に浸っていた。
この時、辻信太郎氏がキティーのおもちゃを取り出し、温家宝総理に贈ろうとした。温家宝は歩み出ると、受け取って手の中でつまびらかに見た。彼はおどけて言った。「このプレゼントは、私の孫が見たらもっと喜ぶでしょう。」これを見て会場全体から笑い声が起こった。
■ 辻信太郎先生是日本動漫界領軍人物之一,被称為卡通人物凱蒂猫之父。他説,這個凱蒂猫在日本設計,在中国制造,中国和日本密不可分。凱蒂猫有三個特点:一是可愛;二是系着蝴蝶結,象征着心連心;三是没有嘴,提醒人們不是用語言,而是用行動来幇助別人。他説,就像凱蒂猫的寓意一様,願日中両国人民世代友好。
・寓意 yu4yi4 寓意。他の事物に託してほのめかす
辻信太郎氏は日本のアニメ界の指導的人物のひとりで、アニメキャラクター・キティーの生みの親と呼ばれている。彼が言うには、このキティーのおもちゃは日本でデザインし、中国で製造され、中国と日本は切っても切れない関係にある。キティーには三つの特徴がある。ひとつは可愛いこと。二番目はちょう結びをしていることで、それは心と心をつなぐ象徴である。三番目は口が無いことで、人々にことばでなく、行動で他人を助けるよう諭している。彼は、キティーの寓する意味と同様、日中両国の人々が世代を超え仲良くすることを望みますと語った。
孫立軍院長はある日本の漫画家に師事した。恩師の死後、孫立軍は恩師の名を冠した奨学金を設立し、アニメ専攻の優秀な学生を奨励している。孫立軍も自分からの贈り物を取り出し、温総理に手渡した。それは北京電影学院動画学院の学生が作った二枚の漫画であった。一枚は温家宝総理の漫画で、手に斉天大聖・孫悟空を載せている。もう一枚は鳩山首相の漫画で、胸に鉄腕アトムのバッジを付けている。学生たちは自分たちの作品で友好を伝えている。
会場の人々はこの二枚の実によく似た(“惟妙惟肖”wei2miao4wei2xiao4)漫画を見て、口々に賞賛のことばを発した。
温家宝総理は手に取ると、皆に言った。「今晩私は鳩山首相主催の歓迎宴会に出席しますので、必ず私から直接手渡します。」会場は笑い声で包まれた。
温家宝総理は続けて言った。「もうひとつよいニュースがあります。午前中私は鳩山首相と協議し、来年の適当な時期に「アニメ・ウィーク」を開催することになりました。」満場から拍手が起こった。
■ 心与心的交流,浸潤着友愛的力量,譲人們忘却了時間正在静静地流淌。
“語言是有霊魂的,毎個漢字都有各自的霊魂,書法把霊魂表現出来。”温文爾雅的柳田泰山先生精于書法,対書法有着独到的理解。他是家族書法的第四代伝人,這個書法家族和中国的交流,迄今已有80多年的歴史。
・流淌 liu2tang4 (液体が)流れる
・温文爾雅 wen1wen2er3ya3 態度が穏やかで立ち居振る舞いが上品である
・独到 du2dao4 他に比べるものがないほど優れている
心と心の交流は、有愛の力を浸み込ませ、人々に時が刻々と流れていることを忘れさせた。
「ことばには霊魂があり、漢字ひとつひとつに皆霊魂があり、書道は霊魂を表現することができます。」温和で上品な柳田泰山氏は書道に通じており、書道に比類のない理解を持っている。彼は書家の一族の四代目で、この書家一族と中国の交流は、今日まで80数年の長きにわたる。
■ 他的語調沈重而又深情:“我的父親説過:中国是父輩之国,要対我孝順就要向中国学習。父親臨終時遺言:譲我学習中国的書法,為日中文化交流作貢献。我永遠不会忘記。”
彼の口ぶりは厳かで深い情がある。「私の父親がこう言ったことがあります。中国は大先輩の国であり、親孝行したいなら中国に学びなさいと。父親は臨終の時、こう遺言しました。中国の処方を学び、日中文化交流に貢献しなさいと。私は永遠に忘れることはありません。」
温家宝はそれに対して言った。文化は霊魂の交流であり、文字は伝統文化の重要な道具である。文字の交流、書道の交流は、思想の交流でもある。それは平和の理念を伝達し、共に中日友好の交流を促進している。
■ “先生是不是主攻柳体?”
“是的。”
“我上小学和中学時,学大字也是臨摹柳体。我父親写顔体,我也跟着学顔体。所以后来我写的字既不像柳体也不像顔体。”
温家宝総理幽默的談吐譲柳田泰山先生倍感親切和温暖。
・攻 gong1 研究する。学ぶ
・臨摹 lin2mo2 臨模(りんも)する。書画を模写する
・柳体 liu3ti3 唐代の書家・柳公権の書体
・顔体 yan2ti3 唐代の書家・顔真卿の書体
※顔真卿、柳公権に、唐の欧陽洵、元の趙孟頫を加えて“楷書四大家”と呼ぶ。柳公権は、顔真卿、欧陽洵の書体を学び、それに改良を加え、新たな書体を生みだした。俗に“顔筋柳骨”と言い、顔体は力強く肉づきが良く、柳体は肉を削ぎ落し、骨格がしっかりしていると言われる。
・倍感 bei4gan3 ますます~と感じる
「先生は、主に柳体を研究されているのではないですか。」
「そうです。」
「私は小学校と中学校の時、毛筆を学ぶ時は、柳体を臨模しました。私の父親は顔体を書いていたので、私もいっしょに顔体を学びました。だから、その後私の書いたものは、柳体のようでもなく顔体のようでもありません。」
温家宝総理のユーモアのある言葉づかいは、柳田泰山氏にますます親しみと温かさを感じさせた。
在席した張海は、中国の有名な書道家である。彼は温総理と柳田泰山氏の対話を聞いた後、次のように発言した。中日間の書道の交流はもっと強化しなければならない。私は二つの提案がある。一つは条件を作って青少年の書道競技を開催すること、二番目はトップクラスの書道の試合を行うことである。この提案は、すぐに柳田泰山氏の賛意を得た。
この時、予定の会見終了時間になったが、出席者の思いはまだ尽きることがなかった。
■ 看到身穿和服、梳起高高髪髻的日本演員中野良子一直端坐着傾聴,温家宝総理笑着対她説:“你也発個言吧。我最早是従《追捕》中認識你的。”
・髪髻 fa4ji4 髷(まげ)
・端坐 duan1zuo4 きちんと座る
和服を身に纏い、高く髷を結んだ日本の俳優、中野良子はずっときちんと座って話を傾聴していたが、温家宝総理は微笑んで彼女に向って言った。「あなたも発言しなさい。私は最初、《君よ憤怒の河を渡れ》の中であなたを知りました。」
■ 提起中野良子,中国人民都非常熟悉。她在電影《追捕》中塑造的真由美形象,令人難忘。中野良子在当紅之時,毅然淡出演藝圈,投身于中日文化交流事業。
中野良子といえば、中国人は皆たいへんよく知っている。彼女は映画《君よ憤怒の河を渡れ》の中で“真由美”を演じ、強い印象を残した。中野良子は人気があった時、ためらうことなく芸能界を去り、中日文化交流事業に身を投じた。
■ 早就想発言的中野良子,聴到温総理点自己的名字,忙用漢語説道:“謝謝!謝謝!”回憶起自己訪問中国時,她念念不忘中国人民的友好。她還声情并茂地唱起了歌曲《大海啊,故郷》。“小時候,媽媽対我講,大海就是我故郷……”婉転動聴的歌声打動了在座的毎一個人。她説,日本和中国朋友都很喜歓這首歌曲,這説明両国人民都喜歓和平安定的感覚。
・念念不忘 nian4nian4bu4wang4 いつも忘れない。
・声情并茂 sheng1qing2bing4mao4 (歌声が)声もよく情緒もたっぷり
・婉転 wan3zhuan3 滑らかで抑揚がある
発言しようと準備していた中野良子は、温総理が自分の名前を指名したのを聞くと、急いで中国語で言った。「謝謝!謝謝!」自分が中国を訪れた時のことを思い出すと、彼女は中国人の友好が忘れられない。彼女は大きな声で情緒たっぷりに《大海啊,故郷》を歌った。「小さい時、母さんは私に言った、大海は私の故郷であると。」抑揚の利いた美しい歌声は出席した全ての人々を感動させた。彼女は、日本と中国の友人は皆この歌が好きです、このことは両国の人々が平和、安定を望んでいるという気持ちを説明しています、と語った。
「中国からも今日一名俳優が来ています。彼は濮存といいます。これから彼に発言させます。」温家宝が言った。
濮存は嘗て日本の俳優といっしょに映画に出演し、また共同で音楽を製作した。彼は政府がもっと大きな投資を行い、中日文化交流を促進するよう提案した。中野良子はそれを聞いて、頷き賞賛した。日中両国間では30年にわたり映画の交流が続いており、それが継続できるよう希望する。
二人の俳優の話を聞いて、温家宝は言った。「2007年に日本を訪問する前、私は阿倍首相が推薦した《三丁目の夕陽》を見て、第二次大戦後の日本人の生活を理解しました。皆さん方が今日の成果を上げることができたのは、確かにたいへんなことだと思います。今回の訪問前、鳩山首相が推薦したアカデミー最優秀外国語映画賞を獲得した日本映画《おくりびと》を、私は最初から最後まで見ました。この映画は生と死の別れの物語で、表現されているのは倫理道徳で、私たち東方文化の仔細(“底蘊”di3yun4)が描かれていて、私はたいへん好きです。」温総理はまた皆に良いニュースを伝えた。今日午前鳩山首相と会談した際、私は来年中日で「映画テレビ・ウィーク」を開催することを提案し、彼の賛同を得たと。
温家宝総理の視線は歌手のアグネス・チャン(陳美齢)に向けられた。陳美齢女士、発言してください。でも話をするのはダメです。歌わないといけませんよ。皆の楽しそうな笑い声の中で、アグネスチャンは立ち上がり、中日両国の人々が皆よく知っている《原野牧歌》を歌い出した。歌い終わると、彼女は皆に深々とお辞儀すると、心からの祝福を送った。「中日の間がこれからも永久に友好が続きますように。」在席の人々は感動の面持ちになった。
鉄凝は最後の発言の機会をつかんだ。彼女は2006年秋に日本の東北大学を訪問した時の情景を回想した。この大学の前身は仙台医学院で、魯迅が嘗てここで学んだ。この時、数名の経済学部の教授が《魯迅在仙台》という名の現代劇(話劇)を作っていた。この劇の出演者は仙台市民で、上演費用は市民の寄付で賄われ、魯迅を一人の普通のパソコンのオペレーターとして描いていた。これらのことを話し出すと、彼女の眼に熱いものがこみ上げ、心から日本の人々の友好と文化交流の魅力に感動した。
彼女は、こう言った。中日の世代を超えた友好は、若い人々の力に依らねばならない。私は「新世紀、新視線」(“新世紀、新眼光”)をテーマに、青年作家間の文学交流を展開することを提案したい。文学という手段で、今日の中国の人々と日本の人々の情感の奥を相互に凝視し、相互に観察し、相互に感じたい。
温家宝はそれを聞くと、“新世紀、新眼光”はたいへん良い。それにもう一つ、“新未来”を加えなさい、と言った。
座談会はもう一時間以上になり、当初予定した時間を大きく超えていた。
温家宝総理は出席者全員に言った。今日皆さん方のお話に、私は感動し、また深く教えられました。皆さんが出した提案は非常に良いので、私は関係部門に検討させ、実現させます。
■ 温総理対中日文化交流的激励和支持,譲在座的両国文化界人士十分激動。掌声在大庁里回蕩。
・回蕩 hui2dang4 (音声が)こだまする
温総理の中日文化交流への激励と支持は、在席の両国文化界人士をたいへん感動させた。拍手が会場の中をこだました。
■ 活動結束時,書法家張海和柳田泰山揮毫溌墨,分別書写了温家宝総理此次訪問時所作的漢俳和辻井喬先生三年前“和対”温家宝総理的漢俳。両幅作品異曲同工,交相輝映,伝逓着東方文化的神韵和中日両国人民之間的友誼。
・揮毫溌墨 hui1hao2po1mo4墨痕鮮やかに筆を振るう
・異曲同工 yi4qu3tong2gong1 曲調は異なっても巧みさは同じ。やり方は異なっても効果は同じ。同工異曲
・交相輝映 jiao1xiang1hui1ying4 いろいろな光や色彩が入り乱れて輝く
・神韵 shen2yun4 風格と趣。神韻
活動の最後に、書道家の張海と柳田泰山が墨痕鮮やかに筆を振るい、それぞれ温家宝総理が今回の訪問で作った漢俳と、辻井喬氏が三年前に温家宝総理に“和対”した漢俳を書写した。二つの作品はどちらも素晴らしく、様々な色彩が入り混じり、東方文化の趣と中日両国の人々の友好を伝えた。
(人民網東京5月31日電 新華社記者 趙承、李忠発,人民網記者 杜尚澤)
温総理賛“日本文化是豆漿,中国文化是塩鹵”説
― 温家宝総理与中日文化界人士座談側記
2010年06月01日 来源:人民網・《人民日報》
温総理は「日本文化は豆乳、中国文化はにがりである」との説を賞賛した
― 温家宝総理と中日文化界の人士の座談会傍聴記
■ “我記得日本漢学家内藤湖南先生曾説過:‘日本文化是豆漿,中国文化就是使它凝結成豆腐的塩鹵。’在中国隋唐時期,日本曾経20多次派出遣隋使和遣唐使学習中国政治文化。明治維新之后,中国的仁人志士到日本求学。這都説明,中日文化交流源遠流長。”
・塩鹵 yan2lu3 にがり
・仁人志士 ren2ren2zhi4shi4 仁愛のある正義の人。衆人のために自己を犠牲にする人
「日本の漢学者、内藤湖南先生が、嘗て、“日本文化を豆乳とするなら、中国文化はそれを固めて豆腐にするにがりである。”と言ったと記憶しています。隋、唐の時代、日本は20数回、遣隋使と遣唐使を派遣し、中国の政治、文化を学びました。明治維新後、中国の仁愛のある正義漢が日本に学びに行きました。これらのことは、中日文化の交流の歴史の長さを物語っています。」
■ 5月31日下午2時45分,在毗隣日本皇宮的新大谷飯店芙蓉庁里,温家宝総理一段充満感情的開場白拉開了中日文化界知名人士座談会的序幕。
・毗隣 pi2lin2 隣接している
・開場白 kai1chang3bai2 前口上
5月31日午後2時45分、皇居に隣接したホテル・ニューオータニの芙蓉の間で、温家宝総理の感情のこもった前口上で、中日文化界の著名人の座談会は幕を開けた。
■ 芙蓉庁里,緑羅綻翠,百合飄香。明黄的屏風在灯光的照射下放散出絲絲温馨,墻壁上鑲嵌着日本人民喜愛的折扇則透着古朴与典雅。温家宝総理在繁忙的外事活動中,特意抽出時間与中日文化界人士共叙昔日友情,暢談文化交流前景。
芙蓉の間では、観葉植物が青々とし、ユリの香りが漂っていた。金色の屏風は明かりで照らされ、ほのかに温かさを醸し出し、壁には日本人の好きな扇子が嵌め込まれ、古風で典雅な雰囲気を形作っていた。温家宝総理は多忙な外交活動の中で、特に時間を作り、中日文化界の人士と昔日の友情を温め、文化交流の前途について語り合った。
中国の総理が主催する、中日文化界の著名人の座談会は、今回が初めてである。このことは、中国の指導者、政府の中日文化交流の強化を益々重視していることを反映している。
座談会に参加したのは、日中文化交流協会会長・辻井喬、茶道の裏千家大宗匠・千玄室、アニメ作家・辻信太郎、書家・柳田泰山、女優・中野良子、作家・浅田次郎、劇団四季芸術監督・浅利慶太、歌手・アグネスチャン、服飾デザイナー・コシノジュンコ、内山書店社長・内山蘺(まがき)。何れも日本文化界の著名人で、中日文化交流に突出した貢献をし、中国人民にも人気が高い。中国作家協会主席・鉄凝、中国書法家協会主席・張海、俳優・濮存、北京電影学院動画学院院長・孫立軍も、このために来日し、日本文化界の友人と交流、研鑽を行った。
「本日、座談会に参加されているのは皆、中日文化界の名高い方々であるので、私は皆さん方に学ばなければなりません。」温家宝総理は謙虚で真摯な語り口で、一同、一層の親しみを感じた。
■ 沈穏的辻井喬先生第一个発言。他還清楚地記得三年前以俳句“和対”温家宝総理漢俳的往事。那是一段令人難忘且激励人心的佳話,“和対”之后,中日青年進行了漢俳聯句的大接力。
物静かな辻井喬氏が最初に発言した。彼は三年前、温家宝総理の漢俳に、日本の俳句で「和した」(“和対”)ことを、はっきりと憶えていた。それは忘れ難く、人の心を鼓舞する佳話であり、“和対”の後、中日の青年は漢俳の連句のリレーを行った。
「三年前、温総理は漢俳を一首作られました。昨晩、日中友好七団体と華僑四団体合同で開催された歓迎宴会で、また即興で漢俳を一首作られましたが、このことは、あなた自身が中日文化交流の最前線におられることを物語っています。」辻井喬の発言は簡潔で、感情に満ちていた。
温家宝総理はそう聞くと微笑んで言った。「今日の昼に出席した日本経団連の昼食会で、私はまた一首漢俳を作りました。先生は新しい“和対”をまだ作られていませんか。」
「総理の漢俳は日中関係への願いが表現され、たいへんすばらしいので、すぐにそれに対するのは困難です。」辻井喬は謙虚にそう答えた。
「私のは自己流で、あなたこそ本当の専門家です。」温家宝は笑って言った。
「それでは真面目に考え、“和対”する漢俳を一首作ります。」辻井喬は喜び勇んでそう応じた。
温総理と辻井喬のやりとりは、ひとしきり歓声と笑い声を引き起こし、ホールの中は人を酔わせる友情で満たされた。
■ 満頭銀髪的千玄室先生身着一襲灰色和服,神情飄逸。他曾先后訪華100余次,開創了日本茶道界与中国友好交流的先河。他談到了曾経与小平先生的会面。当他献茶之時,小平対他説,茶是中国的根,茶道在日本又非常盛行。茶道最重要的是和平之心。中日両国文化有很多相通的地方,希望両国珍惜這種共通的文化。
・襲 xi2 [量詞]衣服を数える。そろい
・飄逸 piao1yi4 飄逸(ひょういつ)である。洒脱である
・先河 xian1he2 先に提唱された事物。(昔の帝王は、川を海の本源と看做し、先ず黄河を祭り、次いで海を祭った。)
総銀髪の千玄室氏は灰色の和服を纏い、表情は飄々としている。彼は中国を前後100回以上訪問し、日本茶道界と中国の友好交流の先駆けを拓いた。彼は嘗て小平氏と会見した時のことを語った。彼が茶を差し上げると、小平は彼に言った。茶は中国がルーツで、茶道は日本で盛んになった。茶道で最も重要なのは平和の心である。中日両国の文化は多くの共通点があり、両国はこうした共通の文化を大切にしてほしいと。
■ 温家宝聴后点頭説道:茶是中国的根,也是和平的象征,蚕絲也是如此。当年,徐福、鄭和両位中国航海家帯出去的是茶和蚕絲,伝逓的是和平和友誼。
温家宝はそれを聞くと、頷いて言った。茶は中国がルーツで、また平和の象徴でもある。シルクもまた同様である。嘗て、徐福、鄭和の二名の中国の航海家が持って行ったのは茶とシルクで、伝えたのは平和と友好である。
千玄室氏はそれを聞くとうれしそうに、また残念そうに言った。残念ながら今日は総理に茶を差し上げる機会がありません。
■ “三年前,我有机会在京都喝了一次茶道制出的茶,覚得非常好,我記不住茶社的名字,但我端碗的姿勢,品茶的様子,当時的茶師認為還合格。” 温家宝総理対千玄室先生説。
「三年前、私は京都で、茶道で点てたお茶をいただく機会があり、たいへんよかったことを憶えています。その時の茶室の名前は憶えていませんが、私の茶碗を持つ姿勢、茶を賞味する様子を、その時のお茶の先生は、合格ですと言ってくださいました。」温家宝総理は、千玄室氏にそう言った。
その時のお茶の先生が千玄室の子の千宗室と知ると、温家宝総理はたいへん驚き喜び、この一族の茶道文化の伝承と中国文化の交流の継続をうれしく思った。彼は千玄室氏に言った。「ご家族の皆さんによろしくお伝えください。」
深い思い出は更に平和、調和への思いをかき立てた。この時、会場の人々は中日友好交流の美しい情感に浸っていた。
この時、辻信太郎氏がキティーのおもちゃを取り出し、温家宝総理に贈ろうとした。温家宝は歩み出ると、受け取って手の中でつまびらかに見た。彼はおどけて言った。「このプレゼントは、私の孫が見たらもっと喜ぶでしょう。」これを見て会場全体から笑い声が起こった。
■ 辻信太郎先生是日本動漫界領軍人物之一,被称為卡通人物凱蒂猫之父。他説,這個凱蒂猫在日本設計,在中国制造,中国和日本密不可分。凱蒂猫有三個特点:一是可愛;二是系着蝴蝶結,象征着心連心;三是没有嘴,提醒人們不是用語言,而是用行動来幇助別人。他説,就像凱蒂猫的寓意一様,願日中両国人民世代友好。
・寓意 yu4yi4 寓意。他の事物に託してほのめかす
辻信太郎氏は日本のアニメ界の指導的人物のひとりで、アニメキャラクター・キティーの生みの親と呼ばれている。彼が言うには、このキティーのおもちゃは日本でデザインし、中国で製造され、中国と日本は切っても切れない関係にある。キティーには三つの特徴がある。ひとつは可愛いこと。二番目はちょう結びをしていることで、それは心と心をつなぐ象徴である。三番目は口が無いことで、人々にことばでなく、行動で他人を助けるよう諭している。彼は、キティーの寓する意味と同様、日中両国の人々が世代を超え仲良くすることを望みますと語った。
孫立軍院長はある日本の漫画家に師事した。恩師の死後、孫立軍は恩師の名を冠した奨学金を設立し、アニメ専攻の優秀な学生を奨励している。孫立軍も自分からの贈り物を取り出し、温総理に手渡した。それは北京電影学院動画学院の学生が作った二枚の漫画であった。一枚は温家宝総理の漫画で、手に斉天大聖・孫悟空を載せている。もう一枚は鳩山首相の漫画で、胸に鉄腕アトムのバッジを付けている。学生たちは自分たちの作品で友好を伝えている。
会場の人々はこの二枚の実によく似た(“惟妙惟肖”wei2miao4wei2xiao4)漫画を見て、口々に賞賛のことばを発した。
温家宝総理は手に取ると、皆に言った。「今晩私は鳩山首相主催の歓迎宴会に出席しますので、必ず私から直接手渡します。」会場は笑い声で包まれた。
温家宝総理は続けて言った。「もうひとつよいニュースがあります。午前中私は鳩山首相と協議し、来年の適当な時期に「アニメ・ウィーク」を開催することになりました。」満場から拍手が起こった。
■ 心与心的交流,浸潤着友愛的力量,譲人們忘却了時間正在静静地流淌。
“語言是有霊魂的,毎個漢字都有各自的霊魂,書法把霊魂表現出来。”温文爾雅的柳田泰山先生精于書法,対書法有着独到的理解。他是家族書法的第四代伝人,這個書法家族和中国的交流,迄今已有80多年的歴史。
・流淌 liu2tang4 (液体が)流れる
・温文爾雅 wen1wen2er3ya3 態度が穏やかで立ち居振る舞いが上品である
・独到 du2dao4 他に比べるものがないほど優れている
心と心の交流は、有愛の力を浸み込ませ、人々に時が刻々と流れていることを忘れさせた。
「ことばには霊魂があり、漢字ひとつひとつに皆霊魂があり、書道は霊魂を表現することができます。」温和で上品な柳田泰山氏は書道に通じており、書道に比類のない理解を持っている。彼は書家の一族の四代目で、この書家一族と中国の交流は、今日まで80数年の長きにわたる。
■ 他的語調沈重而又深情:“我的父親説過:中国是父輩之国,要対我孝順就要向中国学習。父親臨終時遺言:譲我学習中国的書法,為日中文化交流作貢献。我永遠不会忘記。”
彼の口ぶりは厳かで深い情がある。「私の父親がこう言ったことがあります。中国は大先輩の国であり、親孝行したいなら中国に学びなさいと。父親は臨終の時、こう遺言しました。中国の処方を学び、日中文化交流に貢献しなさいと。私は永遠に忘れることはありません。」
温家宝はそれに対して言った。文化は霊魂の交流であり、文字は伝統文化の重要な道具である。文字の交流、書道の交流は、思想の交流でもある。それは平和の理念を伝達し、共に中日友好の交流を促進している。
■ “先生是不是主攻柳体?”
“是的。”
“我上小学和中学時,学大字也是臨摹柳体。我父親写顔体,我也跟着学顔体。所以后来我写的字既不像柳体也不像顔体。”
温家宝総理幽默的談吐譲柳田泰山先生倍感親切和温暖。
・攻 gong1 研究する。学ぶ
・臨摹 lin2mo2 臨模(りんも)する。書画を模写する
・柳体 liu3ti3 唐代の書家・柳公権の書体
・顔体 yan2ti3 唐代の書家・顔真卿の書体
※顔真卿、柳公権に、唐の欧陽洵、元の趙孟頫を加えて“楷書四大家”と呼ぶ。柳公権は、顔真卿、欧陽洵の書体を学び、それに改良を加え、新たな書体を生みだした。俗に“顔筋柳骨”と言い、顔体は力強く肉づきが良く、柳体は肉を削ぎ落し、骨格がしっかりしていると言われる。
・倍感 bei4gan3 ますます~と感じる
「先生は、主に柳体を研究されているのではないですか。」
「そうです。」
「私は小学校と中学校の時、毛筆を学ぶ時は、柳体を臨模しました。私の父親は顔体を書いていたので、私もいっしょに顔体を学びました。だから、その後私の書いたものは、柳体のようでもなく顔体のようでもありません。」
温家宝総理のユーモアのある言葉づかいは、柳田泰山氏にますます親しみと温かさを感じさせた。
在席した張海は、中国の有名な書道家である。彼は温総理と柳田泰山氏の対話を聞いた後、次のように発言した。中日間の書道の交流はもっと強化しなければならない。私は二つの提案がある。一つは条件を作って青少年の書道競技を開催すること、二番目はトップクラスの書道の試合を行うことである。この提案は、すぐに柳田泰山氏の賛意を得た。
この時、予定の会見終了時間になったが、出席者の思いはまだ尽きることがなかった。
■ 看到身穿和服、梳起高高髪髻的日本演員中野良子一直端坐着傾聴,温家宝総理笑着対她説:“你也発個言吧。我最早是従《追捕》中認識你的。”
・髪髻 fa4ji4 髷(まげ)
・端坐 duan1zuo4 きちんと座る
和服を身に纏い、高く髷を結んだ日本の俳優、中野良子はずっときちんと座って話を傾聴していたが、温家宝総理は微笑んで彼女に向って言った。「あなたも発言しなさい。私は最初、《君よ憤怒の河を渡れ》の中であなたを知りました。」
■ 提起中野良子,中国人民都非常熟悉。她在電影《追捕》中塑造的真由美形象,令人難忘。中野良子在当紅之時,毅然淡出演藝圈,投身于中日文化交流事業。
中野良子といえば、中国人は皆たいへんよく知っている。彼女は映画《君よ憤怒の河を渡れ》の中で“真由美”を演じ、強い印象を残した。中野良子は人気があった時、ためらうことなく芸能界を去り、中日文化交流事業に身を投じた。
■ 早就想発言的中野良子,聴到温総理点自己的名字,忙用漢語説道:“謝謝!謝謝!”回憶起自己訪問中国時,她念念不忘中国人民的友好。她還声情并茂地唱起了歌曲《大海啊,故郷》。“小時候,媽媽対我講,大海就是我故郷……”婉転動聴的歌声打動了在座的毎一個人。她説,日本和中国朋友都很喜歓這首歌曲,這説明両国人民都喜歓和平安定的感覚。
・念念不忘 nian4nian4bu4wang4 いつも忘れない。
・声情并茂 sheng1qing2bing4mao4 (歌声が)声もよく情緒もたっぷり
・婉転 wan3zhuan3 滑らかで抑揚がある
発言しようと準備していた中野良子は、温総理が自分の名前を指名したのを聞くと、急いで中国語で言った。「謝謝!謝謝!」自分が中国を訪れた時のことを思い出すと、彼女は中国人の友好が忘れられない。彼女は大きな声で情緒たっぷりに《大海啊,故郷》を歌った。「小さい時、母さんは私に言った、大海は私の故郷であると。」抑揚の利いた美しい歌声は出席した全ての人々を感動させた。彼女は、日本と中国の友人は皆この歌が好きです、このことは両国の人々が平和、安定を望んでいるという気持ちを説明しています、と語った。
「中国からも今日一名俳優が来ています。彼は濮存といいます。これから彼に発言させます。」温家宝が言った。
濮存は嘗て日本の俳優といっしょに映画に出演し、また共同で音楽を製作した。彼は政府がもっと大きな投資を行い、中日文化交流を促進するよう提案した。中野良子はそれを聞いて、頷き賞賛した。日中両国間では30年にわたり映画の交流が続いており、それが継続できるよう希望する。
二人の俳優の話を聞いて、温家宝は言った。「2007年に日本を訪問する前、私は阿倍首相が推薦した《三丁目の夕陽》を見て、第二次大戦後の日本人の生活を理解しました。皆さん方が今日の成果を上げることができたのは、確かにたいへんなことだと思います。今回の訪問前、鳩山首相が推薦したアカデミー最優秀外国語映画賞を獲得した日本映画《おくりびと》を、私は最初から最後まで見ました。この映画は生と死の別れの物語で、表現されているのは倫理道徳で、私たち東方文化の仔細(“底蘊”di3yun4)が描かれていて、私はたいへん好きです。」温総理はまた皆に良いニュースを伝えた。今日午前鳩山首相と会談した際、私は来年中日で「映画テレビ・ウィーク」を開催することを提案し、彼の賛同を得たと。
温家宝総理の視線は歌手のアグネス・チャン(陳美齢)に向けられた。陳美齢女士、発言してください。でも話をするのはダメです。歌わないといけませんよ。皆の楽しそうな笑い声の中で、アグネスチャンは立ち上がり、中日両国の人々が皆よく知っている《原野牧歌》を歌い出した。歌い終わると、彼女は皆に深々とお辞儀すると、心からの祝福を送った。「中日の間がこれからも永久に友好が続きますように。」在席の人々は感動の面持ちになった。
鉄凝は最後の発言の機会をつかんだ。彼女は2006年秋に日本の東北大学を訪問した時の情景を回想した。この大学の前身は仙台医学院で、魯迅が嘗てここで学んだ。この時、数名の経済学部の教授が《魯迅在仙台》という名の現代劇(話劇)を作っていた。この劇の出演者は仙台市民で、上演費用は市民の寄付で賄われ、魯迅を一人の普通のパソコンのオペレーターとして描いていた。これらのことを話し出すと、彼女の眼に熱いものがこみ上げ、心から日本の人々の友好と文化交流の魅力に感動した。
彼女は、こう言った。中日の世代を超えた友好は、若い人々の力に依らねばならない。私は「新世紀、新視線」(“新世紀、新眼光”)をテーマに、青年作家間の文学交流を展開することを提案したい。文学という手段で、今日の中国の人々と日本の人々の情感の奥を相互に凝視し、相互に観察し、相互に感じたい。
温家宝はそれを聞くと、“新世紀、新眼光”はたいへん良い。それにもう一つ、“新未来”を加えなさい、と言った。
座談会はもう一時間以上になり、当初予定した時間を大きく超えていた。
温家宝総理は出席者全員に言った。今日皆さん方のお話に、私は感動し、また深く教えられました。皆さんが出した提案は非常に良いので、私は関係部門に検討させ、実現させます。
■ 温総理対中日文化交流的激励和支持,譲在座的両国文化界人士十分激動。掌声在大庁里回蕩。
・回蕩 hui2dang4 (音声が)こだまする
温総理の中日文化交流への激励と支持は、在席の両国文化界人士をたいへん感動させた。拍手が会場の中をこだました。
■ 活動結束時,書法家張海和柳田泰山揮毫溌墨,分別書写了温家宝総理此次訪問時所作的漢俳和辻井喬先生三年前“和対”温家宝総理的漢俳。両幅作品異曲同工,交相輝映,伝逓着東方文化的神韵和中日両国人民之間的友誼。
・揮毫溌墨 hui1hao2po1mo4墨痕鮮やかに筆を振るう
・異曲同工 yi4qu3tong2gong1 曲調は異なっても巧みさは同じ。やり方は異なっても効果は同じ。同工異曲
・交相輝映 jiao1xiang1hui1ying4 いろいろな光や色彩が入り乱れて輝く
・神韵 shen2yun4 風格と趣。神韻
活動の最後に、書道家の張海と柳田泰山が墨痕鮮やかに筆を振るい、それぞれ温家宝総理が今回の訪問で作った漢俳と、辻井喬氏が三年前に温家宝総理に“和対”した漢俳を書写した。二つの作品はどちらも素晴らしく、様々な色彩が入り混じり、東方文化の趣と中日両国の人々の友好を伝えた。
(人民網東京5月31日電 新華社記者 趙承、李忠発,人民網記者 杜尚澤)