025:あられ（村上きわみ）

揚げてゆくそばからつまむあられ餅　むつききさらぎさみしかったよ

024:岸（村上きわみ）

こちらからあちらの岸へ　にくたいはすずしい舟とあなたは言った

023:用紙（村上きわみ）

ふくらんだ春の用紙を噛んだまま深くねむってしまう複写機

022:低（村上きわみ）

低温で保存しましょうよいこからこぼれた水はきっとよい水

021:サッカー（村上きわみ）

夏の子が夏の男になってゆくシアサッカーのシャツをはおって

020:鳩（村上きわみ）

この街の余白を埋めるありふれた鳩鳩ベンチ鳩わたし鳩

019:豆腐（村上きわみ）

崩されてなおもとどまる実直も身上なれば木綿豆腐は

018:集（村上きわみ）

だれよりも遠くの波をほしがった浮き輪に兄の息を集めて

017:頭（村上きわみ）

むずかしい顔で竜頭を巻きながら父がだまっている　夏だった

016:％（村上きわみ）

文字化けのメールの庭にてんてんとつづく％の水たまり

015:アジア（村上きわみ）

春の芽をゆがいてさらすおだやかでひどくさみしいアジアの水に

014:泉（村上きわみ）

ぜんぶみてほしい邪悪なこめかみも泉がわいているてのひらも

013:優（村上きわみ）

ぬしさんのよこす優文うれしゅうて　でたらめになるほどうれしゅうて

012:ダイヤ（村上きわみ）

たくさんの冬の足首ひやされて臨時ダイヤで運ばれてくる

011:除（村上きわみ）

ぼくたちは荒れた裏庭　たくらみを除くすべてを繁らせながら